サくら&りんゴ #102 木婚式
明日は夫と私の結婚記念日。
知り合った8月から数えて9回目の夏が来る。
もうそんなになるのかと思う。初めて会ったときからの年数はどんどん増えて行くけれど夫と一緒に過ごす時はもう
1秒たりとも
100分の1秒たりとも
1000分の1秒たりとも
重ねられることはない。
1年目の結婚記念日は紙婚式で
私はインク補充のできる滑りのいいボールペンに名前を入れて、そしてメモ魔の夫にノートを添えて贈った。夫はモンテソーリの本をくれた。
2年目はコットン(綿婚式)で
私はピマコットンのシーツを買った。私たちが住む湖畔の湖の色。
夫はICUから一般病棟に移ったばかりだった。そして汚れるからと言ってそのシーツを病室で使いたがらなかった。二人で使うベッドのためにとそれはパッケージに戻った。
私へのプレゼントに夫は、娘に頼んでピマコットンのタンクトップを買ってくれていた。
桜色
その色を夫が選んだのか、夫の娘が選んだのかわからない。
ICUであと2週間と宣告された日から3週間たっていた頃。
奇跡のように迎えた3年目はレザー
私は車いすの夫の足元が暖かいようシープスキンのルームシューズ、それから読書好きに合わせてレザーのブックマークを贈った。
夫はストラップのついたサンダルを私にと探していた。ここに留め金があるのはきみの足首に当たるからダメだと言って、そしてそれっきりになった。
その頃には夫の混乱がもう止められなくなっていた。
私が贈ったブックマークはそのひと月ほど前、夫が私に買って来てくれと頼んだ本、Amazon創始者ジェフ・ベゾスのペーパーブックの同じ場所にはさまれたまま動くことがなくなった。
亡くなるひと月前の事である
もちろんその時はそんなこと
知らなかったのだけれど
4年目の結婚記念日を私は知らない。夫がいない初めての結婚記念日をどんな風に過ごしたかまるで思い出せない。
そして5年目の今年は木婚式
木彫り好きの夫に何を贈っただろうか
夫はデコイを自分で作っていて。。。
デコイにまつわる話もしようと思ったけれど、今日はしんどくなるのでやっぱりまた別の機会に。
生まれた時に愛されなかったと言い続けていた夫だから
私が最後にあなたを愛するからと言ったけどほんとは
私が
たくさんたくさん
たくさんたくさん
夫から愛されたかったんだと
ひとりで結婚記念日を迎える
今ならわかる。
ヘッダー写真は頭がポロリと落ちた夫のデコイ。
当時、やば~いとこっそり修復。
けれどうまく元に戻せなくて隠しておいた。
もうそんな必要ないんだとふと思い出す。
彫り違えた跡
滑らかな手触り
そして薄っすら
古い木の香り
日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。