芸能人が化粧品を「開発」する理由
芸能人が、化粧品を「開発」した、という例が、いくつかある。たとえば篠原涼子さんのペルルセボンなどだ。
なぜ芸能人が化粧品を「開発」するのか、その背景を書く。
結論
芸能人が化粧品を「開発」する理由は、おそらく、商品を「推薦」することが問題視されているからだ。
そう言われても、意味がわからないと思う。以下に説明する。
粧工連が芸能人の「推薦」を問題視
日本化粧品工業会という団体がある。化粧品の業界団体だ。通称は粧工連という。正会員企業は1300ほど。権威ある団体だ。
この粧工連は、化粧品の広告について独自のガイドラインを作っている。「化粧品等の適正広告ガイドライン」だ。定期的に改正されており、最新のものは2020年6月15日に策定されている。
この時の改正で、話題になった点がある。著名人による商品の推薦が、違反事項として言及されたのだ。
改正時の新旧対比表は、下記リンク先で確認できる。
著名人について言及されているところを抜き出す。
かなり慎重な言い回しになっているが、要約すれば、
専門家を自称する著名人が化粧品を推薦することは、「化粧品等の適正広告ガイドライン」に抵触するおそれがある。
ということになるだろう。
化粧品業界として、著名人に商品を推薦させるべきではない、という考えがあり、それを2020年の改正で反映させたようだ。
便利な「開発」という言葉
芸能人は、化粧品を推薦することができなくなった。
そこで出てきたのが、「開発」という言葉だ。
前述のガイドラインでは、「著名人の推薦」が問題視されていた。メーカー側は、「それならば著名人に『開発』させればよい」と考えたのだろう。
ガイドラインでは、著名人の「開発」については、特段の記述がない。そのため、著名人に「推薦」ではなく「開発」させるようになったのだろう。
これが、著名人が化粧品を「開発」する理由だ。
努力なのか、悪質なのか
著名人に化粧品を「開発」させる、という手段は、商品の宣伝においては、涙ぐましい努力のようにも思う。
一方で、ルールの抜け道を突く、悪質な行為であるようにも感じる。
どちらの解釈が正しいのかは、私にはわからない。
「医薬品等適正広告基準」には記載なし
「化粧品等の適正広告ガイドライン」は、業界団体が民間側で制定したものだ。これは法律ではなく、自主ルールだ。
つまり、このガイドラインに違反しても、行政からの強制力は、直接的には下されない。
行政側は、2017年9月29日に「医薬品等適正広告基準」を改正している。化粧品の広告表現についての規制についてまとめたものだ。
この「医薬品等適正広告基準」には、著名人による推薦表現を禁止する旨は、少なくとも明示的には書かれていない。
結局のところ、著名人が化粧品を「開発」すること、「推薦」することについて、違法か否かの判断基準は、明示されていない。
消費者としては避けるべき
しかし、消費者として取るべき行動は簡単だ。著名人が「開発」した商品は、避けたほうが良い。
「開発」「推薦」について、違法か否かの判断基準は曖昧だが、危ういゾーンである、ということは言える。そのゾーンの広告表現をする会社は、モラルが低いかもしれない、と考えるのは自然なことだ。
だから、わざわざ、そういう会社の商品を買う必要はない。
実際に、前述の「ペルルセボン」の販売会社には苦情が殺到している様子だ。筆者の調べでは、1ヶ月で1000件を超える苦情が寄せられたこともあるようだ。
消費者が自分の身を守るためには、芸能人が「開発」した化粧品は、買わないほうが良いだろう。
著名人は化粧品の「開発」を避けるべき
著名人の方々にも申し上げたい。化粧品等の「開発」は避けるべきだ。
上記の通り、評判の悪い会社が、著名人に化粧品を「開発」させている例が散見される。そこに名前が出ている著名人にも、イメージ低下などが発生するだろう。
著名人が受け取った報酬には、消費者が被害に苦しみながら支払ったお金が混ざっているかもしれない。強い憎しみの目が向けられるのではないだろうか。
以上