それぞれの正義/2025年1月9日(木) 生活者になりたい 4

朝一番で利き手の診察とリハビリに行く。

昨年のお盆明けの骨折からもう5カ月近くが経つが、薄まっているとはいえ亀裂も見え、筋が張って仕方ない。聞いていた全治期間は何だったんだ。そこの君、全治とは何かね。ということで未だ8割治。

篠突く冷たい雨のせいで整形外科は人もまばらだ。どこか殺伐としている受付の様子がいつもと違う。担当の若い女性の理学療法士さんに聞けば、先生が年始に倒れて休診だったが、昨日から代打の先生が来ているのだという。

理学療法士さんと治療に関係すること以外は基本的に話すことはない。ただ、年末に北海道出身であることや、就職で縁もゆかりもない大阪に出てきたことを話してくれた。メイクやメッシュの入った髪色にギャルとしてのルーツを感じるが、寡黙で落ち着いた声色に、いつもどこか頼もしさを感じてきた。

このくらいの寒さは屁でもないんだろうなと、いつもより静かなリハビリ部屋のやたらと白い天井を見つめて考える。同僚にも同じことを言われているだろうしあえて言わないけれど。労災の保険がまもなく切れるので、今月を最後に会うこともないのだろう。

世の中にはいろいろな仕事があり、皆それぞれの正義を持って取り組んでいる。


社でデスクに向かい、年度内納品の仕事あれこれ。早めに帰って夕食を食べ、好きな著者目白押しの犬&日記特集の『文藝』を開く。すると岸本佐知子さんの『尻 on fire 日記』が面白すぎて噴飯。ごく短い備忘録スタイルの日記だが、一言でたとえればキレ味がエゲツない。Xに上げた感想は以下。

「急ぐ必要もないのに急いで買って帰った文藝、岸本佐知子さんの『尻 on fire 日記』で、かきこんでいたのりたまごはんを意図せず噴飯、机に花が咲いたよ。原田伸郎の実家に電話した友人の話ほか、つよつよ屈託エピが瑞々しくもざるに山盛り」

「人に見せない」という設定の書き方が唯一許されるかたちが日記。綴られた言葉で、消えていた些細な記憶が特別になっていく。もっと自由でいいんだなあと、今日も髪がBUCK-TICKの息子を見ながら思う。自分はマジメ過ぎるし説明し過ぎる。昔はあれだけいちびった文章を書いていたのに、いつしか忘れてしまっていることに岸本さんの文章で気付いた。


四畳半でゲラのち、風呂とドラえもん英会話と柔軟。息子は久々の学校でずいぶん疲れたみたい。


文学はハイカルチャーなのだろうか、とマンガ以外の本を読んでいる気配がない同僚を見て思う。
文芸誌のしおりはなぜかティッシュにしてしまうクセがある

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