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終わる世界。あのとき昆はたしかに生きていた(12月4週)

「終わる世界」は夢日記。
その時々で終わってしまう、その日限りの世界の物語。

2024/12/23(月)

昨日は帰宅後あまりの疲れに寝落ちしてしまった。寒さで目覚めた時には腰や首がとても痛かった。お風呂に入ってから改めて床に就いたのは4時前。結局良くは眠れなかった。
毎週毎週、相も変わらずなのだが何故か休日は一瞬で夜になる。
今日は動画の編集をぼちぼち進めてから練習を軽めにした。夕方には力尽きて少し寝てしまったせいで夜はうまく寝付けない。途中だった編曲の楽譜を仕上げてしまうことにする。徹夜仕事になる予感……。

・終わる世界

今日は教習所の日。
僕の通う教習所は施設が充実している。その中でも、この教習所の売りである運転シミュレーターは特に凄い。乗用車と全く同じ形のコクピットに乗り込むと中は別世界。そこはもはや教習所ではない。
窓からは街並みがよく見える。
人々や車が行き交い、線路には電車が走っている。座席では街の音が少し籠って聞こえてくる。これが映像だという事は頭では分かっているつもりだけれども、あまりにも現実味がありすぎて混乱する。バーチャルだという実感がなく、現実との区別がつかない。
試しに少し窓を開けてみる。
籠って聞こえていた音がクリアになった。近くに見えるパン屋さんから香ばしい香りが漂ってくる。

ちょうど今日はそんな没入型運転シミュレーション教科の日。
とても広い倉庫風の視聴覚棟には数台のシミュレーターが並ぶ。僕は手続きを済ませて中に入り、IDカードをスキャンして運転席に乗り込んだ。隣には教官が同席する。今日の教官は大柄で強面の男性だった。柄物のシャツを着崩したスーツに合わせて頭髪にアイロンパーマをあてた風貌は、一昔前のヤクザ映画の出てくるチンピラの様だった。

まずはシートベルトを締めて、それからエンジンをかけてゆっくりと走り出す。まるで実際の街中を走行している様だ。
隣車線で停車中の車の陰からいきなり自転車が飛び出してきたり、信号がもう赤になっているのに横断歩道に歩行者が駆け込んできたりと、シチュエーションもかなりリアリティがあった。幸い、不慣れの緊張感から細心の注意を払って運転していたために、これらの急な対処も辛うじてこなすことが出来た。

しかし、その後に問題が起こる。
後ろに車間距離ギリギリまで近づいてパッシングを繰り返す車が現れた。いわゆる煽り運転だ。正直、これにはどうして良いのかさっぱり分からなかった。道を譲ろうと減速すると向こうも一緒に減速するし、また、加速しても併せて加速してきて真後ろにぴったり張り付いて離れない。
「教官、これどうしたらいいのですか?」
困った僕は助けを求めた。

すると……。
「しっかり首固めとけっ!」
ヤクザ風教官は相当にイライラした様子で助手席の補助アクセルを踏み込んで加速した。時速130キロくらいまで速度が上がったところで、例の車が後ろに張り付いているのを確認してから急ブレーキをかけた。強い衝撃があって車が大きく前に押し出される。車間距離をとっていなかった後続車はボンネットが大きく潰れていた。
教官は外に出て、後ろの車の運転者に詰め寄った。
「オゥッ!車間距離って言葉知ってっか!?」
後ろの車の屋根をバンバン叩いている。

なんで映像の中に入っていけるの?
まさか……。
教官もシミュレーション内のコンテンツだったんだ!?

〈終わり〉

・練習5時間

浜渦正志
 ビサイド島
 旅行公司
植松伸夫
 祈りの歌 
 リュックのテーマ
 ザナルカンドにて
4時間

ドビュッシー
 パスピエ
1時間


2024/12/24(火)

結局昨晩は眠る事が出来ずにようやく就寝したのは朝の8時過ぎだった。一日中寝てしまうかと思いきや、意外にもお昼前には起きる事ができて出勤時間まで練習できた。生活リズムは崩れてしまったけれど、早く済ませてしまいたかった編曲の楽譜起こしの一つを完了する事ができて満足だ。

今日、職場では終始クリスマスソングが流れていた。うちではスタッフがクリスマス的な衣装を着用することはない。先日立ち寄ったセブンイレブンではスタッフのユニフォームがサンタクロース仕様になっていたのだが、みんなとても暗い表情で働いていたので店内のクリスマス演出とのギャップが凄まじく、なんとも哀愁の漂う雰囲気を醸し出していた。

例年、クリスマスは割と暇な印象があるのだが今日はテイクアウトの予約がかなり多かった。この地域の生活スタイルが変化しているのだろうか?

