さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(01)

11月15日、母、老健から退所。
バスで迎えに行き、介護タクシーで車椅子のまま
自宅まで運んでもらう。

老健のリハ担当の話では、
階段もなんとか自力でのぼれるという話だったが、
数段のぼった段階で無理、とのことで、
介護タクシーの方に車椅子に移してもらい、
上まで運んでもらった。

母は今年3月末に尿路感染症で発熱して
ふらついて転倒してから、
もう独居は心配という主に弟の判断で、
老健に入所した。

自宅での生活を望みながらも、
老健では安全上の理由から車椅子生活となり、
さぞやもどかしかったことだろう。

その後、体調は崩れる一方で、
もともと35キロと小柄だったが、
27キロにまで落ち、それまでは週に一度、
FaceTimeで話をしてきたのだが、
とうとうiPadを持ち上げて開く力すら
なくなってしまった。

施設のzoom面談を申し込み、
2週間に一度、話すようにしていたけれど、
そのたびに、泣いていた。

日本の現状のシステムでは、
介護保険を使って老健に入っている間、
きちんと医療機関を受診することはできない。

まったくどういうシステムだろうと、
はなはだ疑問に思うが、
精神的にもかなりつらい状況なのを察し、
一度私が帰国して、その間に彼女を自宅に戻し、
医療機関などをきちんと受診して、
精神的にも立て直して、
一緒に自宅でお正月を過ごし、
その後、年明けに再度施設に入所、
という筋書きを立てての退所だった。

母が食べたいと言っていた
どらやきとお好み焼きを
嚥下に問題のある母でも安心して
食べられるような工夫を、
ツイッター互助会の皆さまから教えてもらって、
あれもこれも、作ってあげよう、と思っていた。

帰りの車のなかで、外をじっと眺めながら、
「帰ったら今度はがんばるからね」
と言う母の横顔を、いまもときどき思い出す。

しかし、このときの彼女は、もうすでに
かなり限界に近い状態だったのだろう。
このときの私にはまだ、
わからなかったのだけれど。


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