僕がロックバンドでレギュラーグリップを使うわけ
僕はSlimcatというロックバンドのドラマーだ。吹奏楽やマーチングの経験はなかったが5年ほど前のある出来事がきっかけで、今はレギュラーグリップでドラムを叩いている。その経緯を書こうと思う。
大学でSlimcatを組んでから2年が経った20歳の頃、左手に違和感を感じた。最初はピクピク動くくらいであまり気にしていなかった。でも徐々に思い通りに左手は動かなくなっていき、それをカバーしようと変な姿勢で叩き出したせいか右足も思い通りに踏めなくなっていた。このときの自分の体は他人にのっとられているような感覚だった。
ちょうどその頃今の事務所のマネージャーから声をかけてもらい東京でライブをする機会が増えたり、就職せずにバンドやっていくかなど話し合っていてバンドにとって特に大事な時期だった。あるライブ終わり、「曲やスタイルはいいのにドラムが変わらないと売れないよ」と見にきていた人が言った。ムカついたがその時何も言い返せなかった。
それ以降意識すればするほど左手の状態は悪化していき、最終的にスティックを握る構えをしただけで勝手に手首が上がってくるようになり、繰り返す動作はまるで招き猫みたいだった。いよいよまずいと思い3件病院を回ったが、口をそろえて「見たことがない」と言われ原因はわからなかった。ドラムを諦めて何か違う楽器を始めようかとも考えたが、あるときふと持ち方をレギュラーグリップにしてみたら手首が勝手に動くことはなかった。それ以降このグリップでドラムを叩いている。
左手の握り方を変えてからいろんな動画や記事を見ていく中で、「レギュラーグリップを習得するには最低でも15年はかかる」というのを目にした記憶がある。正直、左手が勝手に動き出してなければ絶対にレギュラーグリップをメインに叩いていない。第一に大きい音が出にくいからだ。ただやっていく中でおもしろいなって思うことがけっこうあったり、前よりもいい感じって気づくことがすごく気持ちいい。あと単純に見た目がかっこいい。今ではレギュラーグリップで叩けてよかったと思っている。