
オンラインカジノが認められない要因と今後について考えてみた
1. 日本は世界有数のギャンブル大国
日本は、カジノが合法化されていないにもかかわらず、世界有数のギャンブル大国とされています。特にパチンコ産業がその中心的存在であり、国内の至る所にパチンコ店が存在しています。2013年のデータによれば、世界全体のギャンブルマシン約767万台のうち、約60%が日本のパチンコ台で占められていました。 
2. ギャンブル依存症の割合が他国と比較しても高い
ギャンブル依存症の観点から見ると、2014年の厚生労働省の調査によれば、日本の成人の約4.8%にあたる536万人がギャンブル依存症またはその疑いがあると推定されています。 この割合は他国と比較しても高く、例えばフランスや韓国などでは1%未満と報告されています。 
このように、日本はギャンブル施設の数やギャンブル依存症の割合において、世界的に見ても特異な状況にあると言えます。特にパチンコ産業の規模と普及度が、これらの数値に大きく影響していると考えられます。
オンラインカジノ市場は世界的に急成長
1.2028年には1兆ドル市場に達する
オンラインカジノ市場は、世界的に急速な成長を遂げています。2021年の市場規模は約6,063億ドルと推定され、年平均成長率(CAGR)11.34%で拡大し、2028年には約1兆374億ドルに達すると予測されています。 
2.欧州系の企業が日本市場に注目
日本においても、オンラインカジノ市場は急速に拡大しています。2010年頃から欧州系の大手iGaming企業が日本市場に参入し始め、2022年現在、日本はオンラインカジノ業界における重要なマーケットと位置付けられています。 
この成長の背景には、スマートフォンの普及やモバイル決済の増加があり、ユーザーが手軽にオンラインカジノを楽しめる環境が整ったことが要因とされています。 
しかし、日本ではオンラインカジノの合法性に関する議論が続いており、法的な規制や社会的な影響についての慎重な検討が求められています。
日本でオンラインカジノが認められない要因
日本でオンラインカジノが認められない主な要因は、以下の4点が考えられます。
1. 賭博罪に抵触する可能性(刑法との整合性)
日本の刑法では「賭博」は原則として違法(刑法第185条・186条)とされています。オンラインカジノは、たとえ海外で合法的に運営されていても、日本国内からアクセスし賭ける行為が違法とみなされる可能性が高いです。警察も、実際にオンラインカジノ利用者を逮捕した事例があり、厳しい姿勢を取っています。
2. ギャンブル依存症リスクの懸念
日本はすでにギャンブル依存症の割合が高く、特にパチンコ・競馬などの既存のギャンブルによる影響が問題視されています。オンラインカジノは手軽に利用できるため、さらに依存症リスクが高まることが懸念されています。カジノ法(IR整備法)では依存症対策が重視されており、オンラインカジノの合法化はこうした方針と矛盾します。
3. 資金洗浄(マネーロンダリング)の懸念
オンラインカジノは匿名性が高く、仮想通貨を使った取引も増えているため、資金洗浄に悪用されるリスクがあります。日本はFATF(金融活動作業部会)からマネーロンダリング対策を強化するよう求められており、オンラインカジノの合法化は国際的な規制強化の流れに逆行する可能性があります。
4. 政府の管理が困難(規制・税収の問題)
オンラインカジノは、サーバーが海外にある場合が多く、日本政府が直接規制したり、税収を確保したりするのが困難です。仮に合法化しても、国内運営のカジノと競合し、IR(統合型リゾート)の税収減につながる可能性があります。政府としてはIR推進が優先されており、オンラインカジノの合法化はその方針と対立します。
日本のIR(統合型リゾート)の完成後の経済と社会的影響のバランスを保つ対策
日本における統合型リゾート(IR)の完成は、観光産業の活性化や経済効果が期待される一方、ギャンブル依存症の増加や社会的影響への懸念も指摘されています。政府はこれらの課題に対処するため、以下のような対策を講じています。
1. ギャンブル依存症対策
• 入場制限:日本人および日本在住の外国人に対して、カジノへの入場回数を28日間で10回までに制限しています。 
• 入場料の設定:カジノ入場時に6,000円の入場料を徴収し、安易な入場を抑制しています。
• 本人確認の徹底:マイナンバーカードを活用し、入場者の本人確認を厳格に行うことで、依存症対策を強化しています。 
2. 法的整備と規制
• カジノ管理委員会の設置:カジノの運営や依存症対策を監督するため、カジノ管理委員会が設立され、適切な規制と監視を行っています。
• ギャンブル等依存症対策基本法の施行:2018年に施行されたこの法律に基づき、政府は依存症対策の基本計画を策定し、総合的な施策を推進しています。 
3. 社会的影響への対応
• 多重債務者対策:カジノによる多重債務の増加を防ぐため、金融機関や相談窓口との連携を強化し、早期の支援体制を整備しています。 
• 教育・啓発活動:ギャンブル依存症の予防や早期発見のため、教育機関や地域社会での啓発活動を推進しています。 
これらの対策を通じて、IR導入による経済的利益と社会的リスクのバランスを図り、安全で健全なギャンブル環境の構築を目指しています。
まとめ
日本でオンラインカジノが認められない最大の要因は、既存の法律(刑法)との整合性が取れないことと、ギャンブル依存症・マネーロンダリングのリスクが高いことです。また、政府がIRを推進している現状では、オンラインカジノの合法化は優先度が低く、規制が厳しくなる可能性のほうが高いでしょう。