PC-1500 - ポケットに入るパソコンを目指した
まだ当たり前のレトロなPCもたくさんありすぎて、まだ取り上げていない機種も多いのですが、眼の前でこのポケコンがこちらを見ているのような気がして書くことにしました。
ポケットコンピュータと呼ばれる大型の電卓のようなデバイスとして、シャープからPC-1210/1211が発売されたのが1980年です。価格も安い方のPC-1210で良ければ3万円を切る値段なので、今までパソコンに手を出せなかった人には大歓迎でした。それにパソコンを持っていても電池で動き持ち歩いて使えるというのは魅力的で、画面が1行分しかなかったにも関わらず、さっそくゲームを作り始めた人も多かったです。学校に持ってこれるのですから互いに成果を見せあって、毎日のようにバージョンアップをしていました。
シャープのアプローチは、BASICが動く関数電卓をつくるというよりは、関数電卓の見かけをしたパソコンを作ろうとしていたようで、電卓として使いたければBASICの命令で式を入れる必要がありました。わざわざPRINT命令を書かなくても良いように、RUNモードでは式を入れるだけで結果が出るようになっています。
ポケットコンピュータの製品一覧
シャープ博物館 ポケコン別館
相変わらず画面は1行だけですが、これを156✕7のグラフィック画面として使うこともできます。それに本体メモリは4K弱ですが、8Kの増設モジュールもありました。そして実用的に使えるようにしたのは4色のボールペンの先を取り替えながら使うことができるカラープロッタが接続できることでした。カラーでグラフを書くことはもちろんですが、これを使って作ったプログラムのリストが取れるんです。プリンタと違ってペン先がチマチマ動きながら印字してくれる光景はなんだか可愛く見えたものです。
PC-1500 カタログ
http://bluess.style.coocan.jp/computer/pdf/SHARP_PC-1500.pdf
たまたまシャープにお勤めのお知り合いがいたこともあり、発売開始してすぐに、せっかくなのでタブレットのように自由にボタン入力もできるボードを含めたフルセットを、そのすべてが収まるスーツケースごと、こっそり?社割で分けてもらうことができました。当時、市ヶ谷にあった東京本社に伺って、持って返ってきたのはよく覚えています。
SHARP PC-1500
少しばかりお値段が張ったこともあり(本体だけで約6万円)、発売当初はなかなか売れ始めなかったのですが、工学社からI/O別冊としての特集号や、ソフトバンクのプログラムライブラリーの書籍も出てきて(ソフトバンクって元々はこういうのを出す会社でした)、ありもののゲームでも遊べるようになり、少しづつですが人気も出てきたようです。
ポケットコンピュータ SHARP PC-1500/1501 と周辺機器たち
さて搭載しているBASICですが、パソコンと比べても遜色のないものとなっており、LCDへのグラフィック命令だけではなく、カラープロッタに対する本格的なグラフィック命令も備えていました。またBASICのワークエリアなども公開されており、マシン語との併用にも困らないようになっていました。
Sharp PC-1500 JP Instruction manual
https://pockemul.com/wp-content/uploads/2020/05/PC1500_OM_JP.pdf
そしてCPUもLH5801というZ-80と殆ど互換性のあるものだったので、手元のPCでアセンブラを動かしてコードを作ってしまうことも出来ました(このためにもGAME言語でアセンブラを書いたのです)。
LH5801 language machine codes (Manuel Sharp)
普通のカセットを使う専用のデータレコーダを使うことで、プログラムでデータの読み書きも出来たのですが、これを使って自作の英単語帳なんていうものも作っていました。もっとも漢字は使えなかったですけどね。また必ずしも制約のある画面を使わなくても、プロッタに出力することで、むしろ使いやすいプログラムを書くこともできるんだなとも思うようになり、パソコン側でもレポートジェネレータなんていうものを調べるキッカケにもなりました。
こんな狭い画面で何が出来るのかなんて思うかもしれませんが、そこは創意工夫で結構イケてるゲームなんかも作れましたよ。パソコンで動かしてどうするんだとも思いますが、エミュレータなんかもしっかりあるようで、古のゲームも楽しめるようです。
Sharp PC-1500 (TRS-80 PC-2) resource page
今でも本体だけは動作しているのですが、メカ部分のあるプロッタやデータレコーダは動かなくなってしまったので、どこかにいってしまいました。さすがに修理する勇気はありませんでした(消耗品も手に入らないですし)。でも拡張インターフェースに何かつなげるようにはしたいですね。
SHARP PC-1500&PC-1501プログラム転送方法(保存、読み込み方法)の改善
実際、実用的な用途にも使えましたし、電池で動き持ち歩けるPCの便利さを体感させてくれました。ただ便利になるほど漢字が使えないのは気になり始め、ポケコンの世界はここまでで、しばらく後にはなるのですが、次は持ち歩けるワープロに手を出すことになりました。そちらの話はまたいずれ。