保険診療は社会主義的な世界だ
こんにちわ。ずぴ丸です。本日は我々が属している保険診療についてお話しします。以前医者の経営者とお話ししていたら、「保険診療は完全に社会主義だ。」という話があってこの題名をつけました。
日本の保険診療、「国民皆保険」は世界的にみてもかなり特殊です。
海外では家庭医という医師がいて、具合が悪ければ基本的にかかりつけの家庭医を受診します。その後家庭医が判断して必要があれば専門医に受診することができます。イギリスではこのかかりつけ医に受診しようとしても2−3ヶ月かかります。
風邪はもうすでに治ってしまいますね。医療費が無料であったり、安価に受診することはできますがサービスや受診体制は充実していないことが多いです。
日本の場合は「低価格、フリーアクセス、高品質」です。
どんな人でもどこの病院でも非常な安価で最新の治療を受けることができます。
いきなり家庭医を通さずにもすぐに専門医にアクセスすることができます。
そしてお金がなくても、700万近くする最新の高価な抗がん剤も適応があれば使うことができます。他の国だとお金がないと薬も自由に選択ができない国もあります。イギリスでは基本的な保険だけだと使える薬が制限されています。
また日本の保険診療は外国人にも門戸が開かれています。最近の問題となっている中国国籍の人が日本の保険診療を利用(悪用?)して医療を受けることができます。
まさに世界的にみても利益度外視、患者ファーストな制度だと個人的には思っています。
よく国民保険料が高い=医師が儲けすぎているみたいな短絡的な議論がよくありますが本当にそうでしょうか?
ここには一般の人には見えないお金の流れがあって、ここが見えるようになってくると我々の国民保険料がどこに消えているのかが分かります。
今回は国民皆保険、日本の保険制度について基本的な解説をしていきましょう。
下の図を見てください。
上の図にあるように日本は社会保険制度で医療を運営しております。
医療費の総額が約44兆円です。
病院を運営する費用、医師や看護師などの人件費、薬剤費、手術費などの総額がこの費用です。
日本の税収が114兆円なので、医療費の総額がすごい額であることは分かります。その内の自己負担が約5.2兆円です。自己負担率は約11%です。
その他の財源に関しては国民健康保険などの保険協会、組合から医療機関に支払いが行われています。
保険協会、保険組合の財源に関しては、国民保険料で賄われているのが22兆円です。
大体半分くらいが国民保険料で賄うことができています。窓口負担も合わせると6割近くは保険料と自己負担で賄うことができています。残り4割は公費負担で賄われています。
私が思っているよりかは健全な割合だなと思いました。これを知る前まではもっと国の負担で賄われているんじゃないかなと思っていたんですけど意外と国の負担は少なかったです。
とはいえ額はすごい額です。44兆円の4割だとすると約17兆円です。比率でいうと税収の約15%近くを医療費が占めています。
それぞれの負担割合を図で示すと下記になります。
では医師が儲け過ぎて医療費が増えているのでしょうか?下の図を見てください。
上の図は医療費の構成費の変化です。
人件費の割合はむしろ減っています。医師の給料もこの30年間ほとんど変わっていません。むしろ相対的にインフレに進んでいる世界の流れの中でむしろ給料は減っているとも言えるでしょう。
では人件費の割合は減っているとしたらどこの部分が増えているのでしょうか?
次の図を見ていきましょう。
入院、外来、調剤など別の切り口で医療費を分類した図です。
医療費の大きな部分は入院を占めています。入院費が全体の約4割を占めています。国の政策としては在宅診療を最近進めているのはこの入院費の上昇を抑える狙いがあります。
最近の医療費の増加の大きなところは調剤費(薬剤費)です。調剤費(薬剤費)の上昇は年々上昇しております。
薬剤費はほぼマイナス改定を続けていますが、薬剤費はコントロールすることができていません。年々上昇しています。
では薬価がコントロールできなくなってきているのでしょうか?
