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アイヌの人ってまだ藁の家に住んでるの?

アイヌ感謝祭から約2週間がたった2014年10月末。私は新千歳空港にいた。アイヌについて知りたいと思った私は無性に北海道に行きたくなり、具体的な行先を決めずにとりあえず飛行機に乗ったのであった。

高校2年の時、修学旅行で来て以来の北海道。その時は、時計台や洞爺湖などをありがちな観光地を巡っただけで、アイヌ文化に触れることはなかった。とりあえず来てしまったのでどこに行けばいいのか全く見当が付かず、困った挙句に北海道アイヌ協会に電話をした。

「もしもし。私、大学生なんですけど、アイヌについて学びたくて北海道に来ました。どこにいけばいいでしょう?」

電話口の方は相当戸惑った様子であった。あまりにも唐突な電話にびっくりしたのであろう。いまとなっては恥ずかしいというか申し訳ないというか。だが、親切に答えてくださった。

「新千歳からだったら、白老と二風谷がいいと思いますよ。」

大学の学際期間を利用した2泊3日の北海道。1日目は空港から電車で行ける白老に行くことにした。

白老は古くからアイヌの人々が暮らしてきたコタン(アイヌ語。集落のこと)の一つで、1970年代にポロト胡周辺を「ポロトコタン」として整備し、博物館の設置やアイヌの集落の復元などを行っている。現在は国が進める「民族共生象徴空間」整備事業によって閉館となり、2020年4月に「国立アイヌ民族博物館」として生まれ変わる予定である。

新千歳空港から電車で1時間20分ほどで白老に着いた。アイヌの方が多く住んでいる地域と聞いて、異国情緒あふれる景色を期待して駅をでた。だが、そこに広がっているのは日本中どこにでもありそうな、過疎化した地方中小都市の駅前であった。

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JR白老駅(筆者撮影)

後日、アイヌの方々と飲んでいた時のこと。博物館に勤める男性が、「めんどくさい観光客からのよくある質問」という小ネタをはじめた。

「①アイヌの人ってまだいるんですか?②アイヌの人ってまだ藁の家に住んでいるんですか?③アイヌの人ってまだ木の皮でできた服を着ているんですか?④アイヌの人ってまだ狩猟して生活しているんですか?」「いやいやこの人もあの人もアイヌだし、和人(※)と一緒でコンクリートの家で洋服を着てサラリーマンして暮らしてるよ。」

その場にいた多くのアイヌの方が経験済みの質問だったらしく、大うけだったのだが、私は藁の家が広がる光景を期待して白老駅を降りたことを思い出して、一人笑うことができなかった。アイヌに対して大多数の日本人はあまりにも無知なのである。

さて、駅から15分ほど歩いていくと、ポロトコタンとかかれた看板が飛び込んできた。

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入口付近の巨大な看板(筆者撮影)

小学生だろうか?修学旅行の集団が先に来ていた。お土産屋さんを通り過ぎ、入場口をくぐると、そこにはアイヌの集落が広がっていた。

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