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F1 角田裕毅の来季処遇に思うこと
F1の世界では、ここ数週間、トップチームであるレッドブルの来季のドライバーがどうなるかが、世の耳目を引いていた。ドライバーズチャンピオンのフェルスタッペンのセカンドドライバー候補の話。
今季もベテランのペレスが務めたものの、昨年までの助演男優賞を受賞するような優れた二番手ぶりを発揮できず、シーズン中盤からは中堅チームのドライバーの一人のようになってしまった。レッドブル陣営は迷っていたと思う。しかしペレスと複数年契約を選択して復活を期待した。でもシーズン終盤まで平凡な俳優になりさがってしまったペレスは、結局チームを離れることになった。ペレスの苦悩は、僕も正直見ていて辛かった。
後任は誰か、となった。
空席を埋めるドライバー候補は、同じくF1でレッドブルの姉妹チームであるRBに所属している、日本人の角田裕毅とニュージーランド人のローソンの二人に絞られた。ここ数週間の最も高い関心事だった。
僕はF2時代から角田には注目していて、21年にF1に昇格してからも応援している。今季はRBのチームメイトにはほぼレースで負けることはなく、高いパフォーマンスを出していた。先日、今季最終戦のすぐあとにおこなわれたテストでは角田がレッドブルマシンについに乗ることが叶い、エンジニアに良いフィードバックを提供することに成功したと伝わった。だから角田にはレッドブルに昇進することを期待していたし、きっとそうなるだろう、フェルスタッペンに迫るドライビングをするだろう、そう願っていた。
でも、レッドブルはローソンを選んだ。角田よりも遥かにキャリアの浅いドライバーを指名した。
F1はどんなイメージだろうか?速く運転できるドライバーたちが世界一金の掛かるレースをやっているようなイメージだろうか。たしかにその通りだけど、それだけだと表面的だ。
世界最高峰のテクノロジーが詰まった世界一速くコントロールできるハイブリッド車を、エンジニア達に的確な言葉でフィードバックをしながら一緒に開発して作り上げていくことができて、クレイジーなくらいに高いレベルでコースを攻めて、かつ安定感のある成績を出せるドライバーが、F1には集まっている。トップチームのドライバーともなれば、そのレベルが更に一段高い。高くないとすぐに解雇されてしまう過酷な世界。
角田裕毅はそこに入れる最大の機会だった。しかし来季もRBで走ることが決まった。メディアによると、来季の処遇を伝えたマネジャーは、電話口での角田は冷静に受け入れた様子だったと語ったそうだ。
ローソンはあまりに未知数で、チームが希望的観測を土台にした決断だというのは同感だ。来季序盤であまりに成績が振るわないと、ローソンと角田を入れ替えるという可能性があると、僕は踏んでいる。角田には、自らコントロールできることに集中して、いずれ果報が訪れるのを待って欲しい。