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ホストファミリーは父親2人

2015年2月。大学のプログラムを通してシドニー大学へ短期留学をした。アイヌ文化に触れる中で、海外の先住民族の状況にも関心が高まっていた。

オーストラリアには、アボリジニーとトレス海峡諸島民と2つの先住民族グループが暮らしている。今回の短期留学では、この2つの先住民族グループについて学んだり交流したりすることを目的としていた。
自分自身は、前回の二風谷訪問をきっかけに先住民族の言語復興運動について関心が高まっていたので、アボリジニーの言語復興運動の現場にもお邪魔することになった。

シドニー大学へは約1ヶ月通学したのだが、その間はホームステイをした。人生初のホームステイとのことで、どんなホストファミリーなのか緊張とわくわくとを感じながら、指定された待ち合わせ場所に向かった。
ホストファミリーは、大学側が用意しており、オーストラリアの多様性を表す家庭だと伺っていた。

待ち合わせ場所に行くと、優しそうでふくよかな30代前半くらいの男性がいた。彼はオーストラリアで有名なゲイの活動家とのことで、シドニー郊外にパートナーと愛犬と暮らしていた。
ちなみにゲイであることをオープンにしている方にお会いしたのは、おそらくこの時が初めてだったと思う。彼らはマレーシア出身だったが、同性愛に対して厳しい社会だったためにオーストラリアに移住してきたという話だった。

初めて自宅に伺うと、そこには男性が9人待っていた。
「ようこそ!一成が来るということで近所のゲイを集めたよ~!!」
「ところで君はストレートなの?それともゲイ?」
多国籍な料理と共に大歓迎していただいた。

その頃は、ちょうどセクシャルマイノリティに関わる重要な法律の審議中だったようで、日々各党の議員に会いに行くなどとても忙しいタイミングだったようだ。だが、1ヶ月の間、ホストファザー2人に息子のように可愛がってもらった。ゲイカップルの家庭ってどんな感じだろうか、と少々身構えていたのだが、彼らとの日々はあまりにも違和感なく過ぎていった。
同性婚への反対意見で、子供がかわいそうと言う方がいるのだが、そんなことは決してないのだと思う。男女の親が育てたとしても、親が1人だったとしても、両親が同性だったとしても、子供が幸せかどうかは家庭次第なのだと思う。

彼らから貰ったレインボーフラッグはいまでも自宅に飾ってある。
帰国する時に約束したからだ。彼らは言った。
「これをぜひ自宅で飾ってほしい。君が何も言わなくても、もしセクシャリティに悩みを抱えている君の友人がそれを見たとき、きっと安心するだろうから。」

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