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パーフェクトな日だから

何かしらのアイデンティティが欲しかった。
他の誰とも違う
自分を自分たらしめるものが欲しかった。

だけれど私はあまりにも普遍的で
時間の流れと共に、ゆっくりと世界の背景になってしまう自分を、ぼーっと眺めることしかできない。

身長151センチ体重42キロ足の大きさ23センチで、頭脳明晰な訳でもなければ、運動神経が飛び抜けて目立つわけでもない。
学芸会なら村人Aか主人公のお付きの人役。
スポットライトが私だけを照らす事はない。

そんな私にも、ささやかだけれどひとつだけ、
誇れるものがある。

自分の誕生日だ。

6月28日。私の誕生日は、特別目立つ数字ではないし、イベント事にも無縁の日。
それでも良い。この日は、この組み合わせだから特別なのだ。

完全数をご存知だろうか。
自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数の事で、1万以下の位には、この完全数はたったの4つしかない。2桁までの自然数の中には、6と28しか完全数として成り得ない。

366通りの組み合わせが存在する誕生日の中で、私は唯一完全なもの同士の組み合わせを引き当てたのだ。これは私の小さな誇りであり、確実に私の一部として息をしている。
スポットライトのように強い光ではなくても、陽の光のように柔らかなものがあれば、生きる上では十分だ。

この日はパーフェクトナンバーとも言われており、この強そうな響きが更に好きだ。
目立つ様な人生ではなくても、いつか世界の一片として溶け込んでしまっても、それでも私はパーフェクトなんだ。
完全な幸福に抱かれる強さを、この日は与えてくれる。

それだけでいい。充分じゃないか。
私はこの先も自分の当たり障りのない人生と向き合いながら、日々の小さな光を抱いていく。


余談ではあるが、6月28日はパフェの日らしい。
パフェはフランス語でパーフェクトという意味を持つことが由来の様だ。

今年の誕生日は、
ケーキではなくパフェを用意しようか。

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