さよならだけが人生か。でもさよならにも言い方がある。(22)

1月6日、東京は大雪。

いつもは自転車で病院に行くのだが、
さすがにこの雪では無理である。
国分寺市が運営しているマイクロバスと
バス停から徒歩20分の道のりをゆく。

見慣れたはずの風景が雪に包まれて、
意外と退屈せずに散歩を楽しんだ。

病院に着くと、洗濯物よりも先に、
「あの、これお返しします」と
看護師さんからずっしりと重い袋を渡された。
入院時に持ち込んだ、経口薬の数々だった。

母はもう、口から薬をとることができないから、
病院で用なしなのは、そうなんだろうけれど、
こちらとて、使い道はないので、微妙な感じだ。

母の場合、2〜3ヵ月に一度、まとめて
お薬を出してもらっていて、なおかつ、
途中で入院したり、施設に入ったりしたので、
家には、飲まないままの処方薬が
どっさりとたまっている。

医療関係者なら、なにか知恵があるかも?
という淡い期待から、「あのー」と
看護師さんに聞いてみた。
「こういうふうに、不要になった処方薬の
よい処理の仕方ってありますか?」

私としては、どこかの医療団体が
まとめて引き取って、なんらかの再利用を
してくれるとか、はたまた、
こういった薬を必要としている
海外のチャリティ団体に送ってくれるとか、
そういった情報があるかなぁと思ったのだが、

「あ、麻薬とか危険薬ではないので、
燃やせるゴミの日に
出していただいて大丈夫です」
とのコト。

そうか、ゴミにするしかないのか……
と思いながら、家に帰り、
ようやくホテル待機を終えて、
家での待機に切り替わった夫(英国人)に、
その薬を見せたら、
「それを捨ててしまうなんて、
クレイジーだねえ」と言われた。
「きっとそれを必要としている人は、
世界にはいっぱいいるはずなのに」と。

この夫の一言が引き金となって、
もう少しリサーチしてみることにした。
すると、貧しい母子のための診療所を
フィリピンで運営しているNPOの
ウェブサイト
を発見。

こちらに問い合わせをして、
手持ちの薬の一覧をお送りしたところ、
ほとんどのお薬を使ってくださるとのことで、
飲み薬だけでなく、軟膏や目薬、
そしてバスタオルや膝掛け、
ピクニックシートなども一緒に
送ることができた。

先方も、必要としている薬と、
もらっても仕方がないものがあるようなので、
お薬を寄付されたい場合は必ず、
事前に問い合わせすることをおすすめします。

また、海外にお薬を寄付することに関して、
ポッドキャスト経由で、かなり厳しいご意見も
いただいたので(道徳的問題や供給の安定性、
消費期限の管理などを担保できない、など)、
ご自身の判断でお願いします。

私自身は、供給の安定性や消費期限の管理、
といったリスク要因を含めて考えても、
いま、この瞬間に必要としている人がいて、
それを自分がもっていて、
医療関係者が管理仲介してくれるのなら、
送らない理由はないな、と思い、
ご送付しました。
しかし、この判断は、ほんとうに、
人それぞれだと思います。

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