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ほとんど誰とも友達になれない

これは村上春樹さんの小説、"1973年のピンボール"の中の台詞です。

僕はずっと前からこの言葉が好きだっんだけど、実際には、ほとんど誰とでも友達になってきたわけで実践はされてこなかった。

幸運にも僕のことを割と気に入ってくれる人は多かったし、少しぐらい苦手な所があっても、それはお互い様だと思ってやってきた。

ところが最近になって、その苦手なところがどんどん自分の中で強調されてきて(おそらく年のせいだと思うけど)、それほど合わない人とは基本的に遊びや食事のお誘いを断っている。

そうしているうちに、友達と呼ばれる人は少しずつ減って来て、今はとても心地よい。
だけどいずれ僕も減らさせる側になって、気がついたら誰もいなくなっていた…なんてことににもなりかねないかもしれない。

まあ、それでも仕方ないかな…と最近思っている。
自分の大切な時間は、数少ない大切な人とだけ過ごしたい。たとえいずれ独りになってしまったとしても。

それはいつか読んだ小説のあの言葉が、心のどこかに刻印されていて、時を経て蘇って来てしまったんだと思う。

仕方ないよね、そういうのって。

「あなたはどちらを応援してるの?」と208が訊ねた。
「どちら?」
「つまり、南と北よ。」と209。
「さあね、どうかな? わからないね。」
「どうして?」と208。
「僕はベトナムに住んでいるわけじゃないからさ。」
 二人とも僕の説明には納得しなかった。僕だって納得できなかった。
「考え方が違うから闘うんでしょ?」と208が追求した。
「そうとも言える。」
「二つの対立する考え方があるってわけね?」と208。
「そうだ。でもね、世の中には120万くらいの対立する考え方があるんだ。いや、もっと沢山かもしれない。」
「殆んど誰とも友だちになんかなれないってこと?」と209。
「多分ね。」と僕。

「殆んど誰とも友だちになんかなれない。」
 それが僕の1970年代におけるライフ・スタイルであった。ドストエフスキーが予言し、僕が固めた。

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