小学校の動物を幸せにする③
問題はおそらく教員が数年で転勤してしまう事と、その際にしっかりした引き継ぎがなされない事の二点であろうと、僕は感じた。
今まで多くの獣医師会の先輩方が、小学校で飼育されている動物の環境を良くするべく、様々な努力をしてきた。
それこそ実に数多くの試みを、知恵を絞り、地道な努力を積み重ね、時には高額な治療や手術さえも無償で引き受け、そのようにして数十年行われてきた。
しかし、それらの努力によって目に見えた改善は無く、歯がゆい思いをする事は数えきれないほどだった。
先程の巣箱が良い例だ。
巣箱を設置する時は、飼育動物担当の教員が大方「ありがとうございます!これで、このウサギ達も雨風をしのげるので助かります!」などと言って、感謝してくれる。
僕たち獣医師会のメンバーも感謝されると悪い気はしないので「これでひと安心ですね。後は増え過ぎないように、不妊手術をしましょう。そして、エサはこれくらいの量にしておくとバッチリです!」なんて、ウサギが幸せに暮らしてくれるだろうと、ある程度の確信を持って小学校を後にする。
そして数年後、同じ小学校を訪れると、当時の教員は異動になっていて、まずお目にかかれることが無い。
では、新しい飼育動物担当の教員はどれくらいウサギを理解しているかというと、大体は無である。
年齢、性別はわからず、名前がわからない事すら本当にある。
当然、エサの量や巣箱の使い方や不妊手術の必要性なんて、全く知らない。
しかし、この教員が悪い訳でも無いし、前任の教員が悪い訳でも無いらしい。
小学校では、これがスタンダードな事なのだ。
なぜなら、この光景は僕だけでは無く、数十年前から様々な獣医の先輩方が、それこそ数え切れないほど目にして来たものだからだ。