「また会おうよ」って言葉が行き場を失くして宙を舞う。切れて風に踊る凧糸みたいに先が何処にも辿り着かないことは自明な筈なのにまた言葉を並べては放つ。どこにも行けないでいるそれは僕自身を表してる。言葉は僕のかたちをしてる。自覚を齎す為だけに生贄になった言葉たち。
「ごめんな」
声に出して言う。
せめて何処かには辿り着かせたかった。
それも叶わないのは無力さ故か誰からも見放されてしまったからか。ひとりで歩く桜並木。
世界に見捨てられたような気がして
「大袈裟だな」
ってまたひとりごと。桜ってすぐに散るよな。花火と一緒で儚いけどその潔さがとても好きだ。散った後もまだ空に幻を見せるところも一緒だ。
気づいたら立ち止まってた。桜も花火もない空を眺めてた。不意に涙が零れて____
「また会った」
____どこからか声がした。
僕は一瞬方向を見失ったけど声は背後からだった。振り返ると僕を貫いてもっと先のどこかまで見てるような澄んだ瞳が2つ。
「ほらね、また会った」
彼女は少し笑ったように見えた。
僕はうまく笑うことができなかった。
風は季節をひとつ押し戻すみたいに冷たく、それは季節の終わりを告げにきたようにも思えたし、この季節を浮き彫りにしたようにも思えた。
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