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ポートレート撮影において「相互無償」を前提とすることの違和感
お疲れ様です、フォトグラファーのまちゃる(@kazuyami77)です。
今日はちょっとポートレート撮影に関することを書いてみようと思います。ホームページやSNSを見ていて、モデルさんやカメラマンの募集に書いてあることがある「相互無償でお願いします」ということについてです。
この 「相互無償」=お互いに金銭のやり取りは無し ということについて、前々から少し違和感を感じていることがありました。そこについて、自分の考えも含めまとめてみます。
ちなみにこれ以下の内容は部分的に「相互無償」を批判する点もありますが、個人的には「相互無償での撮影」を全て否定するものではありません。
「こういう考え方をするやつもいるんだ」くらいのスタンスで見ていただければ幸いです。
「相互無償での撮影」に関する自分の考え方
最初の部分で「相互無償」について偉そうなことを言って始まりましたが、基本的に僕自身もプライベートでは「相互無償」での撮影をさせてもらっていることが多いです。
(「何を偉そうに書いてんの」と突っ込んでください)
上の告知記事にある通り、モデルさんに来てもらうための交通費・食事や休憩の費用・施設への入場料など、実費部分に関してはこちらで負担していますが、基本的に撮影費に関する部分は「相互無償」をお願いしています。
(ただ、仕事に関係するような作品撮り、撮影会モデル・事務所所属など決められた規定がある方は、ご相談のうえ料金をお支払いすることもあります)
これはお願いするモデルさんがモデル未経験の方が多かったり、「撮影の経験を積みたい」ということで、「相互無償」をご理解・ご了承いただいている方が多いという事情もあります。
そのうえで「なぜ自分が相互無償での撮影を相談させていただくのか」という流れをご説明します。
(ブログの撮影お申し込みの条件と照らしてご覧下さい)
①モデルさんには、撮影した写真をホームページやSNS上で掲載することを認めてもらう(写真展やフォトコン出展などは別途相談)
→モデル側の対価
②自分は撮影した写真をモデルさんに提供し、自由に使ってもらうことを認める。交通費や入場料など撮影に必要な経費の負担
→フォトグラファー(自分側)の対価
本来、プロのフォトグラファーである自分は、当然お金をいただいて撮影をお受けしています。
そしてモデルさん側もプロ・アマチュアを問わず、「人の時間を拘束する」という意味においては対価が発生するべきと思っています。
そこで、モデルさんには「撮影する時間」と「撮影した写真を自分の作品として発表する権利」を提供していただく代わりに、自分は「撮影した写真とその使用権」「必要経費の一部」を提供することで、費用の負担を相殺して「相互無償での撮影をお願いする」という形を考えています。
「相互無償」というのは結果的にそうなるもの
自分が「相互無償」の撮影をお願いする根拠をまとめてみました。ただ、これは僕自身が日頃は対価をいただいて撮影するプロだという特殊な事情も大きく関係するので、多くの方にはそのまま当てはまらないと思います。
ただ1つ言えるのは
モデルの対価 = カメラマンの対価 → 相互無償
がまず前提になることです。
お互いが得られる対価の面で合意ができて、その結果「お互いに無償で○○をしましょう」というのがこの社会の基本だと思います。
こう書くと「ボランティアなんかの例もあるじゃないか!」とご指摘を受けそうですが、この「対価」の部分は「お互いに納得できるなら変動はありうる」ということです。
(現にボランティア活動は自分の労働力や物資、お金を自分の納得のもとに無償で提供する活動ですし)
ポートレート撮影においては、「対価」が金銭であってもいいし、技術(上手く撮る・撮られるとか)であってもいい、はたまたコミュニケーションが取りやすいなど、いろんなものが「対価」に当てはまると思います。
もちろんお互いに合意できるなら、対価の一部を譲歩することもありうるでしょう。
ただ、先に「相互無償で」と理由やお互いの合意もなく提示することは「お互いにこういう対価がほしい」という前提と「じゃあ無償で撮影しましょう」という結果が逆転することになりかねないのではないでしょうか?
上にも書いたように僕は「相互無償での撮影」を全て否定しませんし、自分も多くは相互無償の場合が多いです。
ただ、「相互無償でしか撮影はしない」と前提を決めてしまうことが納得ができない条件での撮影を相手に強いることになったり、いろんな人との出会いを妨げてしまうのではないかと感じています。
結局、「楽しいはずのポートレート撮影が相互無償という目先の考えで、いろいろな矛盾を生むのではないか?」というのが僕が感じている違和感です。
正当に評価すること、されること
フリーランスで仕事をしていると、ある案件を受けた際にクライアントから提示される報酬が自分の予想通りや予想を上回る場合、僕自身は嬉しいというかどこか承認欲求が満たされる思いがします。
お金でそういう気分になるのは世知辛いというか浅はかと言われそうですが、何の保証もなく個人で勝負する身からすればある意味、「お金」というのは一番わかりやすい判断基準です。
今回のポートレート撮影の例に話を戻すと、結局カメラマン・モデルさんがお互いに正当に評価しあい、話し合いのうえ報酬や待遇について結論を出すのが、気分的にも条件の面でも最も大切なことだと思っています。
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