消費税の負担についての、とある会話。
長い文は読むのが面倒くさい、という人のために。
「いま消費税がなくて、ある商品の価格が100円だとする。」
「はい。」
「10%の消費税が導入されて、すべての商品が10%値上がりしたとする。消費者は値上がりした商品を買う時に、その値上がり分を消費税として負担するんだよな。」
「そうですね。」
「さっきの商品の価格は110円になる。これをひとつ買う消費者は、10円を税として払うことになる。」
「そうです。」
「消費税がない時に110円のお金を持っていた消費者が、消費税が導入されても同じ110円を持っているとしよう。物価が10%上がったから、この消費者のお金は、税導入前を基準にすると、実質100円になっているな。」
「ちょっと待ってください。えっと……以前に100円で買えたものが、今は110円出さないと買えないので、今の110円の価値は、以前の100円と同じ。うん、そうですね。消費者のお金は実質100円になりました。」
「消費者は損をした。」
「まあ値上がりがなければ、手元のお金は実質でも110円だったはずなんで、10円分損してますね。」
「ではその手元にある110円でさっきの商品を買おう。110円を手放して商品を手に入れる。買った後、消費者の資産の時価評価額はいくらだ?」
「その商品1つを持ってるだけなら、110円ですね。」
「買う直前は?」
「110円のお金ですから、もちろん110円です。」
「消費者は損をしたか?」
「……いや、してないですね。」
「消費税の理屈では、買った時に10円を税として支払うんだから、買った時点で10円損しないとおかしいだろう。」
「まあそうですが……」
「消費者が10円損したタイミングがある。それはいつだ?」
「ああ、値上がりの時点です。」
「では、この消費者が商品を買わなかったとしよう。消費者は損をするか?」
「値上がりで、手元のお金が実質的に減って、それで損をしてます。」
「消費者は、商品を買わなくても10円を損して、商品を買う時には損をしていないということだな。」
「そう……なるのかな……」
「では企業のほうを見よう。企業がその商品を1個だけ持っているとする。消費税がなかった時の価格は100円だ。この企業の資産の時価評価額はいくらだ?」
「その時点では100円です。」
「消費税が導入される。商品価格が110円になった。企業の資産額は?」
「110円。」
「以前を基準とする実質では?」
「えっと、物価が10%上がっていて、今の110円は以前の100円だから、商品1個は以前の100円相当なので、100円ですね。」
「値上がりによる損得はあるか?」
「金額では10円分増えてますが、実質だとない、ってことになりますか。」
「では消費者に商品を売ろう。商品を手放して、110円を手に入れる。この時点で企業の資産額は?」
「110円のお金ですから、金額で110円、実質で100円です。」
「取引の直前と直後を比べて変わったか?」
「変わりません。」
「この取引で、企業に損得はあるか?」
「資産額で見れば、ないってことになりますね……」
「企業がこの取引について、10円を消費税として政府に納めるとしよう。企業は損をするか?」
「します。10円を払って、手元には100円だけ残るんで。」
「政府が税として手に入れる額は?」
「もちろん10円です。」
「企業が消費税分を消費者から預って、それを納税するから、企業には負担がない、と言われているな。」
「価格への上乗せができれば、ですが。いま考えてるのは価格に上乗せできてるから、そうですね。」
「企業に負担がないなら、納税の時に税額分だけ手放して損をするのだから、あらかじめ預る時に得をしていなければならない。」
「それが相殺されるから負担がないんですものね。」
「では企業は取引の時に得をしたか?」
「……してないです。」
「うん。企業は損をするだけだ。その損の額はいくらだ?」
「税を払う時の10円、ですね。」
「政府の税収額は。」
「10円。」
「では消費者と企業の両方を見てみよう。得をした者はいるか?」
「政府は10円得してますが、消費者と企業は両方とも10円損してます。」
「消費者はいつ損をした?」
「値上がりの時です。」
「企業は?」
「納税の時。」
「政府が得をしたのはいつだ?」
「企業が納税する時です。」
「消費者の損は、商品を買う時に起きるか?」
「いえ、値上がりの時です。」
「商品を買わなければ消費者は損をしないか?」
「いや、値上がりで損をするので、買うか買わないかは関係ありません。」
「では、消費税を負担しているのは誰だ?」
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