アートとコピーを感じた日
アートとコピーという講座に通っていた。
つい先日約8ヶ月に及ぶ講座が終了したので、振り返ってみたいと思う。
アートとコピーとは
アートとコピーとは宣伝会議が実施する講座の講座名だ。
この講座の特徴はコピーライター/プランナーとデザイナー/アートディレクターが同数集められて約8ヶ月の講座の中で出される課題に対してペアを組んで挑むことにある。課題は大体7回くらいは出されるのだが、毎回ペアが変わり、7回課題が出されるなら一人のコピーライター/アートディレクターは全部で7人の異なる相方と組むことになる、という仕組みだ。
主催は、コピーライターの阿部広太郎さんであり、講義の中でゲスト講師が登壇される回などもあった。
振り返ると、楽しかったし学びもあったが、めちゃくちゃキツかった。
大体、月の初めに講義があり、講座の最後に次の課題とペアが発表されて月末には次の講座の為の課題を制作して提出するというサイクルだった。
タイムラインにすると
1週目・・・講義・課題発表
2週目・・・ペアの人と打ち合わせ・制作
3週目・・・制作
4週目・・・課題提出
というサイクルを半年以上繰り返していた。
課題の内容も様々であり、
・企画書を作る
・ポスターを作る
・展示会イベントを企画する
などかなり多種多様なお題が出されていた。
毎回の講義の中で、提出した課題に対してフィードバックがなされ、講師や時には受講生も参加する投票で、そのお題のベスト作品が選ばれたりしたのだが、当然そうすると講師に取り上げられるものと取り上げられないもの、投票が集まるものと集まらないものが出てきて、時には嬉しく、時には悔しい思いをした。
しかし、講義の最後に次回の課題とペアの組み合わせが発表されると前回の課題に対する余韻も冷めやらぬまま、次の課題に走り出さねばならず、そしてなんといっても参加している受講生のほとんどが初対面なので、ペアになった人とほぼ初めましてのところからスタートするのだ。色んな意味でハードルが高い。
講座が進むにつれて、ペアを組んだことがある人も増え、講義の後の打ち上げなどで話した人などが増えることで顔見知りが出来打ち解けてきたが、物理的にも心理的な余裕においても、目の前の課題に対応することが精一杯で、ペア以外の人と交流するのが難しかったとも言える。まぁ、最終的には仲良くなれたけどね!!
(当然ながら、全員が仕事をしており広告会社やコンサル会社に勤めていたり、独立してやっていたりするので、日々の仕事においてもハードシングスに対応している面々が集まっているので忙しいのは尚更だ。
例えるなら、太鼓の達人の鬼モードで、超高速で流れてくる太鼓に必死で対応してやっと曲が終わったと思ったら一息つく暇もなく次の曲が始まる、みたいな感覚が講座期間中ずっとあった。(次の課題が始まるドン!よーい!スタート!!!まってまってまってまってまって…
だからこそ、いろんな意味で鍛えられたと言えるし、だからこそ楽しかったので(シンドイけど)、結果として参加しては良かったと思っている。
そんなアートとコピーの中で、講義や課題に関して、学んだことや有意義なこともたくさんあったのだが、このnoteでは僕が講義期間において最も「アートとコピー」を感じた日のことについて書きたいと思う。
販促コンペの課題
講座の課題の中で販促コンペに提出する企画書を作成する、というものがあった。
販促コンペとはこちらも宣伝会議が主催されており協賛企業から出される商品・サービスのプロモーションについての課題を受け、解決策となるアイデアを企画書形式で募集するコンテストだ。
販促コンペの複数の課題の中から好きなものを選び、ペアで企画書を作成するという課題が出され、僕らは課題に取り組んだ。
この販促コンペは基本的に誰でも参加でき、審査においても作成者がわからないような配慮がなされているので、若手の登竜門的な扱いをされることも多い。
課題で作成した企画書は、別にコンペに応募しなくても良いのだが、おそらくほぼ全員が課題で作った企画書は提出していたし、課題以外で組んだグループで作った企画を提出していたメンバーが多かった。
応募締め切りが6月頭で、9月には授賞式があり、途中経過の一部は雑誌「販促会議」上で通過者の名前が記載されるようになっている。
ちなみに、僕もアートとコピーのペアで作成した企画書を提出した。
講座内で割と良い評価をもらい、自信もあったのだが、結果からすると一次通過すらできなかった。
その時に感じた感情が何かといえば、"悔しい"だ。