・終わる世界

夢から覚めると崖の上に立っていた。
向こう側に渡らねばならないのだが橋はない。その代わりに小さな足場がまばらに続いていた。
足場それぞれの距離が遠いというわけではないので注意深く歩みを進めていけば問題はないのだろうが、ひとたび足を滑らせて落ちたりしようものなら決して助かることはないだろう。
僕は一歩ずつ慎重に足を伸ばして崖から崖へと渡っていく。幾つか渡り終えたところで足場は段々と狭くなってきた。中にはぬかるんだものなどもあって相当に危険だ。

とうとう、足裏をいくらか上回る程度の面積の足場しかなくなったころ、上の方に通路が見えた。手すりと防護柵に守られた堅牢そうな通路を数人が食べ歩き風に賑やかにわたっていった。
こっちは命がけで渡っているのに、あんな通路があったなんて……。
しかし僕があの通路に侵入することはできない。
あの通路は生まれる前に親が大金を払って契約した者のみが渡れるものなのだから。
結局はお金がすべてを決めるのだ。
生まれる前からすべてが決まっている。
持たざる者は一生この崖からは抜けられずに、最後は何処かのタイミングで落ちてしまうのだ。

〈終わり〉

・練習2時間

浜渦正志
 ビサイド島
 旅行公司
植松伸夫
 祈りの歌 
 リュックのテーマ
 ザナルカンドにて
1時間

ドビュッシー
 パスピエ
1時間


2024/12/25(水)

今日の職場は、昨日と同様にテイクアウトが異様に多い一日だった。
今日のスタッフ構成は外国人スタッフばかり。
注文商品の提供ミスが相次ぎ、商品を改めて用意するために厨房に入ってそれを伝えても外国人スタッフはみんな言葉がよく分かっていない様でこちらを向いてポカーンとしていた。本来いるべきはずの責任者はといえば、持ち帰り商品の用意が遅れがちでそちらに気を取られて厨房を統括できていない。
「この職場、崩壊しているよなあ」と思う。
これでよいのだろうか……?

・終わる世界

喉が渇いた。
何か飲みたい。
ようやく家に帰りつくと、母がアイスコーヒーを用意してくれるという。
席に着いて待っていると大きなメスシリンダーが運ばれてきた。
8リットルのメスシリンダーには5リットルの目盛りまでコーヒーが注がれている。僕はやっとありつけた水分に喜び、それを一気に飲み干した。
空になったメスシリンダーの底の方にはコーヒーの澱がだいぶ残っている。
勿体ないので水を注いで飲んでみると、微かに残ったコーヒーの香りとカルキ臭のチグハグなバランスを水道水のぬるさが強調して、それはそれはとてもまずかった。
口直しに改めてコーヒーをドリップで淹れて飲むことにしたのだが、自分で淹れた2杯目のコーヒーはあまり美味しくなかった。

〈終わり〉

・練習3時間

浜渦正志
 ビサイド島
 旅行公司
植松伸夫
 祈りの歌 
 リュックのテーマ
 ザナルカンドにて
1時間

ドビュッシー
 ベルガマスク組曲
2時間


2024/12/26(木)

ゆっくり起きてゆっくり練習。
ほんとは一日中練習しようと思っていたのだけれど、どうにもあたまがぼやーっとしてしまう。昨日の夜が遅かったせいだろう。
夕方には眠気に負けて夜は眠れない、明日もこんな一日になりそうだ。


・終わる世界

雨。
そう、あの時は雨が降っていた。
かなりの大ぶりだったけれども周りは静寂に包まれていた。脇目も振らずに飛び込んで来る数多の雨粒が、地面にぶつかって、砕けて、小さな雫になって飛び跳ねる。その様子はまるでスローモーションのようにゆっくりと、そして鮮明に、よく見える。音は聞こえない。辺りは静かだ。
でもたくさんの雨音が、よく見えた。

そんな雨の中を僕は自転車で走る。
道路はもうほとんどが水に覆われてしまっている。
2センチくらいだろうか。
まるで水の上を走っている気分だ。
橋の入り口を慎重に見極めて渡る。ここを間違えてはいけない。
足元のほとんどが水面だから橋は特にわかりづらい。
入り口を間違えてしまうと川に流されてそのまま消えてしまう事になるだろう。

