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学校の動物を幸せにする⑦

学校飼育動物の担当になるまでは、その存在をそれほど意識していませんでした。
そういえば僕の通っていた小学校の片隅にも、ウサギ小屋かトリ小屋があったような・・・。
獣医として働いているのに、恥ずかしながらその程度の認識でした。
裏を返せば、それくらい学校飼育動物が動物病院に連れて来られない、ということなのかも知れません。

ところで、学校飼育動物とはどのような存在なのでしょうか?
僕が獣医師会内の「学校動物飼育委員会」に配属されたときに、先輩方から様々なことを教わりました。
その中の一つに、学校飼育動物も大切に扱われるべきだ、という物がありました。
飢えや乾きに苦しまず、本来の生態に沿って適切に飼育され、自由で幸せな生活を送れるようにする、という概念です。

一般的なご家庭で過ごしている動物は、ほとんどが家族と同様に扱われています。
ご自身のお子さんよりも可愛い、というお話しは本当に頻繁に耳にします。
もちろん冗談めかしてではありますが。
しかし、幼児から低学年のまま年をとらない子ども、と動物のことを考えたら、あながち遠くないのかも知れません。

学校飼育動物は、各市町村と教員と児童が飼育しています。
一般家庭に例えると、各市町村はお金を出してお世話をするわけでは無いお父さん、教員はお世話を押し付けられているお母さん、児童は言われたらお世話をするけど飽きたら遊んでくれないお子さん、といったところでしょうか。
お父さんは子どもの教育に役立てたい、お母さんは本当は動物嫌い、お子さんはお世話をするのが面倒臭い、などそれぞれ思惑があるかも知れません。

学校飼育動物と家庭で飼育されている動物は、違うと先輩方から教わりました。
確かに全く違うのですが、どこがどう違うのかは、最初はわかりませんでした。
それでも活動をして行き、僕なりに何となく学校飼育動物とは何か、の答えがおぼろげに形になって来ました。

僕たち学校動物飼育委員会は、小学校の授業支援に行くことがあります。
この授業では、クラスの児童に順番にウサギやチャボを抱っこさせたり、心臓の音を聴かせたりします。
また、ウサギを囲んで輪になって、絵を描いたりする場合もあります。
この時に先輩の獣医さんは、動物が疲れてしまわないようにと、教員に強めに注意します。
しかし教員からは、なるべく多くの児童に触らせてあげたい、という意見が出ます。
先輩獣医さんと教員のやり取りを聞いていて、それぞれの「学校飼育動物」に対しての認識が大分違うと感じていました。

そんなある時、以前診察を担当していた盲導犬を思い出しました。
盲導犬として働いている、ラブラドール・レトリバーです。
その犬は、一人暮らしの盲目の女性に連れて来られていました。
ハーネスをつけて女性を先導しながら、動物病院にやって来ます。
常にビシッとしていて、女性の身の安全をしっかり守っています。
ところが、診察台に上がる前にハーネスを外すと一変して、女性に助けを求めるようにすがったり、看護師さんの顔を舐めようとしたりします。
ハーネスをつけている時は仕事。
それ以外の時は女性の家族。
という風に生活をしているそうです。

盲導犬 = 使役動物 ⇒ 学校飼育動物

これだ!
授業の時は仕事、それ以外は家族。
これなら獣医の皆さんからも、学校の教員からも、きっとしっくり来るはずです。
僕はこの考えを、学校動物飼育委員会の皆さんに、折を見てお話してみようと思いました。

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