小説 俺が父親になった日(第五章)~誰かのために生きること(2)~
それでもキラの存在は、腐り切った俺自身を多少なりとも「まとも」にしてくれた。
一人の時のほうがむしろ時間が有り余っていた筈なのに、キラがいるだけで穏やかな時間が流れていた。その中にいる俺もまた、何処かしら穏やかな思いになることが、気付けば増えていた。
十月最初の週末だっただろうか。
西向きの窓からベランダへと風が吹き抜けた。さすがに夕方ともなると冷えるな、とノートパソコンから視線を外して思い切り背伸びをした。
「うおっ、いたの?」
背もたれから逆さまのキラが