サくら&りんゴ #53 子供の力
なんせ、現時点の私、何をするエネルギーも失っているので、目の前に来た事だけ手を付けることにしている。
例えば、東京で運営する教室とこちらカナダのモンテソーリプリスクールと親交を続けてきたが、感染症のせいでプリスクールのオーナーが代わってしまった。スクールが閉鎖されている間、連絡を取っていたクラスの先生も先月辞めてしまった。
だからといって、また新たな関係を築こうとするエネルギーが湧いてこない。何度か訪問した別のスクールに再度コンタクトを取る気力がない。
なされるがまま。。
そんな状態であったが、ひょんなことからお隣の家の子どもたちのベビーシッターをすることになった。
もうすぐ4歳と1歳半の男の子たちである。
気持ちはメンドクサ~イだったが、
取り合えず、積極的に何かをしないまでも、来たものを受け入れる態勢だけは残しておこうと思ったわけである。
ベビーシッターといえば学生の時以来であった。
同級生で英文科にいた帰国子女の友人がアルバイトで、アメリカ人教授の子供のベビーシッターをしていた。当時そんな仕事があるのだと驚いたものである。それがきっかけで私もベビーシッターのアルバイトをするようになった。私は英語とは無縁だったので、日本人家庭の子どもたちだったけれど。
当時日本では(今も?)、お金を払って小さい子供を他人に預けるという感覚がなかったようで、日本人家庭の需要はあまりなかった。
さてお隣さんは朝9時過ぎ、お父さんアーミッドが男の子たちを連れてやって来た。
お兄ちゃんイーダンのバックパックと、ルカのおむつや着替えが入ったトート。そしておやつのランチボックスも一緒に。
隣から50歩ほどの距離であるが、お父さんはすでに汗かきかき状態である。
妻のジュリアはお母さんが来ると言うので迎えに行っているらしい。ジュリアはロシア出身である。
前日急に、子供たちのベビーシッターができないかと聞いてきたジュリアの話では、イーダンはモンテソーリのプレスクールに入っていた経験があるし、ルカも普段はデイケアに行っているということで、人にも慣れて取り分け問題はなさそうである。
東京の教室でも未就園のクラスでは1歳半の子供たちがいる。こちらは親付きで1時間だけのクラスである。
カナダのモンテソーリプリスクールにお手伝いに入る時も資格上3-6歳のクラスのみ。
1歳半のルカと一日一緒に過ごすのは、ちょっと骨が折れそうで、引き受けたものの夜になってから憂鬱になった。
ずっとパソコンの前で教室の仕事をしているかnoteを書いているかの日々である。
エネルギー足りるかしら
さて午前中は二人の男の子と私、まだお互い様子見のせいか、いたってスムーズに時間が流れる。モンテソーリ方式に、これとこれとこれがあるけれど、何で遊ぶ?とイーダンに聞くと、嬉々として選んで遊んでいる。
しかし予想通りはルカ。
まだ言葉が出ないし、何でもかんでもお兄ちゃんと同じことをしたい。
でもうまくできない、言えないジレンマで癇癪が出る。
が、まだまだ手に負える範囲。
こんな風に夫の寝室もとい、オフィスがしばし子供たちの声でクレヨン色に彩られた。
(夫の寝室として使うようになっても二つのディスクが置かれたまま、夫はベッドルームと言うのを嫌ってオフィスと呼んでいたのである↓)
ちょっとルカの癇癪がひどくなってきて、眠いんじゃないの~と思う頃、アーミッドがランチと昼寝にいったん子供たちを自宅に引き取って行く。
イーダンはお父さん大好きで、夏場しょっちゅうお隣から
Daddy!Daddy!と声が聞こえた。
湖でよく遊んでもらっていた。
しかし今日はジュリアのママが来るまでに、家の整頓をしておかなければいけないと忙しそうである。
さて午後、二人が嫌がることなく戻ってきて、とりあえず安心。
夕方6時までのお預かりである。
途中室内で遊んでいると外から芝刈り機の音。
私がアーミッドだなと認識するより早く
Daddy!
