動物病院のカルテ 一本少ない?
ご家族のいない犬や猫に里親を探す、というボランティアをしている団体があります。
羽尾先生の動物病院にも、そんな団体の人がたびたび、保護した動物を連れてきます。
保健所で殺処分を待つ状況の子を引き取ったり、飼育できなくなったご家族から連絡があったり、いつまでたっても不幸な動物はいなくならないのだそうです。
実は羽尾先生のお家の子も、その団体から来た保護犬なのです。
その子は団体にいる間に、何度かトライアルで一般家庭で過ごしたのですが、引き取られずに戻ってきたそうです。
理由は三本足だから。
恐らく病気か事故かで、後ろの右足が無くなってしまったようです。
「へぇー、それでも人よりは足が一本多いのにねぇ」
その羽尾先生の一言が団体の人は大層気に入ったので、そこからトントン拍子に羽尾先生の家の子になる事が決まったのでした。
その子を連れて散歩をしていると、様々な人が声をかけていきます。
「三本足なのに偉いね」
「頑張ってるね」
「大丈夫?気をつけてね!」
結構なお年寄りも、偉いねぇ、と言ってくれます。
その方自身も杖をついていたりして。
(同じ三本足で、お互いに偉いですよ)
とは、羽尾先生は言わないのですけど。