終わる世界。あのとき昆はたしかに生きていた。(11月第2週)
2024/11/04(月)
昨日のレセプションでのアルコールが少し残ったのかな?寝坊せずに9時頃には起床できたけれど少し気だるい。
先週から妹が仕事でフィリピンに行っているので、お昼は姪たちと母とスシローに行った。
ん?
なんで姪たちは家にいたんだろう?
そう不思議に思ったのだけれど今日は休日だったのね。文化の日の振替休日。
ところで「文化の日」ってなんの休日なんだろう?
少し調べてみた。
終戦を迎えた日本に新たな憲法が公布された日を新憲法の三大原理に基づき「自由と平和を愛し文化を薦める」日と定めたんだそうな。
因みに11/3は明治天皇の誕生日でもあり、かつては「明治節」という国民の休日だったらしい。
子供の頃に「明治天皇誕生日の名称が変わった祝日が文化の日なんだよ。」って聞いたことがある気がするけれど、どうやらそういう訳ではなさそうだね。
11月3日にはエリーゼ音楽祭で音楽三昧の一日を過ごしていた僕は、文化の日の主旨に添った過ごし方を一応は出来た事になるのかな?
帰宅後はピアノの練習。
週末に友人のイベントでショパンのバラード4番を弾く予定なので、これを中心にショパンエチュードと平均律を練習した。
・練習6時間
2024/11/05(火)
エリーゼ音楽祭もいよいよ最終日。
今日もゆりさんとのアンサンブルの出番があるので大手町の日経ホールに。
お昼過ぎにはゆりさんがソロでエントリーしている部門の審査があるので、早めに出発してこれを聴いた。
今日は全体的にお上手な人が多い印象。
初日にも感じた事だけれど、音がこちらまで飛んでこない様に感じる人が多かった。みんな一生懸命に弾いている様に見えるけれど、音は全て遠くの舞台でチラチラと弾けてしまってこちらには向かってこない。
このピアノは難しいのかな?
鳴りが良くないのかな?
と思っていたら、息吹を感じる音をしっかり客席まで届けてくれる人もいて、どうやら弾き方の問題の様だ。以前、ピアニストの大井健さんがしきりに「演奏はフィジカルだから。」と言っていたのを思い出す。
これは最近の僕の大きな課題でもある。
音を多彩に操るには手や指の様々な機能や筋力も鍛えなければならないのだから。僕はフィジカルトレーニングをいい加減にしてきたから、今のうちにしっかり鍛えておかないとならない。
それにしても、コンクールを客席で聴くなんて経験は本当に久しぶりなんだけれど、感じる事がたくさんあってとても勉強になる。
僕も素敵な演奏がしたい。
それができる様になりたい。
もっと練習しよう。
もっとたくさん弾こう。
審査終了後の表彰式兼レセプションでは皆さんと交流できて楽しい時間だった。
惜しむらくは素敵な演奏だと感じた演奏者に声をかけたかったのに、みんな着替え終わった後で誰が誰だか分からなかった事だ。
帰宅時には両目がとても痛んだ。
疲れたのかなあ。
・終わる世界
丸い紙にホチキスで貼り付けられる。
その紙は四つに区切ってあって、
上には円、右には縁、
下には泣、左には堤と書かれていた。
その丸い紙にホチキスで四肢を留められて2つに折られる。ホチキスの芯が「バチンッ」と肉に刺さるのはとても痛い。その音も怖くて仕方がない。もう一回2つに折られてシュレッダーにかけられる。
円であり、縁であり、泣であり、堤であったものも、また、僕であったものも、全部がごちゃごちゃに刻まれてどれがどれなのか分からなくなった。
丸い紙にホチキスで貼り付けられる。
その円は四つに区切ってあって……。
これの繰り返し。
〈終わり〉
・練習3.5時間
2024/11/06(水)
先週の金曜日以来、久しぶりの仕事。
