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社会保障を消費税で賄うとはまさに真逆な発想!

社会保障の実現のためには当然財源が必要であります。しかしながら、そのためには消費増税しかないのでしょうか、そもそも消費税に依存する体系に問題がないのでしょうか。
今までも折に触れ、「逆累進性の消費税は社会保障制度にとってまさに真逆な発想、消費税廃止が基本」との考えを示してまいりましたが、今日は体系だって解説されている著書をご紹介させていただきます。

伊藤周平先生の「社会保障のしくみと法」

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(出版社からの紹介)
私たちを取り巻く社会保障の現状
社会保障判例を踏まえ、生活保護、年金、社会手当、医療保障、社会福祉、労働保険の法制度を概観し、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(日本国憲法25条1項)のあり方を問う。財源問題を中心に社会保障全般にわたる課題と社会保障法理論の課題を展望する。

本著は、社会保障全般にわたり法制度の観点からまとめられておられ、今までも、「介護保険料滞納差し押さえ」に係る記事等の中でご紹介させていただきました。今回はその中から、社会保障の財源・消費税部分について整理しご紹介させていただきます。(正しく表現できているかは私の責任です)

社会保障の課題 財源問題(しくみと法p.285〜、p.296〜)
・社会保障・税一体改革と消費税の社会保障財源化
 法案提出された際、日弁連は反対声明を公表。同法案は「安定した財源の確保」「受益と負担の均衡」「持続可能な社会保障制度」の名のもと、国の責任を「家族相互及び国民相互の助け合いの仕組み」を通じた個人の自立の支援に矮小化するもので、国による生存権保障および社会保障制度の理念そのものを否定するに等しく、憲法25条1項・2項に抵触するおそれがあると批判している。

・予算のすげ替えというトリック 
政府は「後代へのつけ回し」の表現にみられるように、社会保障の費用の大半を借金で賄っているかのような説明しているが、社会保障費は、他の歳出項目と同様、国債を含めた歳入全体から支出さえており、所得税や法人税などの税収によっても賄われている。
 社会保障の安定化に消費税収を用いるということは、これまで社会保障に充てられてきた法人税収や所得税収の部分が浮くことを意味する。いわゆる予算のすげ替えである。消費税による増収分の大半は、法人減税などによる減収の穴埋めに使われている。

・法人税減税と消費税増税はセット
 法人3税の税収は、89年度以降の25年間の累計減収額は255兆円に達する。一方、ほぼ同時期の26年間の消費税収の累計は、282兆円となっており、消費税の増収分は、ほとんどが法人税の減税の穴埋めに使われていることとなる。
 しかし、法人税を減税しても、減税分の大半は、株主への配当や役員報酬、企業の内部留保となり(過去最大の313億円に達している。2015年度)、労働者の賃金には十分回ってきていない。

・強い逆進性と社会保障の所得再配分の機能不全に拍車
 「社会保障・税一体改革」により、消費税の税収が当てられる経費は社会保障4経費(基礎年金・高齢者医療・介護保険・少子化対策)とされている。しかし、このことは、4経費が増大すれば、消費税を引き上げるしかなくなることを意味する。逆に消費税率の引き上げができない場合には、4経費の削減という選択を迫られる。消費税に対して国民の根強い反対があるから、増税ができず社会保障削減という政策選択がされやすいし、実際にそうなっている。
《注:もちろん著者はこれを是としているわけではなく、現行制度については問題としてこれを批判、改革の必要を論じられている》 

・貧困や格差を拡大する消費税 
消費税は、間接的ながら雇用破壊税としての性質も有している。・・・企業による正社員のリストラや非正規・外注化を促進しやすい。
究極の不公平財政と言える。消費税の増税自体が、貧困や格差を拡大する。まさに社会保障の破壊につながる。そもそも、社会保障の費用すべてを消費税収で賄うことなど不可能であり、そうしている国など存在しない。社会保障の費用は、あらゆる税収で賄われるのが当然だからである。

・社会保険料の累進性の強化
とくに、国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料については、低所得者の保険料は免除とし、保険料賦課上限を撤廃したうえで、応益負担部分を廃止するなどの抜本改革が不可欠である。

このとおり、著者の主張は明確に消費税の問題点を明らかにしておられます。いくつもの重要な指摘があり、それぞれの部分については今後少しずつ、伊藤先生の著書以外も含め参考に学習し、私なりの考えをまとめていきたいと考えております。

コロナ禍の下、消費税の引下げ対応を図っている国も多く、我が国でも与党の中からも一時消費税の引下げ論議が起こりかけましたが、今は野党も含め下火になっています。もちろん社会保障というよりは景気の下落に対する対応策としてではありますが、これを機に消費税について考える機会になればよいと思っています。
消費税は高所得者にとっては直接・即時的には有利な制度であり、世論はそれにリードされがちでしょう。しかし社会保障を考える上からは消費税についての正しい理解は欠かせません。基本は消費税廃止です。一緒に考えていきましょう。



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