イベントマーケティング村の周縁からtipsにならない想いを書き連ねるコラムよ届け
このカレンダーも11日目になりました。そろそろ変化球というか飛び道具的なサムシングを求めている人に届きますように。
まえがき
スーさんからこの企画に誘っていただき、毎日皆さん本当にまばゆいばかりのイベントマーケティングに関するtipsやノウハウを惜しげもなく披露しているのを見れば見るほど日々いきあたりばったりで仕事している自分に対して自己嫌悪している12月です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
何しろ「ヨシイさんって、良い意味で再現性がないですよね」と言われる人間です。この記事は参考書や資料集に時折挟まれる「穴埋めコラム」のような気持ちで書きますし読んでもらえると良いかなと思っています。
なお、この記事は個人の意見であり会社としての見解を示すものではありません。繰り返します。最初から最後まで個人の意見です。
お前誰よ?
長年人と企業と地域をつなぐ会社でイベントディレクターの仕事をしておりました。オフラインイベントで登壇者に残り時間のカンペを出すADさん見たことありませんか?あれをやったり、会場奥の方のテクニカル席で映像さんや音響さん、照明さんに指示を出す進行ディレクターをやったりしていました。実は今もたまにやっています。
基本的には大手企業のイベントマーケターさんの指示で運営計画考えたり、演出考えたり、マニュアルや台本作ったり、とイベントプロデューサーというのもおこがましい裏方の仕事をしておりました。
そんな状況が、コロナ禍で一変します。
それこそ、健康食品のドラマ仕立てCMのレベルで変わります。
当時開催事例がほとんどなかったオンラインイベントのテクニカルに振り切った業界向けのウェビナーで登壇し、映像業界内から謎の存在として認知される
ヤンさんの記事にもあったイベ博daysで日本・グローバルを代表するオンラインイベントプラットフォーマーのCEOが登壇するパネルディスカッションを仕切り、オンラインイベント業界から謎の存在として認知される
よくわかんないけどお前配信とか詳しいし人前で話せるみたいだからDX推進の社内ウェビナーやれと言われ所属会社のみならず親会社も配信対象になってしまいグループ全社に謎の存在として認知される
よくわかんないけどお前DXとか詳しそうだし人前で話せるみたいだからイベントマーケティングの社内講師とかDX人材育成の推進とか全社に導入する新しいシステムのイネーブルメントをやれと言われ自分の仕事がよくわからない謎の存在になる
外形的には「イベントマーケター」かもしれない
こんなことがこの2-3年で起こってしまい、いきなり裏方稼業から登壇者兼ウェビナー企画兼講師兼イネーブルメント業という謎の業態転換が発生し、その副産物としてイベントマーケターの皆さんとはこういう話題であればついていけることができるようになった(と思っています)。
セミナーの企画、登壇相手、もうネタが無い
内容もそうだけどタイトルとかメルマガのほうがむしろつらいときもある
視聴人数気になる でも視聴数だけ追い求めても何も変わらない
イベントとかウェビナーの「中身」を考えると自然と「デジタルマーケ」を考えるようになる
デジタルマーケ施策では何も変わらない(ように思えてくる)のでリアルのコミュニティ施策を考えるようになる
皆さんと違うのは、ゴールとして見ているのが「営業数値」ではなく「新規事業創出」とか「風土変革」みたいなやたら遠いところをみているところだと思っています。なのでここからのtipsめいたあれこれがこの記事を読んでいる皆さんが求めているものに当てはまらないとしたら、「これは穴埋めコラム」であると改めてお伝えしておきます。あ、あとあくまで個人の意見です。
「面白さという病」〜全ては現場で思った違和感から始まっている
ヨシイが昔進行ディレクターをしていたころ、BtoBイベントのセミナーはだいたいこんな感じでした。
会社紹介が長い
一方的な商品説明で終わる
話が上手だからではなく、他の要素で人選が決まっている(ように見える)のでプレゼンがつまらない
パネルディスカッションに至っては上記の要素に加えて「あらかじめ話す順番と内容が決まっている」ディスカッションが多く、モデレーターはパネリストの話を引き出すわけでも自分の意見をぶつけるわけでもないので「単なるパネリストのプレゼンの集合体」になるケースが散見されていました。
言葉を選ばずに言うとつまらないのです。
なので、自分がプレゼンをするときは、この「BtoBイベントで良しとされていたお約束」をなるべくしないようにしています。
会社紹介をしない
商品説明をしない 商品を使うように至る前提もしくは商品を使うことによってもたらされる世界を話すようにする
させていただくとか、必要以上にへりくだらない
スライドに話すことすべてを書き、その内容に基づいて話すことをしない
このあたりは「ウェビナーのライバルはネトフリ」と喝破された私の尊敬する富家さんが私の駄文の2万倍の粒度で書いてあるnoteを参照してもらうほうが良いです。
実際に前述のイベ博daysでも、登壇いただいたパネリストの方には事前に説明をし、理解いただいた上で台本を作らず、論点提示にとどめたうえでディスカッションを敢行したのですが、スーさんの所属会社でもあるEventHubのCEO山本さんからは事前打ち合わせに無かった反論をいただき、それはそれはスリリングなディスカッションになりました。相手の力量が重要な要素ではありますが常にディスカッションはこうあるべきだと思っています。
再現性のないウェビナー企画術
昨年度までは隔週、今年度からは月1回ペースで社内ウェビナーを配信しています。おかげで連載漫画家の苦労が少しわかった気がします。
今思えばやらないのが間違っていると思っていますし、かといっていまから導入するのもなあ、と思っているやらないことがこれです。
読者アンケートの実施
担当編集者のアサイン
編集会議の実施
あえて漫画の世界に合わせましたが、イベントマーケでウェビナーやってるのであれば、絶対にアンケートの実施は必要でしょうし(自分が外部登壇したら絶対にそう言う)、組織でやっているウェビナーであれば企画を承認するプロセスがあり、組織である以上分業が基本ではありますが、企画から登壇者のブッキング、スライド作成から本番のトーク、動画編集までひとりでやっています。完全にあたおかです。
これもあたおか発言だと思っていただいて結構なのですが、人の手を経るとコンテンツが薄まる可能性があると思い込んでいるというのも大きいです。
一方、合議で時間を使われて、実際のコンテンツに取り組む時間が割けない、という経験もあるので、全部ひとりでやることでこういった調整のための無用な時間は省けるのですが、結局捻出できた時間でずっと悩んでいます。
これを読んでいるイベントマーケターの皆さん、誰にも邪魔されず自分の話したい伝えたい内容を、自分の話したい人と作るウェビナーをやれたらなあと思ってるのでしょうか?思ったことがある方いらっしゃいますか?
