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ギャングタックル

最近、版権の問題がクリアされたのか、2年前のラグビーワールドカップ日本大会のフルバージョンがYouTubeに大量にアップされている。
本当に素晴らしい大会であった。
桜ジャパンのベスト8だけではなく、大会そのものの運営、日本人の心、
マナーやホスピタリティ。それを敏感に感じる海外選手たち。試合終了後、いろいろな意味を込めて「日本式お辞儀」をする姿は感動的でさえあった。
普段手厳しいマスコミも、日本の大会運営、日本そのものを褒めたたえる記事が世界中に溢れ、誇らしい気分になったものである。

私が現役だった何十年前と比べて、ラグビーそのものも様変わりしているように思えた。
まず、チーム編成。国籍は関係ないというのには驚いた。
母国ではレギュラーになれないが日本なら、実業団でたまたま日本に来ていたから、本当に日本が好きだから、理由はいろいろあるが、そんなことはどうでもいい、とにかく桜ジャパンを気に入った人はあつまれ。。。
何十年か前に、日本代表の平尾選手がスキーのCMに無許可で出演し、当時閉鎖的だった協会から大目玉を食らったのとは隔世の感である。
ラグビーそのものの激しさ、戦略性、ノーサイドの瞬間のさわやかさとフレンドリーさ、相手や観客に対するリスペクト。このような選手たちのラガー精神が、本当に感動を呼んだ。
すばらしいイベントであった。

◇ ◇ ◇

むかしむかし、ラグビーやアメリカンフットボールに「ギャングタックル」というタックルがあったように記憶している。記憶しているというのは、
本記事を書くにあったて、いろいろ調べたがヒットしなかったからである。
非常に危険なタックルである。
2人の選手が呼吸を合わせ、1人が一方から上半身にタックル。もう1人が同時に反対方向から下半身にタックルする。
当たり前のことだが、タックルされた選手は体が回転し、真っ逆さまに地面に叩きつけられる。手にはボールを抱えているケースが多く、全く受け身ができない状態で、頭や首から落ちるしかない。昔は特にアメリカンフットボールで悲惨な事故が多く起きていたと記憶している。
役割分担が明確なアメリカンフットボールでは、キーマンであり花形ポストであるクオーターバックの選手がターゲットになるケースが多く、病院送りや車いす生活を余儀なくされている方もおられる。
今のラグビーやアメリカンフットボールでは、禁止されているタックルだと思うが、昔は相手を敵だと思え!叩き潰せ!
というようなスポーツ文化も一部存在していたような気がする。
それに比べて、今のラグビーやアメリカンフットボールの試合を見ていると一見激しい感じはするが、ルールやレフリーの裁きを見ていると、これほど安全なスポーツはないのではないかと思えるほどである。

◇ ◇ ◇

ラグビーやアメリカンフットボールの試合では、安全な方向にベクトルは向いているが、世の中に「ギャングタックル」は存在しないだろうか。
政治の世界では?
新しい米中冷戦、朝鮮半島の問題。政治・軍事の世界では、核開発、ミサイル開発「そこまではやったらだめでしょ!」というギャングタックルはないだろうか。
毎日のように起きる犯罪報道ではどうだろう。
凶悪化しているような気がする。
国内政治では、政治と金の問題?
会社生活や、家庭内ではどうですか?
なんとなく腹が立っても、ここまでが一線というのがあったように思う。
「一線超えてるよね!」
それにつられてか自然災害も「ギャングタックル」化しているように思う。
地震、台風、豪雨、猛暑、極寒。。。人知の及ぶ部分もあるように思う。
感じることはないだろうか。

もっとゆったりとした世の中がなつかしい。
私は「ギャングタックル」が禁止されている世界がスキである。

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一村一矢
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