遠い景色を思い出す。
夢で見た空はなんとも美しい薄紫色だった。
真っ白い浜辺に立つ君は振り返ってこう言った
「彼らがあなたに対して言ったことは何も気にしなくていい」
理解はできるが頷くことができない。
ただぼんやりと君とこの世界を眺めていた。
不意に涙が溢れ出しそうになって、何処かで鳥の鳴き声がした。あれはセキレイの声だ。
風は止む。涙ぐみ、夜の訪れを願っているけど夜は一向に来る気配がない。
此処では薄紫が永遠を彩っていた。
「だったら」と思った時、その思考を遮るように君は「それ以上何も考えないで」と言った。今は何も考えなくていいの。思考を放棄して目を閉じると暗闇をゆっくりと燃やしていたのは何もない朝だった。
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