少し筋肉の回復速度が遅い気がする。
その実感があるという事は、想像しているよりもずっと衰えてるんだろうと思う。本当は今日ジョギングをするつもりだったけれど、いつも通りやらずじまいで一日を終えてしまった。
そろそろトレーニングやストレッチを習慣付けていかないと、体力の衰えを食い止められなくなりそうだ。「怠くて動きたくない」とか「時間が勿体無い」とか考えるのはもうやめにしないと……。
「いらっしゃいませーっ!」
昨日までは音楽漬けの日々だったのに今日は一転して回転寿司屋の店員をやっているというのが何とも不思議な感覚だった。
出勤時は少し涼しめに感じたけれど帰宅時にはかなり寒くなっていて、防寒装備を十分に整えて出なかったことを後悔した。疲れてはいたのだけれど、一生懸命ペダルを踏んで体を温めて帰った。
・終わる世界
線路沿いの古い荒屋が並んだ区画が整備されて新たな建物が建てられた。流線型の前衛的なデザインの入り口をくぐるとモダンなエントランスが広がり、そこには何台かのグランドピアノが置かれていた。
たしかアートケースというのだったか、ピアノにはそれぞれに絢爛な装飾や塗装が施されていた。
ロビーでは施設の所有者が出迎えてくれ、そのまま施設内を案内してくれた。切れ長の目がキツめな印象の小柄な老女だった。
一通り施設を廻った後、僕らはそれぞれピアノ部屋に分かれて練習に取り掛かった。
6時間ほど練習をしてそろそろ引き上げようとピアノ部屋を出ると、所有者の女性がロビーで占いをしていた。
せっかくだから僕も占ってもらうことにする。
「あなたには楽しさが足りないわね。」
「もっと楽しみなさいな。今はそれが難しい事と感じるかもしれない。でもね、まずはとことんやろう。もう無理だってところまでとことんやるんだよ。
そこまでやっても間違うことはあるし、不満の残る演奏もきっとたくさんあるだろう。でもそれも含めて楽しむんだよ。一生懸命にやるし真剣にやるんだけれど、決して自分は責めない。」
彼女の言葉はとても自然に浸み込んできた。きっと誰かにこう言ってもらう事を僕は求めていたんだろうと思う。
感慨深く話を聞いていたら突然警察が現れる。
老女は手錠をかけられ、僕たちは「この国では占いは重罪だ」と伝えられた。
連行される間際に彼女は叫んだ。
「何を信じようと誰にも邪魔される筋合いはない。昔は内心の自由なんてもんもあったんだ。
本当の自由ってやつに手を伸ばせば届くようなところまで迫った事さえある。でも自由という宝を手にするにはこの国の人間はあまりに未成熟だったんだ!
〈終わり〉
・練習4.5時間
2024/11/08(木)
首が痛い。
異様に痛い。
ゆっくりとストレッチをしたら幾分楽になった。
楽になったと思ったら眠くなってきてそのまま寝た。
今日中に済ませなければならなかった少しの仕事を夕方に済ませ、夜から練習を始めた。
本当は今日一日中練習したかったのだけれど、ほとんどの時間を寝て過ごしてしまったから今夜は朝方まで練習する。
・終わる世界
ジョナサンで食事をしていた。
ジョナサンはたしかファミレスだったと思うのだけれど、ここではウェイトレスがそれぞれのテーブルについてお客さんの話し相手になってる。
新しい試みとしてガールズファミレス店舗を展開することにしたらしい。
僕らは指名を入れなかったので、席には待機席にいた暗い表情の女の子が回されてきた。
何処かで見たことのある顔だと思うのだけれど誰だかは思い出せない。
彼女は話すのが苦手な上に重度の人見知りで「全然指名が取れない」と嘆いていた。
「昔はピアノ弾いたりしてたんだけどね……。」
ぼそりと漏らした彼女の一言で思い出した。
浜松国際で優勝した子だ。