とイーダン。
そうかなあ?ととぼけるも、絶対そうだから見に行くと言って聞かない。
ルカも一緒にダーダー言っている。
兄弟で、お父さんの芝刈り機音が聞き分けられるとは!(笑)
仕方がない、Daddyはお家で忙しいから手を振るだけね、そういってシューズを履いて三人手をつなぎ裏庭に出る。
もちろんDaddyはすぐ隣で芝を刈っていて、
そしてイーダンのDaddy Daddyコール。
ルカも一緒にバフバフ。
アーメッドは苦笑いしながらやれやれと、草刈り機を止めてやって来る。フェンス越しに子供たちを順に抱き上げキスキスキス。
さあ、プレイグランドに行こう!
私は弾みをつけて声をかける。
いつまでもDaddyは構っていられないからね。
ビーチの端、ゲート側に、子供たちの遊具が備え付けらた公園がある。
近くにあって助かった。
元気な男の子ふたり、そこでたっぷり過ごすのがよさそうである。
公園は普段から来ているのか、イーダンはわが物顔で遊具を使いこなす。
そしてここでもやっぱりそれについて行きたいルカ。
イーダンはルカの様子を見ながら、シーソーなどちゃんと手加減したアップダウン。優しいお兄ちゃんである。
しかし見ているとルカの身体能力に驚くではないか。
さすがにモンキーバーなどはよじ登れないが、1歳半とは思えない手の力と脚力。まだ歩き始めたばかりで、ブランコに乗る時など自由にできない足である。それなのにその力の強いことと言ったら。
中に誰か入ってません?と疑うくらいである。
お迎えの時にその話をしたら、アーミッドはそうなんだよと、ここでも苦笑い。二歳を過ぎたらお兄ちゃんと二人、とんだことになりそうだと予感しているに違いない。
ところでスナックタイムにランチボックスを開いたら
中にはいっている物が渋かった。
お父さん、その選択でよかったの?みたいな
ナッツとキャロットはそこそこ定番スナックであるが、まだ歯の生えそろわないルカはさすがに無理じゃない?
そしてフルーツの選択がなんとザクロ。
入れ物のフタを開けた時、これってなんだっけ?
さすがに丸ごとではなく、ちゃんとルビー色の実がほぐされてザクザク入っていたのである。
私の中にある日本のザクロは、どこかのお宅の庭木で、パクリと口を開けて白い歯ぐきにそのワイン色の歯を見せているもの。
あるいはスーパーで売っているジュース。抗酸化作用で美容効果あります、みたいな謳い文句と共に。
だから子供のおやつにはとうてい思いつかなかった。
そう言えば近所のスーパーSobeysのチラシに載っていたっけ。安売りになっているのかもしれない。
粒にちょっとシンがあるけどいいのかしらと思うも、ルカはモリモリ食べている。ぶきっちょなスプーン使いで次々口に運んでいる。普段から食べ慣れているのだろう。
しかしこれだけ食べたら、明日ルカのうんちに粒の芯がたんまり出てくるのは間違いない。
モンテソーリプリスクールを辞めた先生が言っていた。彼女は私が手伝いに入っていた頃から、スクールの経営に不満があるようだった。
でも、
大人の問題でイヤな思いをしても、朝スクールに来て子供たちの顔を見るととても元気が出るのよ。
子どもたちをいつもいつも愛している先生だった。
それと同時に、マリア・モンテソーリのごとく、
子供たちひとりひとりを丁寧に観察していた。
上の写真はその先生と卒園していく女の子である。
子供たちはいつも
太陽のようなエネルギーにあふれていて
私たち大人に力を分けてくれる
時間があるときは(いつでもある状態だが)
イーダンとルカのベビーシッターをすることとなった。
とりあえず今は、来る者を受け入れることから。
次の日さっそくテクテクSobeys まで行って、pomegranateザクロを買った。
1個$3.49(300円くらい)で他の物と比べたらそこそこお高めである。
しかし甘くてジューシー。
ルカ以上にパクパク止まらなくなった私である。