橋を渡り終えて山道に入る。
坂を上って山荘にたどり着く。
さあ、ようやくだ。
この山荘の屋上に行かなくては。

ジャングルジムのような組木を登っていく。
ここには階段はない。上に登るには梯子が必要だが、僕はここまで自転車で来たのだ。梯子なんて無い。
慎重に慎重に登っていく。
もう7階あたりまで来たろうか。
足を滑らせでもしたらケガでは済まないだろう。

屋上に行かなければ!
まだまだ屋根は遠い。
ここまで来てしまうと休める場所もない。
登り続けるしかないのだ。

〈終わり〉

・練習5時間

浜渦正志
 ビサイド島
 旅行公司
植松伸夫
 祈りの歌 
 リュックのテーマ
 ザナルカンドにて
4時間

ドビュッシー
 パスピエ
1時間


2024/12/27(金)

早起きしたつもりが気付くとお昼過ぎ。
さっき起きた時は6:30だったはずなのだけれど、瞬きする間に時間を飛び越えたらしい。
金曜日はいつもなら出勤日なのだが、今日は勤務日数の調整のために休みをとっている。これから繁忙期シフトで長時間勤務が多くなるのだけれど連勤が4日を越えると体が疲労に耐え切れずに体調を崩してしまうからだ。

遅めの昼食を摂って緩やかな気持ちで練習を始めた。
つい先日、担当の調律師に来てもらって断線を直したので今年はもう弦が切れる事はないだろうと思っていたら、早速「バチィン」という衝撃音と共に弦が切れた。今年9本目の断線だ。年間10本前後切れるとなると、ピアノの維持費は調律込みで一年あたり15万くらいかかる見込みになる。
クレカの年会費もAdobeのサブスクも値上げして生活用品も軒並み値上げ。なかなか苦しいよね。

夕方に食材の買い出しに近くのスーパーに行ったら、年末年始の準備に多くのお客さんで賑わっていた。僕は年末年始は仕事なのでいつも通りの買い物を早々に済ませてしまおうと思ったが、困ったことに野菜が高い。
お正月価格なのだろうか?
冬になってからは、仕事から帰った後に大根のおでんを食べるのが習慣だ。でも今日は大根が高い。
いつもは180円くらいなのに今日は320円。しかも小ぶりでしなびてる。新鮮で立派なものだったら多少高くても買ったろうけれど、このくたびれた大根をいつもより高い価格で買うのは癪だ。仕方なく今回は白菜で代用することにした。
まあ、白菜も高かったのだけれども……。

・終わる世界

バイトの休憩時間中、ロッカールームで店長とすれ違った。
店長はワンピースの大ファン。
中でもシャンクスが大好きで、整形してシャンクス似の顔にしてしまうほどだ。
最近は服装や喋り方も似せてなりきるほどの徹底ぶり。

そんな店長に僕は話しかける。
「新撰組のNo.2って知ってます?」
「土方歳三でしょ。」
「実はそれ3番手だったんです。
2番手は全く名前が知られてなくて、最近まで生きてたんですよ。」

「へぇ、そうなんだ。」
店長はギョロリとしたら目でこちらを見た。
その時、違和感?いや、恐怖を覚えたんだと思う。浅黒く焼けた彼の体には人間のものとは思えないバランスの異様さがあった。異様に細くて長い腕、それに似合わずとても大きな胴体、妙に膨らんだ節々。まるで漫画ワンピースの姿そのまんま。

でも問題はそんな事じゃない。
目だ。
彼の目はこちらを見てはいたけれど僕を全く見ていない様な……。なんて言ったらいいんだろう。それは同じ人を見る目ではない、いや、そもそもあれは人の目ではないとさえ感じた。

「今日はもう時間がないんだ。早く行かないと。」
店長は池田秀一の様な声でそう呟くと、部屋を出て行った。店長が隣の花屋の美人店主に話しかけて中に入って行くのが窓から見えた。
店長は今日シフトに入っている筈なのに一向に戻ってくる気配がない。それからだいぶ経ってエリアマネージャーがやって来た。僕は店長が仕事をサボっているものと思い、マネージャーに確認する。
「店長が隣の店に行ったっきり戻ってこないんですよ。大丈夫かな。」

するとマネージャーは予想外の返答をする。
「このだけの話、あの店長は最近地球に入ってきた新型の宇宙人なんだよ。いや、人ではないか。あの生物は今頃繁殖中なんじゃないかな。」