舞台での演奏を聴いたことがある。
息をのむほど美しさに衝撃を受けた事を覚えている。
舞台で見たあの姿と目の前の彼女の姿が全く重ならない。
なぜ彼女はピアノを辞めてしまったのだろう。
〈終わり〉
・練習6時間
2024/11/09(金)
昨晩は結局4:30頃力尽きて眠りについた。
朝はかなり辛いだろうと思っていたけれど8時には起きることが出来た。
朝食にハンバーグを食べたら意外と元気だった。
首の痛みはまだ少し残っていたけれどだいぶ楽になってホッとした。
朝食後に小一時間練習をして出勤。
今日は長時間勤務の日。
しっかり稼いでこよう。
仕事は6人もの欠勤があって中々に忙しかった。
バタバタと走り回りながらも、そんな忙しさも楽しめた良い1日だった。
今夜は早めに寝ないと流石に明日は辛そうだ。
・終わる世界
試験会場のは梅瓶の様な形をした高層ビルだった。流麗なシルエットだとネットで噂になっていたビルだけれど、実際に見てみるとのっぺりとした無機質な感じがどうにも好きになれなかった。
ビルの玄関ドアはそのままエレベーターの扉となっていて、僕が中に入り扉が閉まると自動で動き出した。
そのエレベーターには操作パネルも階数表示もなく、代わりに扉の上にスロットドラムが設置されていた。今は横に長い窓の中で10個のリールが回っている。
最初はエレベーターが昇っているものだと思っていたけれどどこにも停まらずにひたすら動き続けるので、どの方向に動いているのかがすぐにわからなくなった。
やがてリールが一列ずつ徐々に回転速度を落として止まり始める。それぞれの図柄には音形やリズム、その他様々な指示が示されていて、最終的に10個の図柄が示した内容に添った演奏をするのが今回の試験内容となる。
エレベーターの停まる先にある部屋がピアノ部屋とは限らない。なんらかの楽器がある部屋ならまだ幸運な方で、何もない部屋も用意されているとのことだった。
なんと難しい試験なんだろう。
「音楽家の奏でる音楽とは、場所も環境も選ばない自由なものだ。それが出来るからこその音楽家なのだ。」という事なのだろう。
僕には全く自信がない。
ほんの小さな障害にさえ萎縮してしまう自分の矮小さには辟易とする。
こんな卑屈な僕が音楽を堂々と高らかに歌える日が果たして来るのだろうか?
〈終わり〉
・練習1時間
軽めに流して。
2024/11/09(土)
今日も比較的元気だった。
朝は少し早めに起きて出勤前にピアノを弾いた。
職場は相変わらずのスタッフ不足。
さらに、気軽に休むスタッフが多いので忙しさは尚更だ。昨日と同様に今日も出勤人数が少なかった。就業中は相変わらずバタバタと駆けずり回っていた。でもこの感じが嫌いではない。
困難な局面をどう乗り越えるかを考えて段取りを組む。周りのスタッフに作業量を求め過ぎると段取りに綻びが生まれやすくなるので出来るだけ自分の身体を動かす。これはゲームをしている感覚に近い気がする。何かに夢中になれれば時間が経つのが早くて良い。
ただ、今日は昨日の疲れがぬけきっていないためか足腰に痛みを感じた。最近はジョギングや筋トレをサボっていたから、負荷の高い動きに身体が悲鳴をあげたのかもしれない。
・終わる世界
長い間電車に揺られてようやく到着。
降りた駅は神社の名前がそのまま駅名となっている駅だ。
改札を抜けたところには古いヤマハのグランドピアノがあった。象牙鍵盤のピアノは久しぶりに見る。触りたい気持ちが湧き起こるが今日は予定があるのだ。名残惜しいけれども素通りして外に出る。
駅舎はなんとも立派な建物だった。
入母屋造りの屋根を持つ立派な門構えの建物だった。
とても田舎の小さな駅だなんて思えない。