ここには構造上の問題があります。
やっと本題に入りましたが、まずは保険診療の制度についてお話しします。
題名に保険診療は社会主義といいましたが、今までお話ししたように薬価や診療報酬は全て国によってコントロールされていて全体のバランスを厚生労働省がコントロールを取ってています。稼ぎすぎている分野に関しては定期的に診療報酬を改定することでコントロールを行なっています。また在宅診療のように国が推進したい分野に関してはあえて大きめの点数をつけることで普及を促したりします。
稼ぎすぎているクリニックには厚生労働省の下部組織の厚生局の職員が指導という名目で査察に入り、監視を行なっています。
何もなくても他の病院なども定期的な査察が入ります。
まさに社会主義と言っても差し支えのない制度ですよね。
この制度を作ったのは1960年代です。1960年の時の医療費と人口構造を見ていきましょう。
上の図は医療費の推移です。
1965年代の医療費は1.12兆円です!日本全体でたったの1.12兆円です。
物価の変化も考慮したとしても今の4分の1程度でした。
人口も今と違って老年人口が少なく生産年齢人口が多い時代でした。
数多くの生産年齢人口の社会保険料で少ない老年人口の医療費を賄えばいいだけでした。また抗がん剤なども種類が少なく高価な薬剤も少なかったです。
この時代を基に制度のほとんどが作られています。
例えば1970年代に始まった高額療養費制度です。
自己負担額に関して収入に応じて支払額が一定となる仕組みです。
例を挙げて説明しましょう。上の図を参考にして説明します。
例えば100万円医療費がかかったとしましょう。100万円の医療費の3割負担は30万円です。通常は30万円が窓口負担なのですが、年収に応じて窓口上限が決まっています。上の図だと窓口上限が約8万7千円です。自己負担が本来30万円ですが自己負担が8万7千円です。残りは医療保険の負担となります。
もう少し例を挙げて説明していきましょう。
下の図は最近保険適応された高価な薬剤の一覧です。
例えばキムリアを例に挙げましょう。薬価は3300万円です。
月に2回投与したとすると6600万円です。
入院して行うので6600万円+入院費がかかります。
入院費は100万と仮定しましょう。総額は6700万円です。
では窓口負担はいくらでしょうか?
3割負担なので2233万円でしょうか?
自己負担額は8万7千円なのです!生活保護の場合は0円です。
2220万近くも国民保険の負担となります。
高額者療養費が作られた当時はこのような高価な薬剤がまだ少なく、それを使用する人は基本的に高齢者が多いのでまだ少なかったのです。
つまり国民保険制度はこの制度自体がすでに現代の医療や日本の現状に適応がうまくできていないのです。国民保険という社会主義的に全ての人に高品質で平等な医療は終わりを迎えてきています。
ではなぜ厚生労働省は無理にでもこの制度を継続させているのか考えてみましょう。1つは国民皆保険は世界的に優れている医療制度という国としてのメンツがあります。フリーアクセス、誰でも平等に最新の医療を受けられるこの制度が失敗であることを認められないんです。
ただこれだけではありません。よく考えてみましょう!
この制度は誰が1番得をしますか?医者でしょうか?
でも医者の人件費は大して変わってません。
無理に高価な薬剤を使う制度を存続させることで喜ぶのは誰でしょうか? そうです。
製薬会社です。
高価な薬剤が売れて喜ぶのは製薬会社です。日本は世界的にこの医療保険制度のおかげで高額な薬剤がたくさん売れるまさに製薬会社に取っては理想的なマーケットです。製薬会社のロビー活動は皆さんは知らないですが結構行われています。
もちろん患者さんが良くなればそれはとてもいいことです。ただそれは理想論にすぎません。お金が払えなければ治療費は払えませんし制度は破綻します。
どこに日本の医療費がどこに流れていっているのか賢い人はもうわかってきたでしょうか?
世界の製薬会社の売り上げがをみてみましょう。
下記の図です。
殆どが海外メーカです。日本の製薬会社は1社も入っていません。
日本の病院で高価な手術器具や薬剤が使われると間接的に海外の製薬会社へお金が流れていっています。そのお金は我々が天引きされている国民保険料や税金です。
国民皆保険制度で1番得をしているのは高価な薬剤をたくさん使ってもらえる製薬会社なのです。もちろん目の前の患者さんを助けたい気持ちで高価な薬剤を使うこと自体は悪いことではありません。それで実際治療ができて助かる患者さんも多いはずです。
ただ現行の国民皆保険制度は高価な薬剤の登場前の制度であり、すでに国民皆保険の制度を見直さなければいけない時期になってきていると思います。
「社会主義」的な国民皆保険は見直していかなければいけません。
使える薬剤を制限したり、一部民間の保険を入れて、「資本主義」的な側面を導入していかない限り日本の国民皆保険はどこかで破綻してしまうでしょう。
我々は現在世界が経験したことない少子高齢化社会を経験しています。
介護や医療を中心に日本の動向を世界が注目しています。少子高齢化の時代に適応した持続可能な日本の医療を考えていかなければいけません。
まさに日本の国民皆保険は分岐点に立っています。
今回はここまでとします。
また国民皆保険についても扱っていきます。
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