見出し画像

“パンパンガール”を語る「金ちゃんの紙芝居」2~【縁の下のハニーさん】

戦後、朝霞の米軍基地の周辺で、
米兵相手に体を売っていたパンパン(=ハニーさん)たち。
当時の思い出を紙芝居にしている田中利夫さん(愛称は金ちゃん)に、話を聞くシリーズ。

第2回は、ハニーさんの寝ぐらについて。

当時、人口12000の街に、2000人とも3000人ともいわれるパンパン、つまりハニーさんが、全国津々浦々から押しよせたという。

それだけの数のハニーさんたちは、いったい、どこで寝泊りをしていたのだろうか?


「乞食パン助」と呼ばれたハニーさん

━━  金ちゃんの自宅でもある「貸席」(今で言うラブホテル)に、間借り(長期滞在)していたハニーさんは別として、他のハニーさんは、どういうところに寝泊まりしていたのでしょうか?

金ちゃん) みんな、縁の下ですよ。

━━  縁の下で、寝ていたんですか⁉

金ちゃん) お寺や神社の縁の下とか、あとは農家の物置とかにいたんですよ。

━━ それは許可を取って、ということですか?

金ちゃん) いやいや、許可を取るも取らないも…。
だから見つかれば追い出されますよ。追い出されると、また他へ行く。

どんどんどんどん、そういう「宿無し」というか、「乞食パン助」とか「乞食パンパン」とか言われた人たちは、だんだんだんだん、奥へと行っちゃいます。

「相撲」というあだ名のハニーさん

中には、金ちゃんの自宅でもある「貸席」の縁の下に寝泊りするハニーさんもいた。

大柄だったことから、人は彼女を「相撲(すもう)」と呼んだ。

━━ 相撲さんは、どんな人でしたか? そもそも、どこから来たんでしょうか?

金ちゃん)よく分からないんです。いつの間にか、ウチ(貸席)の縁の下にいて…。
それで、お袋が「かわいそうだから、いいだろう」ってことで、ムシロなんか入れてやったりして…。

そしたら、そのうち火を使い出しちゃったんですよね。

━━ あ~、料理したりとか?

金ちゃん)じゃなくて暖房ですよ。冬は寒くて我慢できなかったんでしょうね。
で、近所の人に「縁の下から煙が出てるけど、あれはなんだ?」って言われて、
「これは、まずいだろう」ってんで、結局はまあ…追い出した形ですよね。

「他所、行ってくれ」ってことで、うん…。

お袋も「かわいそうなことをした、かわいそうなことをした」と言ってましたけどね。

そうかと言ってね、家へ入れてやることもできない。

━━ そうですよね。他の、間借りしているハニーさんは、きちんとお金を払ってるわけですもんね。

金ちゃん)
そうなんですね…。

あの人は、どうしちゃったんだかな?
ただ「相撲」、「相撲」って言ってただけで、名前も分かんないですけどね。

━━  それにしても、「相撲」って、すごいあだ名ですね(笑)。誰がつけたんですか?

金ちゃん)わかんないです。

━━  金ちゃんのお母さんが、つけたわけじゃなくて?

金ちゃん)うん。あの頃ね、あだ名とかつけるの、皆、うまかったのね。

※   お断り
このシリーズには、人権やジェンダーの観点から言って、今日においては使用すべきでない言葉などが、時に登場します。
しかし、当時、人々がどんな生活を送っていて、日々、何を思っていたかを知るためには、そうした言葉などは貴重な資料であり、記録しておく必要があると考えています。
ご理解・ご賢察を賜れれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?