
【ペルソナ5レビュー】泥臭く葛藤しスタイリッシュに決める心の怪盗団
ペルソナ5ザ・ロイヤル全クリしました。
ストーリーも気になるし育成も中毒性があるしで、毎日やめ時を誤った結果、寝不足な日々が続き、プレイ時間は実に120時間。
成長して難敵を倒すというRPGの王道的面白さを押さえながら、人間関係で泣かせ、シナリオで興奮させてくれる最高のゲームでした。
あらすじを紹介してから、いかに素晴らしかったか語ります。
※ゲーム体験を損なうようなネタバレはありませんが、数枚ゲーム画面のスクショがあるので未プレイの方はご注意ください。
◆あらすじ
主人公は男子高校生。
暴漢に襲われた女性を助けたはずが、この暴漢が実は警察にも命令できるほどの権力者。
黒幕感満載のこいつの言いなりになった警察により、暴行罪の冤罪を着せられる主人公。
前歴持ちとなった主人公は、転校を余儀なくされ、新天地の私立秀尽学園で高校生活を始める。
秀尽学園では、元金メダリストであることをいいことに生徒に強権を振るう教師鴨志田が横暴の限りを尽くしていた。
生徒の人生を台無しにするレベルの暴力・性犯罪を重ねる鴨志田。
教師陣は鴨志田の振る舞いを咎めず、主人公やその友人の立場は悪くなるばかり。
そんな中、主人公は、悪人の精神世界「パレス」に侵入して歪んだ欲望「オタカラ」を盗み出すことで改心させる能力を得る。
「オタカラ」を盗むことで鴨志田を改心させた主人公は、心の怪盗団のリーダー「ジョーカー」として、心を通じ合う仲間を増やし、「正義とは何か」という疑問と向き合いながら世の不条理に抗っていく。
◆良かったところ
・いわば会話によるレベル上げともいえる「コープ」システム(強くなるだけでなく泣けるエピソードまで見られるよ。)
・ダンジョン攻略なのに全く作業感がない…どころか、怪盗気分を存分に味わえる「パレス」侵入
など、ゲームシステムも大変に素晴らしかったのですが、とにかくストーリーが大好きだったので、
①シナリオ
②キャラクター
③演出
の3点から、ストーリーについて紹介します。
①シナリオ【正義とは?】

あらすじに書いたとおり、主人公達は他者を改心させる能力を得ます。
しかし、これは本人の自覚無しに強制的に人格を変えてしまう荒療治。
大体が「一定の地位にありながら隠れて犯罪行為をしている」敵キャラ達は、改心するとその罪を自白するため、改心=刑務所行きとなり、社会的地位も失います。
本人の意向を無視して相手を操作するという点だけを見ると、怪盗団の行いと、権力や暴力を盾に他者を操る悪役との境界は実は曖昧です。
「パレス」内では嘘をつけませんから、「パレス」内での発言から、敵キャラが悪徳であること自体は明白。
なので、一般的な倫理観からすれば、「話しても聞かない犯罪者を、やむなく自白させる」という行いは正当化されるものではあります。
しかし、
・それは本当に個人が行使して良い力なのか?
・悪(とされるもの)を、正体不明の怪盗団が裁く社会は健全なのか?

この疑念ゆえに、主人公達は常に「自分達は正義なのか?」という葛藤を抱えながら悪人と向き合うことになります。
「正義」というのは、珍しくないどころか使い古されているテーマですが、高校生で構成される心の怪盗団との相性は抜群。
大人になっても分からない「正義」というテーマを、高校生の瑞々しい感性で向き合わせることに見事に成功していると思います。
「正義」と言うと大仰ですが、自分の正しさを主張する時に、どれだけの人間が、相手の立場を考え、自分の誤りの可能性にまで思いを馳せられているでしょうか。
SNSの発達しすぎた現代社会だからこそ、立ち止まって考えなければいけないテーマに感じました。
・人が影響を与えられる範囲は、各人によって異なる。
・それぞれが考える正義の内容も違う。
・そして、そもそも自分は間違っているかもしれない。
これをしっかり自覚した上で、価値観を共有した信頼できる仲間たちと、自分が考える正義に向かって悩みながらも泥臭く走り続けるストーリーには、青臭いようでいて、大人になってもたどり着けない真理が込められていたように思えます。
ただ、シリアスなばかりではなく、

