Dual Residence: サくら&りんゴ#1
都庁が遠くにそびえ、坂を下ると神田川。
水平線から朝日が昇り、窓辺で水鳥の飛来を眺めるシムコー湖畔。
そんな東京とカナダ・オンタリオの二重生活を綴ります。
春の嵐
March 2021
12月にカナダを離れてはや3か月になる。
こんなに長く日本に滞在するのは久しぶりだ。
始めは全く気付かなかったが、結構な量で日本語を忘れている。
その日本語、ヘン!
去年から東京に戻っている娘アーニャのチェックが度々入る。最近使われだした日本語は特に苦手である。
コロナカ。
ゴーツーっていきなり。ゴーワンは?
カタカナ語は訳が分からない。
こんなことがあった。
カナダでは夫のおんぼろバン2007年製Dodgeを寄付して以来、私はUberのヘビーユーザーである。中古車を買おうと思いながら冬場は気が進まず、Uberを頻繁に利用していた。
I can Uber。
今やそのまま会話で使われるくらいに広まった、マッチングアプリで配車されるアマチュアタクシーのことである。
私が住むオンタリオ界隈でロックダウンになったあとはUber Eatsも広がり、Uber ですでに登録されている私のメールにはしょっちゅうUber Eatsの広告メッセージが入るようになっていた。
ところがである。
日本に帰国して友人に、カナダでUberを利用していた話をするとなんとなく変である。それも彼女だけではない。話すたびに友人たちの頭の上に???と、クエスチョンマークが並んでいる。
するとその中のひとりが
Uberって人も運ぶのね!
と言うので今度は私の頭に???と並んだ。
Uber Eatsをこっちではウーバーって呼ぶのよ!
というアーニャの言葉でわけがわかった。
世界の多くの国で使用できるアプリUberがずっと日本に取り入れられていないのは知っていたが(最近23区内で使用できるようになった?) Uber Eatsを日本だけ勝手にUberって呼ぶって、どゆこと?である。
この地では
ウーバー = 出前屋さん
という図式で
都内で走り回るUber Eatsの自転車の後ろに、私がちょこんと乗って運ばれている様子を友人たちが想像していたかと思うと、クスっと笑える。
東京の家の前の桜が花をつけ始めた。
何年前だったか、わざわざ桜の時期に合わせて夫とカナダから帰国したことがあった。神田川の桜のトンネルを二人で歩いた。アメリカ生まれのアメリカ育ちであるが夫は桜が好きで、 “さクぅら、さクぅら”としょっちゅう言っていたのだ。さくらと平坦に発音できないので、夫が言うとどうも桜っぽくない。
夫は狩り仲間のErikにもその話をしていたらしく、先日Erikが、東京にまだ居るなら桜の写真を送ってくれとmessengerで言ってきた。
Erikには去年、夫が注文したリンゴの苗木を湖畔の家の裏庭に植えてもらった。日本帰国前に夫の言いつけ通り、根っこをリスにかじられないようわらのシートで包んで来た。
桜と林檎。
二か所での生活の象徴にと、ナナが助言をくれた。
夫のリンゴをどうしても育てたい。
そんな私の気持ちを知ってくれてのことである。
カナダと東京で起こる楽しいこと可笑しいこと、色々綴っていきたい。
特に人との素敵な出会いとか。
不思議な偶然とか。
今日の東京は春の嵐で
大木だが桜は
そのたおやかな枝を風のままに揺らしている
三分咲きの花は
曇り空を移したpale pink
私の心がまだ
かなり哀しいままだからかもしれない