能登note2024 その1)輪島・金蔵 ~寺の渡り廊下カフェのオーナー 福井駅前で“能登丼”の店をオープン
能登半島地震から4か月。
甚大な被害を受けた人たちは、それにもめげず、立ち上がろうとしている。
2019年秋、能登を巡る旅で知り合った日向文恵さんもその一人だ。
文恵さんは、輪島市町野町(まちのまち)の金蔵(かなくら)集落[※1]にある慶願寺(きょうがんじ)という寺の住職の妻。
同時に、
寺の渡り廊下を生かしたカフェ「木の音(こえ)」のオーナー
という顔も持っていた。
カフェが、どんなに素晴らしいか
なぜ、寺にカフェを作ったのか
わずか100人ほどの小さな集落・金蔵[※1]が、いかに結束力が強いか
については、当時、Facebookに書いた記事をご覧いただきたい。
あれから5年。今年の元日、能登を襲った大地震。
先月下旬、文恵さんと、電話でお話しすることが出来た。
カフェに使われていた渡り廊下は潰れずに済んだが、寺にとっていちばん大事な肝心の本堂の損傷が激しく、また、カフェの厨房も毀損が著しいという。
カフェの再開は決して簡単ではないことは、文恵さんのお話や写真で、よくわかった。
「やはり、そうか」と、暗澹たる気持ちでいたが、嬉しいニュースが文恵さんから届いた。
4月19日から、福井駅で、能登丼(のとどん)という丼を売り始めたという。
能登丼は、石川県奥能登地域の肉や野菜をふんだんに使ったご当地グルメ。
実は日向さん、地震の前から、能登丼で地域の活性化を図る組合(能登丼事業協同組合)の理事長を務めていた。
「木の音(こえ)」でも、能登丼を提供していて、5年前、妻が注文していた。僕も一口、いただいた。美味しかった。
今回、文恵さんたちが能登丼の店を出したのは、隣りの県、福井駅前の再開発ビル。ビルの1,2階で3月16日に開業した食の複合施設「MINIE(ミニエ)」から、「復興(=飲食店の再建や食材などを提供する事業者の支援)につながれば」と誘いがあり、出店を決めたという。
福井駅で能登丼の店がオープンしたという話題は、NHKを始め、地元のテレビ局や新聞で、大きく取り上げられた。
「とてもとてもめまぐるしい毎日ですが、ようやく一歩
進む事ができました」。
文恵さんからのメッセージには、そう書き添えられていた。
ようやく一歩…
短いけれども、重みのある言葉…。
食材をどう調達するのか?
店の運転資金をどうまかなうのか?
何より、渡り廊下のカフェは再建できるのか?
課題は山積みだ。
けれども、やれることからやるしかない…
そんな思いを感じる。
福井駅での店のオープンに合わせ、文恵さんたち、能登丼事業協同組合ではクラウドファンディングも始めた。
よければ、ぜひ、クラウドファンディングに参加してください。
もちろん、参加を強要するつもりは毛頭ない。
支援の方法は、人それぞれ違って良いと思う。
金蔵集落を忘れない
寺の渡り廊下を使った、とても素敵なカフェのことを忘れない
それだけでも立派な支援だと思う。
[※1]
金蔵は、58世帯112人の小さな集落(2020年10月1日現在)。
5年前、カフェ「木の音(こえ)」を訪ねたときは、能登半島の西側を海沿いに北上。輪島市の中心部を過ぎ、千枚田を越え、しばらく行ったところで右に折れ、山道へ。対面車が来たら厄介な細い道を5分ほど走ると、慶願寺(きょうがんじ)に到着した。
だが、この山道(石川県道277号柳田里線)も地震で激しく損傷。グーグルマップを見る限り、今も通行不能で、回り道を余儀なくされるようだ。
一日も早い復旧を望みたい。