実際とても楽しいです。ですが待っているのは自由の刑罰です。
自由、つまり何をやっても良いという状態って、企画が上がってこなくて悶絶する自由や、内容が良いのか悪いのか判断できなくて苦しむという自由や、スライドが書けなくてひたすら気晴らしに逃げ込む自由も含みます。
この記事唯一の汎用性のあるtipsは、やはり締め切りを作ることに尽きます。ただこれも問題があって、内容が固まっていなかったり深まっていないうちに告知をすると、本番の内容とタイトルに齟齬がでたりします。こういう場合直前にタイトルを変更するとか、どうにでも取れるタイトルにするのもよいのかもしれません。
あと、超個人的な重要ポイントがあって、「ウェビナー開始5分までのトークが頭の中で再現できる」状態になっていることがスライドを書ける状態になる必須条件です。よく「いきなりスライドを作るな。まずは話したいことを書き出せ」というtipsがあるのですが、どうしてもこれが苦手なのです。
本番当日の朝も、シャワーを浴びながら開始5分までのトークを反芻します。これがうまくいっているときは、本番もうまくいっている(はず)。
ゲストに「面白かった」と言ってもらうために
企業ウェビナーが単独から共催形式にシフトしていく流れをなぞったわけではないですが、今年度から社内ウェビナーも基本的には社内外問わず「ゲスト」をアサインしています。そしてこのゲストを呼ぶ形式でやらないように心がけているのが
相手の発表を「流す」こと
です。具体的には相手方の発表が始まってから終わるまで何もコメントを挟まない、質門をしない、進行を止めない状態、つまり流しっぱなしになっている状態を避けるようにしています。
そのためにやるべきこととして、極力自分に課していることがあります。
①相手の著作があれば、著作を読む
②インタビュー記事や講演スライドに目を通す
③可能な限り①or②の作業を行ったあと、事前打ち合わせを行う
ここでも会社紹介嫌いが顔を出していて微笑ましいのですが、会社情報だけを相手の情報として取り入れ、それを元にトークを膨らましていくことに嫌悪感限界を感じています。その人が、その会社が表向きには表現していない隠れた情報をもとに仮説を構築して、事前打ち合わせで仮説をぶつけるようにしています。
この仮説検証がうまくいくと、大体対談相手の方からは「楽しかったです」と言っていただけますし、企画者としても話し手としても冥利に尽きる瞬間です。
結びに替えて
あれは去年の年末の会食だったか「結局BtoBは酒でしかナーチャリングできない」と叫んでいた方がいらっしゃいました。企業は理詰めのマーケティング施策の結果サービスを購入するのではなく案外トップの鶴の一声とかもっと人間臭い要素で意思決定をしている可能性があります。そして来年以降雰囲気でイベントマーケティングをやっていた企業は想定していたKPIが得られないため突如方向転換するかもしれません。かたやイベントマーケティングがうまくいってユーザーを増やした企業はアップセルクロスセルという新しい難問に立ち向かうことでしょう。来年も新しいマーケティング理論が我々の頭上を飛び交い、たくさんのウェビナーとDMが生み出される時代は続くと思われます。
下図はヨシイがいろんなところで引用している「DX白書2021」から日米のパートナーシップの提携先を比較したグラフです。
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2021.html
![](https://assets.st-note.com/img/1702212459547-607XbwiodE.png?width=1200)
一番上の「競合他社」の開きに注目
当時も今も「競合他社」とパートナーシップを組むという選択肢の存在と、アメリカにおいてそれが少なからず選択肢に入っていることに驚いているのですが、このアドベントカレンダーのように会社の垣根を超えて緩やかに繋がる試みというのは今後より価値のあるものになると考えています。
またアメリカのイベントプラットフォーマーであるCvent社は今後ビジネスイベントで求められる要素に「参加者同士のエンゲージメント(より深い結び付き)」を上げています。主催者と参加者のエンゲージメントではないことに注目してください。
個人的には「多くの人におもしろメッセージを届ける」ことと「眼の前の人に手を差し伸べる」ことをどうやって両立しようかでのたうち回った一年でした。来年はもっとわけのわからない何かと格闘することになると思います、と呑気なコメントを書くことが憚れるくらい今年の案件の積み残しがまだ大量に残っています。待たせている皆さん本当に申し訳ありません!