線路沿いの道を山の方へと向って歩く。
道の脇には畑が続き、用水路には菜の花が咲き、至る所に梅の木が花を咲かせていた。
この辺りは梅の木が多い。
田舎の春の綺麗な風景だ。
踏切を渡って山道に入る。
空は少しかげってきていた。
段々と勾配が急になってくると、岩や木の根でボコボコの道は少し歩きづらかった。
中腹に差し掛かるころ、配達帰りの酒屋とすれ違った。彼はよほど人懐っこい性格の様で、自分の行先とは反対方向のはずなのに少しの間僕の横に付いて一緒に歩いてくれた。その間に会話が途切れることは無かったが、それは彼がほぼ1人で話し続けていたからだ。
酒屋と別れてしばらくして坂道を登り切る。
鳥居を潜って山道を進むと山荘が見えた。
その山荘の外付けされた階段から登って二階のウッドデッキに出ると、ぽつりぽつりと雨が降り出した。
冷たく湿った風が心地いい。
ウッドデッキの木の感触を両足に、そして両手に感じる様になって、自分が犬の姿になっていることに気づいた。
〈終わり〉
・練習0.5時間
朝練(軽く流して)
2024/11/10(日)
今日は友人のイベントにお誘い頂いてピアノを弾いてきました。
クロ-ズドなイベントなで主催者の意向もあるのであまり詳しくは書かないけれど、自身の演奏には非常に不満の残るものとなってしまった。
ピアノはとても良いピアノでコンディションも素晴らしかった。
会場の響きも申し分ない。
でも演奏はダメ。
ミスも多かったし音色のコントロールにも余裕がなかった。
身体が力んでいてテンポが前のめりに躓いてた。
身体とピアノのフィッティングが誤っていたのだろうか?
前2日の長時間勤務の疲れが残ったか?
前日の睡眠不足が祟ったか?
次にやるべきことや鍵盤の場所が分からなくなることがしばしばあったので、頭の回転は著しく低かったのだろうと思う。
たしかに緊張はしていたけれど、ここまで頭が馬鹿になるのはやっぱりコンディションによるところが大きい気もする。
それでもこの状況に自分を慣らすしかない。
当分の間はこの環境を変えることが出来ないのだから。
それにしても悔しい。
もっと弾けるつもりなのに。
でも結局は本番での演奏がすべて。
つまり僕はへたくそなのだ。
もっと頑張らねば……。
帰宅後は食材の買い出しして夕食を食べて動画編集に手をつけたところで力尽きた。
・終わる世界
〈人物紹介〉
・ちーちゃん:瑠璃ノ小匣の出演経験もある常連さん。
・堀越さん:くら寿司の元スタッフ。ブツブツと不満を言いながら仕事をする癖がある。新人には当たりがきつい。
くら寿司のスタッフ用出入口にある下駄箱でちーちゃんと
リバーシの真似事をしてる。真似事というのは、下駄箱の棚をボードに見立てて白い靴と黒い靴を並べかえているからだ。
因みに、白い靴は厨房用で黒い靴は客席などの外用に使う。
黒い靴の並びを白い靴で端から端まで挟んで一気に下駄箱が白く塗り替わる局面で白靴が足りなくなった。
仕方ないので厨房からえんがわ(かれい)を持ってきて、ちーちゃんと協力して黒い靴に張り付けていった。
リバーシの結果はちーちゃんの勝ち。
約束のベイクドちくわぶをちーちゃんに譲った。
ベイクドちくわぶは揚げて食べると美味しい。
休憩時間が終わり厨房に戻ると堀越さんが寸胴であら汁を焚いてる。
中を見てみると、鯛やブリが丸ごと入っていた。
あら汁はあらを遣うものなのに魚を丸ごと使うなんて、なんて勿体ない事をするんだ!その指摘から喧嘩になり、周りを巻き込んでスタッフ全員が揉み合う大喧嘩に発展してしまう。
〈終わり〉
・練習1時間
ショパン Op.52
練習時間合計
今週:22.5時間
10月:76時間
11月:23.5時間