「へ?
さっき隣の店主さんと話してましたよ?」

「そうか、なら彼女はもう死んでるね。人間を苗床にして卵をたくさん産みつけるんだよ。今頃はびっしり卵が詰め込まれてるんじゃないかな。」

「っ……‼︎」

〈終わり〉

・練習4時間

浜渦正志
 ビサイド島
 旅行公司
植松伸夫
 祈りの歌 
 リュックのテーマ
 ザナルカンドにて
1時間

ショパン Op.38/52
3時間


2024/12/28(土)

今日から三日間は長時間勤務の予定。
最近は入店に制限をかけて商品の提供時間などをコントロールしている為、去年までのこの時期特有のバタバタ感はなかった。でも流石に巷はそろそろ年末年始ムード。店内飲食もお持ち帰りもだいぶ忙しくなってきた。個人的には少し物足りない気もする。もっとドッと忙しい方が張り合いがあって良いけれど、恐らく今のスタッフ構成ではパンクしてしまうのだろう。
まあ、何にしても楽しんで行こう。


・終わる世界

このクラスに友達は1人しかいない。
みんな僕を避ける。誰も僕と目を合わせないし話しかけても応えてはくれない。
僕が何故避けられているのかは分からない。
一時期、真剣に考えてみた事もあったけれど、結局、全く想像もつかなかった。
そんな、このクラスに存在しない僕の唯一の友達は前の席の錦くんだ。
僕らの席は窓際の列にある。
誰かと偶然目が合った時にそそくさと視線を外されるのにうんざりして、休み時間にはいつも床に座って窓枠下の壁にもたれて本を読む。
錦くんはそんな僕に、椅子を逆向きに跨って話しかけてくる。
話しかけられた僕は、こんな環境だからあまり目立ちたくなくて素っ気無い返事をするのだけれど、錦くんは一向にお構いなしでどんどん話題を振ってくる。最初は戸惑った僕だけれど、この時間がホッとする安心したものになるのはあっという間だった。

錦くんはこのクラスで人気のある子だ。
休み時間には必ず色んな生徒が話しかけにくるのだけれど、なんだかんだと上手くかわして相手は笑顔でその場を去っていくことになる。
この技術は才能なのだろうと常々思う。他人を意のままに操る能力でもあるんじゃないかとさえ感じてしまうほどだ。
そんな錦くんとの休み時間を、周りはやっぱり面白く思っていない。最近は後ろの席の子が錦くんの目を盗んで僕を蹴りつつく様になった。

「ああ、この時間ももう終わりになるんだな。」

誰も僕を自分のテリトリーには入れないくせに、みんなは当たり前の様に僕の時間を、空間を土足で踏み荒らしていくんだ。

もううんざりだ。そろそろ我慢しなくていいかなあ。

例によって、錦くんが目を逸らした時に後ろの子の踵が僕の肩を打った。僕はとうとう頭に来て、その子の足首を掴んで立ち上がった。足を掴まれた子はバランスを崩して机ごと後ろに倒れる。
僕はその子に覆い被さる様に近付き、首を片手で強く掴んだ。そして少し持ち上げてみると、思いの外軽かったその子の体はいとも簡単に地面から浮いた。
錦くん以外の生徒の顔なんてちゃんと見たことは無かったけれど、この子の頭は小さかった。

「そんな顔してたんだ。よく見たら可愛いんじゃん。」
思った事がボソリと口に出た。

僕はその子の喉から手を離して教室を出る。
もうここに戻る事はない。

さようなら、錦くん。
ありがとう。

〈終わり〉

・練習1時間

ショパン Op.38/52


2024/12/29(日)

長時間勤務2日目。
かなり疲労が溜まるだろうと思っていたけれど意外と大丈夫。
昨日お風呂でよく体をもみほぐしたのが良かったのだろうか?

昨日よりも少し忙しい一日だった。
身体を動かして働くのは結構楽しい。
スタッフと声を掛け合って、大きな声を出して体を動かして、まるで学生時代の部活の様だ。

でも、時折からだに少し不安な違和感があった。
一瞬変な頭痛がしたり、目に変な感覚を覚えたり……。
こんな瞬間が、ある時に一線を越えてどこかが壊れたりする時が来るのかもしれない。


・練習1時間

ショパン Op.38/52


今週:21時間(前週比+5時間)
10月:76時間
11月:88時間
12月:70.5時間


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