こんな感じで合間に高校生らしい青春を楽しんだりもします。
俺はこんな高校生活知らないけど。
こんなキラキラした高校生活って本当に現実のどこかには存在してるんか?
②キャラクター【自分の至らなさを認め、それでも立ち上がる勇気】
仲間達は全員、社会の不条理や偏見に苦しめられた過去を持ちます。
そして、各キャラクターにそれを乗り越えるエピソードが用意されています。
これが本当に素晴らしかった。
単に不条理を乗り越えるだけでなく、その過程で自分にも至らぬ点があったことに気付き、それでも未来に向かって立ち向かう姿はこちらに勇気を与えてくれました。
全員魅力に溢れていますが、ここで紹介するのは2人。
・坂本竜司

陸上部エースでありながら、教師鴨志田の仕打ちにより足を痛め、廃部の原因にまでされた坂本竜司。
青春を部活に捧げた自分に置き換えて考えると、竜司が受けた仕打ちは人生を粉々にされたに等しいものです。
居場所も生き甲斐も失った竜司は、それでも前を向いて再び歩き出しました。
しかも、明らかにきっかけは大人のせいであるにもかかわらず、自分の短絡さにより仲間を傷つけてしまったことを反省した上で。
苦境にあっても、芯となる仲間を大切にする心を失わなかった彼の、挫折を乗り越えた力強い言葉が私は大好きです。
そしてそんな竜司は主人公が大好き。

やさぐれていた竜司が立ち直るきっかけになったのは確かに主人公。
しかし、主人公にとっての竜司も、前歴を抱えた不安な新生活を最初に支えてくれた存在。
この2人の友情と成長の物語は、「こんな友達が欲しかった!」と心から思わせてくれる爽やかなものでした。
・吉田寅之介
バトルキャラクターであるメインの仲間以外も、全員魅力的。

この画像を見て、「このおじさんとのエピソード見てえ!」となる人はあまりいないと思います。
しかし断言します。
政治家吉田寅之介のエピソードは、ゲームを含めたあらゆるジャンルの中でも最上級のクオリティです。
世の中には、「誰かに損害を与えるが、自分の利益となる」選択肢が溢れています。
そして、その選択肢には、時に「それを選んでも誰もあなたを責めない」という後ろ盾すらついています。
政治家というのは、この選択肢に最も多くさらされる職業の一つだと思います。
一見冴えないこのおじさんは、そんな選択肢に囲まれる中、誰もが目指したくなる大人の姿を示してくれました。
寅之介が主人公に授けようとしたのは演説力ですが、小手先の技術ではなく、
・過去に傷を負った大人として、若者の未来のために全力を尽くす誠実さ
・報われるか分からないまま、正直に物事に取り組む勇気
こういったものを、自分の人生を賭けて示してくれたように思います。
寅之介のコープを最後まで終えた翌日、職場に向かう自分の足取りは、間違いなくいつもより軽やかでした。
③演出【ジョーカーがガチでかっこいい】

RPGですから、当然主人公である「ジョーカー」を操作するのは自分です。
しかし、ジョーカーは自分が操作する存在でありながら、「くぅー!ジョーカーかっけえ!」「っぱジョーカーが決めるんだよなあ」「モテすぎだろクソが!でもジョーカーなら仕方ねえか…」と思わせる魅力を持っています。
これは、会話で出てくる選択肢(たまにどれもドSだったりする)もさることながら、たまにジョーカーがプレイヤーの指示を超えて自我を持つせいだと思います。
指示していないのに、突然女性に迫ったり、とんでもなくかっこいい台詞を言ったりし始めるジョーカー。
オープニングの「じゃあな」とか、のっけからクールすぎてびっくりしちゃったよ。
これに加えて圧倒的なメンタリティを持っています。
どんな窮地にも折れない心、寡黙でありながらチームを統率するリーダーシップ、最終的にはチームの女性全員を彼女にしても平然としている強靭なメンタル。あまりにもカリスマです。
「最後だけおかしいだろ、正義を問うゲームでなんで女性関係だけ倫理観バグってるんだよ。」なんてツッコんではいけません。
そんなジョーカーが、ここぞという場面でムービーつきでスタイリッシュにキメてくれるのです。
悩んで苦しんだ末に最高級の演出でフィニッシュを飾ってくれる主人公、あまりにかっこいい。
「ジョーカー」のあだ名がここまで似合う主人公を私は他に知りません。
◆まとめ
ゲームは大好きですが、レビューまで書きたいと思ったのは初めてです。
ペルソナ5世界に没入している時間は本当に至福でした。
まだまだ魅力を全く書き尽くせていなくてもどかしいですが、ゲームのボリュームから、それもやむを得ないことと考え、製作者の皆様への最大限の感謝と共にここで筆を置こうと思います。
極上のゲーム体験をありがとうございました。