頼もしい次世代とアイヌ音楽祭
2015年6月27日。平取町でアイヌ音楽祭が開催されると知り、北海道へと向かった。イベント名は「第5回ウレクレク~風の谷の響~」平取アイヌ協会青年部の主催で開催された。私がお世話になっているアイヌ料理店ハルコロの店長が代表をしている音楽ユニット「ヤイレンカ」も出演した。ヤイレンカは2018年頃まで活動していた、首都圏在住の若手アイヌ女性による音楽ユニットで、古式舞踊を中心に踊っていた。他にも全国で活躍するアイヌの方々の踊りや歌を見ることができる貴重な機会だった。
また、関根健司さん真希さん夫妻が指導する「二風谷アイヌ語教室子どもの部」による発表もあった。中学生以下くらいの年齢の子どもたちが20人ほど舞台に上がった。とても楽しそうにアイヌ語で歌ったり踊ったりする姿を、ご家族が写真や動画に嬉しそうに収めている。子どもたちにとってアイヌ文化を学ぶことは決して特別なことではなく、習い事のような自然な感覚なんだろうなと感じた。これまで私がお話を伺ったアイヌの方々からは、アイヌであることを家族から伝えられなかったことや隠されていたことなどを聞いていたので、非常に印象的な光景だった。時代の変化と、次世代への期待を感じるひとときだった。
さらに会場の二風谷生活館の周囲では、「アイヌ遊び体験」と題しておもちゃの弓矢で動物の模型を射る体験などを子どもたちが楽しそうに挑戦していた。前回記事で書いたアイヌゼミ生で旭川出身の同期も見学しにやってきて、その熱気に驚いていた。
ちなみに、二風谷アイヌ語教室子どもの部だが、ルーツはアイヌ初の国会議員である萱野茂さんが生前二風谷で開いていたアイヌ語の私塾に遡る。卒業生たちは、その後アイヌ文化の担い手として重要な役割を果たしている。私がこの時会った子どもたちも例外ではない。
当時高校生で、数年前まで教室に通っており、萱野茂さんから直接アイヌ語を教わった最後の世代となった関根摩耶さんは、その後アイヌ語YouTuberなどとして活躍中だ。私も活動を始めたばかりの頃に一度インタビューしている。
また、当時中学生くらいだった織田端希さんも現在大学生となり、札幌大学のウレシパクラブに所属しながら活躍中だ。昨年の東京オリンピックでは、端希さんの弟さんと妹さんが国旗を持って入場する大役を果たすなど、3兄弟で活躍している。
二風谷アイヌ語教室子どもの部からは今後もたくさんのアイヌ文化の担い手が生まれるだろう。卒業生たちの動向も楽しみだ。