さよならのそのあとで。<確定申告:提出編>
先日の税理士相談員さんと話したあと、
言われたとおり、LINE経由で
確定申告書作成会場の相談を予約したので、
自分なりに準備した書類を持って、
税務署に向かった。
相談会場でも先日の相談員さんとの会話でも、
「青色ですか?」という質問を
繰り返してされたのだが、
「青色と白色とどう違うんですか?」
とたずねても、
「青色は『青色』に丸がついています」
と言われるだけで、
なにをもって青色と白色に分けられるのか
について、ちゃんと説明してくれた人は
誰もいなかった。
が、会場でアドバイザーさんに見てもらって、
母の場合は「青色ではない」ことだけは判明。
相談員さんたちは、とにかく忙しそうで、
一応準備した書類にそえて、
どこに書き込めばよいのか、わからなかった
助成金の控えなどを見せたところ、
「はいはいはい、これはここね。
ここの数字が変わるから、こことここ、
直しますね」
とフルスピードで、書類を確認し、
必要に応じて、数字を訂正してくれて、
「はい、じゃあ、あちらで
入力してください」と隣の部屋に送られる。
隣の部屋には、ノートパソコンが
ずらーっと並んでいた。
ここで、アドバイザーさんが直してくれた、
さきほどの書類を取り出し、
必要事項を入力していく。
入力が終わったら、プリント部門で、
最終書類を受け取り、一部を提出、
一部は控えとして持って帰る、
という流れだ。
人が亡くなると、その人が確定申告する
必要がある場合は、
亡くなってから4ヵ月以内に「準確定申告」の
申告書を提出する必要がある。
ここまでは、通常の確定申告をするときと
まったく一緒だが、この最後のプリントアウトを
職員さんに渡してはじめて、
上のほうに「準確定」と書き込まれ、
その横にある「死亡・出国」の、
「死亡」のほうにぐるりと丸がつけられる。
職員さんは、パチンパチンと
書類をホチキスでまとめると、
「これで確定申告の作業は終了です。
お疲れ様でした」と、
私に、提出書類の控えを手渡した。
先日の、住民票の除票や、
母の戸籍にある「除籍」の印や、
確定申告用紙で丸に囲まれた
「死亡」の文字を見るたびに、
母が確実に過去の人になっていく。
母が亡くなったからといって、
四六時中、落ち込んだり泣いたり
しているわけではない。
むしろ、精神的にも肉体的にも、
比較的安定していて、
しなければいけないことに、
向き合っているつもりだ。
それでも、ときどき、
突然「穴に落ちる」ように
悲しみが襲ってくることがあって、
近親者を失う、というのは、
こういうことなのかな、と思う。
事務仕事の最中に出合った、
書類のうえの「死亡」の2文字は、
地面にぽっかりと口をあけた穴だった。
穴に落ちぬよう、しばらくは、
用心深く歩いていかなければいけない。