まぁそれはさておいて、課題に忙殺される日々を過ごし、気づけば販促コンペの結果が発表される季節になるとアートとコピーの受講生のうち二人(この二人はそれぞれ別のグループで参加していた)が賞を受賞をしていた。
そして、最終的な結果発表がある授賞式の日がアートとコピーの講座がある日の直前だったのだ。
※審査員特別賞などで他に受賞しているメンバーいて漏れてたらごめんね…
そんな講座がある日の前日に僕は受賞した受講生とは別のメンバーと連絡を取っていた、下のような連絡をもらった。
「せっかく同期が賞をとったから何かサプライズが出来ないか」という相談だ。
実は僕はこの受講生の人とはそれ以前にも販促コンペに関してやり取りをしていて、販促コンペの一次通過企画の発表があった日に僕もこの人も残念ながら一次通過することが出来なかったのだ。
そして、一次通過の時点で、(最終的に賞を受賞したのは2名だが)アートとコピーの同期の名前もちらほらあり、通過者名が記載された販促会議を手にしながら、僕は複雑な気持ちを抱えていた。
当然ながら、自分が通過できなかったことは悔しい。そして同期が通過したことは喜ばしいことだが、手放しで喜べているのかよくわからなかった。
もしかしたら、心の底には嫉妬とか羨ましさとかドロドロした感情があったのかもしれない。
しかし、僕が連絡を取っていたUさん(受講生だと呼びづらいので便宜的にUさんと呼ぶことにする)は自分も通過できず、悔しい気持ちもあっただろうに、自分はやりきれたし通過したみんなおめでとう!という趣旨の発信をSNSでしていたのだ。
僕はその発信を見て、心がスッと軽くなり、自分が努力したことと他の人の結果はあまり関係がない、自分の結果は結果として受け止めて、他の人に対して祝福する気持ちをストレートに表現できるのはなんて素晴らしいことなんだろうと思えた。(なので、その発信を見た後に、そんな風に捉えられるの尊敬できると連絡した)
そういうやりとりもしていたので、僕も受賞した同期に対して何かしたいと思った。
ただ、いかんせん時間がなさすぎた。
上記のやり取りをしたのは講義がある土曜日の前日の金曜、しかも日付も変わった深夜のことだった。
そんな状況から、最初は「何かする」といっても花束を贈るとかできればいいのでは、と思っていた。
だから下記の内容も本気で実現する、というよりは出来たらいいかな位の温度感だった。(オリジナルケーキを作っては?という案もあった)
それからUさんが講義の前に開いている同期の受講生何人かに声をかけてくれて、渋谷駅のカフェに集まったのだが、その中にアート生(アートとコピーのアートディレクター側の受講生の人のこと)がおり、カフェで受賞した二人にプレゼントするTシャツにプリントするロゴを作ってくれていたのだ。
そして作ってくれたものがこちら↓
めちゃくちゃいいじゃないか!!
前日の深夜には何もなかったのに、次にカタチになっていたことに感動したし、アウトプットの内容自体も素晴らしいものだった。
その後、ドンキやらロフトやらで必要なものを買い揃え、オリジナルTシャツを当日入稿で作ってくれるお店で作り、他にも準備を揃えてから講義に向かい、アートとコピーの講義が終わると、講義に参加していたメンバーの大半が行く講義終わりの行きつけ(というか講義終わりの22時ごろに表参道周辺で大人数が参加できるのがそこしかない)居酒屋 中西に向かい、サプライズで受賞したメンバー2名にプレゼントを渡した。
(とんでもなく余談だが、中西の海鮮塩焼きそばがめちゃくちゃおいしい。ソース焼きそばがないのに、海鮮塩焼きそばだけがあるの謎だけどおいしいから些事である)
プレゼントの内容はオリジナルTシャツと同期の僕たちからの賞状だ。
その時の様子がこちら↓
結果として、二入ともすごく喜んでくれたので嬉しかった。
「感動して泣きそうになりました」と言われた。(そこは泣けぇぇと思ったのはここだけの秘密だ)
なぜアートとコピーを感じたか
改めて、この出来事で僕がなぜ「アートとコピー」を感じたかについて記したいと思う。
①アイデアをゼロからカタチに出来たこと
毎回の課題がまさにそうだが、"のがアートとコピーでやっていることだ。
今回のサプライズはまさにゼロからカタチにしていた。
お題:受賞した同期へのサプライズ
アウトプット:オリジナルTシャツと賞状&サプライズ
前日の夜から始まり、何もなかったところから翌日にはアウトプットになっていたことで、その過程を圧縮して体験できたと思う。
きっかけとなった僕とUさんはコピー生(アートとコピーでコピー/企画を考える受講生のこと)なのでデザインなど実際に手を動かしてカタチにすることはできない。そこにアート生が加わることで、ともすれば深夜のテンションで呟いたことが実現した、それも素晴らしいクオリティで、だ。
