【日記】もう下は向かない!今日からは……
下ばかり向いているのはもうやめる!
今日からは……、左です。
今日の診療で「下向きは止めてこれからは左向きにしよう」との指示を受けました。
先生は「うーん、、、」と首を捻りながら僕の眼球を検査していたので、術後の経過があまりよろしくないのかと少し不安になります。
確かに、僕も視界の欠損部分だった場所に残る影が解消されない事に違和感を覚えてました。
(剥離した部分が接着していない為だと推測していたのです。)
今回の左向き生活への変更はそこにガスを当てて接着を試みるという事なのでしょうか。
いずれにしても陰鬱な下向き生活は今日で終わりです。これからは晴れて左を向いて生きていきます!
さてさて、冗談はさておき……。
ほんの少しずつではありますが、徐々に右目の視力が戻ってきている様な気がします。
まだちゃんと見る事は出来ないのだけれど、光や色、かなりぼやけながらもシルエットなどが朧げに認識できる様になってきました。
左側にはまだ影が残ったままです。これが今後どの様になっていくのかが気になります。
漸く眠れない下向き生活も終わるので、だいぶ身体も楽になるだろうと思います。
12/12:手術
予約時間より少し早めに病院に向かい、入院手続きなどを済ませる。
入院手続きではマイナ保険証の利用で高額医療費免除の申請を簡単に済ませる事が出来、とても助かった。賛否両論あるこの制度だけれど今回の僕はかなり助けられている。
手続きを終えると入院に関する簡単な説明を受けて病室へ。病室は新しめで綺麗だった。
手術まで少し時間があるとの事なので昼食を摂り、その後、手術時に使用するための点滴針を装着した。
これを担当してくれた看護師は新人なのか不器用なのか、一度の失敗をして二度目になんとか刺し終えた。
その子の失敗した時の謝り方はあまりにも恐縮していて、その不安そうな慌てぶりがむしろ可愛らしく思えてきた僕は、嫌いな針刺しへの嫌悪感をあまり感じずに済んだ。
この病院の眼科手術は件数が多い様で、流れ作業的に行われている様だった。
手術のスケジュールは割とタイトに設定されている様で、患者には順番が伝えられ、自分の番が近づくとすぐに施術が行える様支度をして待機していた。
順番になると車椅子で手術室へと運ばれる。
手術室の前では消毒を行い、各種目薬を点眼した。
ここでもさっきの点滴の看護師。
バタバタしながら近くの物を引っ掛けて落としてしまったり、相変わらずあたふたしていた。
きっとこの子は不器用なのだろう。将来が少し不安だ。
諸々の支度が整い、いよいよ手術室へ。
20畳弱程の部屋には壁側に多くのモニターが立ち並び、見たことのない様な機械や機器が並んでいた。
部屋の奥側に施術用のベッドが1床ある。
様々な電子音が定期的なリズムを刻んでいて、時折その音が高くなったり低くなったりしていた。
それとは別に、女性の声で英語の自動音声アナウンスが頻繁に聞こえてきた。恐らく機器の状態や設定を案内しているのだろう。
この風景はまるでバイオハザード(映画・ゲーム)の生物研究所だ。
前回手術を受けた くも膜下出血 では手術室に入る前に全身麻酔を施されていたので手術に関する記憶がまったくない。
「これが手術室か」と新鮮な気分ではあった。
「初めて手術室を見た僕の胸は高鳴っている様に感じた。」
ーーと自分を騙そうと試みる。
でもだめ。
ちゃんと分かってしまっている。
この鼓動の高鳴り方は怯えなんだ。
手術は局所麻酔で行われるとの説明は受けていたが視力がどうなるのかは聞いていない。
「目が見えている状態で丁寧に切られていく」なんて状況になるとしたら、それは中々に恐ろしいものに違いない。
正直なところ僕は中々に怯えていたのだ。
手術を終えた今ならば「もう2度とやりたくない」とは思いつつも、もし必要に迫られ手術を受ける時にはここまで怯える事はないだろうと思う。
未知というスパイスは実に効果的に恐怖心に作用するのだ。
手術台に上がり姿勢を整える。
点滴のチューブをつなぎ、バイタルサイン?を計測する機器などを装着。
局所麻酔を注入する。
「これから麻酔入れますね。少しチクっとします。」お馴染みのセリフ。
施術する目の部分にのみ穴の開いたシートを顔に被され、これを固定する。
不用意な動きをしない様にと手と腹部に簡単な拘束バンドをかけられる。
ここまでとても手際よく行われ、僕はあっという間にいろんな管やコードに繋がった。
目に複数の薬剤を投与され、瞼を開いた状態に固定する器具が取り付けられる。
眼球に直接シートが貼られる。
先生は「目にシールを貼ります」と言った。
麻酔が効きはじめきた。
シートが貼られてからの視界はぼやけていた。
ぼやけているけれど、見える。
「やっぱり見えるんだ。」
施術開始。
色んな器具が目に近付いてくる。
最初の幾つかはメスの様に感じたけれど、視界はぼやけていたし感覚がないので切られているのかどうかわからない。
眼球の奥に器具を入れる為に眼球を取り出すのか、または向きを大きく変えたいのだろう。
目の片側を強く押し込まれる。
すると視界がぐにゃりと歪んで全く違う方向へと移る。
数回行われたけれどこれが一番気持ち悪かった。
薬剤が投与されたり色んな器具が目の前をチリチリと動いたり、はっきりとは見えていないものの手術の様子を終始目撃し続けていた。
当たり前のことかも知れないけれど、
瞼を閉じそうになっても瞼は動かない、
シールのおかげか目を開き続けていても瞬きをしたくならない、
この2点に妙な不思議さを感じた。
術中に細かい痛みが多かったのかどうかはよく思い出せない。
けれども時折鋭い痛みを感じることはあった。
麻酔の届いていない部分に侵入したのだろう。
僕の全身の筋肉は終始強張り、冷や汗がじわりじわりと滲み出してくるのを感じていた。
研修医なのだろうか。
助手を務めていた女性が執刀医から事細かな説明を受けていた。
患部を抑えた器具を少し動かす様に指示を受けて助手がそれに従うと「大雑把すぎる」と注意された。
「ミリ単位での細かい感覚が大事なんだよ」と言われていたのが印象的だった。
恐らく手術は90分程度で終えたと思うのだが、僕にはとても長い時間に感じられた。
術後にはあまり痛みを感じていなかった様に思う。とにかくとても疲れていて早く休みたかったはずなのに、この日の夜はほとんど眠れなかった。
これより数日の間、下向きで眠れない寝不足の日々が続く事になる。
あとがき
この記事は昨日書き始めたのだけれど、
今日になると左側に気になっていた視界欠損部分の影はほとんどなくなっていた。
一時、眼圧が異常に高くなり頭痛と発熱、血圧の上昇を伴ったけれど、それも今日には落ち着いてだいぶ楽になってます。
左向きに眠れる様になって夜も眠れる様になりました。睡眠不足の反動が一日中眠気を感じてます。
今は昼過ぎなんだけれど、眠気まなこを擦って(本当に擦ってはいないよ?)この記事を書いてます。早く切り上げて眠りにつきたいところです。
という訳で、今日はこの辺りで。
ここからは段々と快方に向かっていくのだと思います。
それではまた。