10/8(火)の日記:晴れときどきコーヒー豆の

朝、目を覚ますとベッドの隣に巨大なトカゲが寝ていた。彼の名前はタロウで、いつの間にか我が家に住み着いているが、もう慣れた。タロウはコーヒー好きで、朝になると私のために一杯分のコーヒー豆を体から降らせてくれる。今日は少し濃い目の豆を選んでくれたようだ。タロウにお礼を言い、豆を手で拾い集めてコーヒーメーカーにセットする。

窓を開けると、外は通常の空模様……かと思いきや、空にはカラフルな魚たちが泳いでいた。特にお気に入りの青いエンゼルフィッシュが、まるで挨拶をするかのようにヒレを振っている。どうやら今日は「空中魚祭り」らしく、街中が空飛ぶ魚たちでいっぱいだ。街のスピーカーからは「本日中に特大サイズのサバが上空に現れる予定ですので、お見逃しなく!」というアナウンスが聞こえた。どうやら、夕飯はそのサバを捕まえて食べることになるかもしれない。

朝食はいつものように、冷蔵庫に入れておいた謎の物体を取り出す。昨日買ってきた「なんでもパン」というパンは、毎回違う味がする。今日はカレー味らしい。特に感動する味ではないが、無難で安心感がある。タロウもお裾分けを期待しているが、彼はパンを食べないので代わりにコーヒーを一杯淹れてあげた。彼は満足そうに尾を振りながら自分の特大コーヒーマグを持ってバルコニーへと向かう。

出かける準備をしていると、壁から突然、手が生えてきた。これはよくあることなので、特に驚きはしない。その手は今日は郵便を届けにきたようで、青い封筒を持っている。差出人は誰なのか確認するために封を開けると、中には「次回のバトルロイヤルの日程は明日です。優勝者には星がもらえます。」と書かれていた。バトルロイヤルは町内で定期的に行われる恒例行事で、誰でも参加できる。勝者はその日一日、好きな星を空に飾ることができるのだ。前回はおじいちゃんが勝ち、空に「ハムスター星」という奇妙な星が飾られたが、今回は私も参加してみるつもりだ。

家を出て、近所の「次元交差点」まで歩く。交差点では、現実と異次元が交わっており、タイミングを間違えると一瞬で異次元に飛ばされる。今日は運良く、3次元世界に留まることができた。隣の家の猫が自転車に乗って通り過ぎたが、彼も異次元に行ってしまうことがよくあるので、毎回無事に戻ってこれるかが少し心配だ。

街に着くと、すでに大勢の人が集まっていた。皆、空を見上げながらサバを捕まえる準備をしている。今日のサバは特に大きいらしく、全長3メートルはあるらしい。私は釣り竿を持参してきたが、どうせなら空飛ぶ魚用のネットを使おうか迷っている。近くでサバ捕りをしていた友人のマリコが、「今日は魚の代わりにカバが降ってきたんだけど、どう思う?」と聞いてきた。空中カバはレアな現象だが、特に問題はないので「まあ、夕飯が増えるね」と返事をした。

昼過ぎになると、巨大なサバがついに登場。空が一瞬にして暗くなり、街全体にサバの影が落ちる。人々は歓声を上げ、サバ捕り合戦が始まった。私はネットを投げ、何とかサバの尾に引っかけることができたが、その直後、隣で巨大なスプーンを持ったおじさんがサバを丸ごと一口で食べてしまった。どうやら、今日はサバを食べることはできなさそうだ。しかたなく、帰り道に空から降ってきたカバをリュックに詰めて帰ることにした。カバは思ったより小さく、ちょうどリュックに収まったので助かった。

夕方、家に帰ると、タロウが何かを真剣に眺めていた。どうやら、バルコニーに突然現れたポータルが気になるらしい。ポータルの向こうには異次元の風景が広がっており、ピンクの空と紫の草原が広がっている。「行ってみる?」とタロウに尋ねると、彼は尾を振って賛成の意思を示した。私たちはポータルをくぐり抜け、しばらくその世界を散策した。ピンク色の木に実った青いリンゴをかじりながら、タロウと一緒に夕日を眺める。どうやら、今日はここで一夜を過ごすことになりそうだ。

夜空には無数の星が輝いているが、よく見るとそれぞれが何かしらの動物の形をしている。星座ではなく、文字通り星が動物なのだ。タロウはその中の一つ、カメ星を指差して笑っている。私はその姿を見て、今日も平和な一日だったなとしみじみ思った。

明日もきっと、コーヒー豆の嵐で目を覚ますのだろう。

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