②仲間を巻き込んで熱量が上がっていった
きっかけはUさんから僕に相談があり、Uさんが同期に声をかけ、同期数名で集まり、今回のサプライズを実行できた。
ここで何より大事なのは、同期をサプライズでお祝いするという、必要性の観点で言えば全く必要はない"祭り"に賛同して参加してくれた受講生がいたことだと思う。
アートとコピーは、仕事外の時間で行っている活動なので仕事ではない。つまり絶対にやらないといけないと理由、参加しないといけない理由はない。少なからず、ここに参加する同期の受講生はレベルアップしたい、とか出会いが欲しいという参加動機つまり熱量が同じであったと思う。
業務外で何かを作ったりするのは、スキル面で探そうと思えばいくらでも見つかるだろうが、自分と同じくらいの熱量の人を探すのはかなり難しいと思う。(それに熱量が違えば、どちらかが無理をしたり、だんだんとシュリンクしていく気がする)
アートとコピーというきっかけがあるから熱量が同じくらいの人間が集まり、そこで切磋琢磨し、議論を交わすころで何かの気づきや視野が広がるのだと思う。
今回も、同期をお祝いするというきっかけがあり、そこに面白がってくれた人がいたことで段々と盛り上がっていった気がしている。(もちろん、前日に急遽決まったこともあり、時間的な都合で参加できなかった受講生もいたり、急遽だったので声をかけていない人もいる為、参加していない=熱量がないでは決してないのだが)
③悔しい気持ちを抱えて祝福できた
アートとコピーでは課題が総評され、毎回ベスト作品などが選出されることがあると先述したが、今回の販促コンペも受賞できた/受賞できなかったという点では同じであると思う。
この選ばれる/選ばれないという結果がどんな感情を引き起こすかと言えば
選ばれれば嬉しいし、選ばれなかったら悔しいのだ。
では、選ばれなかった時に選ばれたペアや人に何を思うかと言えば、おめでとうだ。好みや嗜好の違いもあるが、選ばれたものは「良い企画だな…」「その観点があったか…」と思うことが多かった。
つまり、自分が選ばれなくて悔しい、という気持ちと他の誰かに対するおめでとう、という前向きな気持ちは両立する。(でも自分の企画もめっちゃいい企画だもんね!!!とも毎回思っている。ここ大事)
販促コンペで言えば、同期がほぼ全員出していて受賞できたのは二人のみなのだから、他のみんなもきっと悔しかったに違いない。同期の中でも、心の底では複雑な感情もあったかもしれないし、それは何も間違っていないが、少なくとも僕は同期が受賞できて嬉しかったし、おめでとうと純粋に思えた。
そしてこれからも同じようなことはまた起きると思う。
このアートとコピーは講座の中でペアになって作ることが目的なのではなく、この講座で出会い、仕事をしたり、広告賞などに応募する相方や仲間を見つける為のきっかけの講座なのだ。
同期の誰かが、また何かの賞を受賞するかもしれないし、ブレーンや宣伝会議に事例として掲載されるような案件に関わりクレジットが載ったりする日が来るだろうし、来て欲しいと思う。もちろん、僕もお祝いされる側になりたいし、なれるようにこれからも努力しようと思う。
そんな時が来たて、同期の誰かの活躍を目にしたら、僕はきっと「悔しい」だから自分ももっと頑張ろうと思えると思うし、「おめでとう」と純粋に思えると思う。
悔しいとおめでとうと思える仲間は良い意味でのライバルなんだろう。
長くなったが、同期にサプライズをするというその行為が、アートとコピーを象徴する出来事として、僕の心の中に残っていたのでここに記した。
仕事に追われて、講座の課題と両立するのがめちゃくちゃシンドかったり、課題について考えても考えても良い着地が見つからず、でも締切は迫ってきて泣きそうになったりしたこともあるけど、参加して良かったなと思う。
そして何度も書くがこれはゴールじゃなくてスタートなので、この経験を更に糧にしてもっと成長して活躍を阿部さんにも同期にも見せていきたいと思う。
ルックバック風に言うなら「作り続ける」(私よりっ!!企画上手いやつがいるなんて許せない!!!ごめんなさい嘘です。普通にいるよね。気概の話です)
そして同期のみんな、また何かしましょう。
何かしましょうって普通だと絶対に何もやらないやつだけど、アートとコピーの同期なら"何か"出来るメンバーだって信じてる。
最終回では阿部さんのアクスタと似顔絵Tシャツを作りました。
これも完全にアートとコピー。
やっていこう。
もし良いと思ってお気持ちをいただけるとやる気がでます。コーヒー代にします。