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ベーシックインカム論 中途半端な朝日新聞記事

20.12.16朝日新聞朝刊に下記の解説。

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「夢のような制度だけど、本当にできるの?」「まずは必要となる巨額のお金をどうするか。」さて、どのようなスタンスでこのようなテーマを取り上げられたのか。「コロナ禍で注目が」とあるからその絡みで取り上げられたのか。中途半端なと思ったら、オピニオン面に大々的に紹介されており期待し読み始める。

ところがどうもしっくりきません。
山森教授は従来からベーシックインカム論にはお詳しいわけですが、文化論的面からのアプローチであり、現時点での論議としては少し飛んでいる印象を受けました。内容云々というつもりは全くありませんで、内容よりも新聞社が取り上げる時期・タイミング(TPOというのでしょうか)による違和感のように思いますが。

宮本教授側の『「低額の給付+自助」を危惧』とのタイトルだけは、端的に極めて分かりやすい表現との印象を受けました。
「BI論がこれほど盛り上がる背景には、不透明で再分配効果が弱い現行の社会保障制度に対する不満があるし、国民の必要に応える納得感の高い制度にする努力をしてこなかった行政への不信もあると思います。
「それでも、分かりやすいからとBIを導入するのではなく、もっと確実で効率的な所得保証政策の導入を急ぐ方が有効です。」とも。

ベーシックインカム論については、以前にも取り上げた。

その際、もっとも言いたかったことは、
年金・医療制度・雇用保険はまさに社会保険制度として分からないリスクに備えるものであり、人類の英知の一つと思っているが、これを棄てようとするのかという点です。
そして、BIによる給付は生活費に充てざるを得ない場合もあり、あるいは将来の不安に対し自己で対策を図るか、例えば民間の保険に入るのか、結局自己責任ということになるのでしょう、ということでした。

社会保障制度はまず所得再配分であると言うこと、特に中間層・中流階級中心と言われていた日本の構造が、激しく二極化してきている現状を見た場合にその点は特に重要になってきています。(この点は宮本教授もご指摘のとおりと)
また、平均的給付に対し、リスクの発生は個々には大きく異なります。そのために保険、特に公的保険制度が存在するわけであり、この点についての議論は前提とすべきはずです。

今回の朝日新聞が取り上げた意図がまだよく理解出来ませんが、それだけ重要なテーマを簡単なQ&A問答とただ2教授の論を紹介しただけで、それについての考え方が見えません。山森教授の問題意識も活かせていないように感じます。ただただ紹介するだけのコーナーということなのでしょう。

逆に言うならば、読者からの質問という形で、社としての意見を表明せずBI論への関心を引くようにしているのか、その導入に基本的には賛成の立場と言うことでしょうか。社としての意見を表明しないことが公平性とでもお考えなのでしょうか。あるいは、これを機に国民的な議論を、その端緒に、というお考えなのでしょうか。
一部、介護等に関する真摯な記事等は拝見いたしますが、年金・消費税等についての記事をみますと、社会保障に対するスタンスがどうも生活者からの視点とは異なるのではと思うこともあります。
今回の記事も、大新聞だけに何か中途半端な印象を受けた次第です。

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