湖畔だより。その後13 What's for dinner today?
嵐である。
いや嵐のような天候。
地元の人にとっては、そこまでひどくないのかもしれない。なんせ両隣のおうちのバックヤードは子供のおもちゃが散らかったままで準備もない。
しかし風が強くなってきている。
午後に一度停電していたようだが、すぐ復活していて気づかなかった。そんなような停電がここではしょっちゅうあるのだ。
ところが、陽も落ちたLate afternoonの6時過ぎ、完全に電源が落ちた。まさに灯りが2,3度揺れて、コトリと切れたと言う感じ。窓の外を見ると、街灯だけがともって、あたりは真っ暗闇である。
こちらに移住したばかりの頃、確か夏場だったか、停電があって慌てていたら、夫が
はあ?
という顔で私を見た。
Relax!
なんせ、東京に35年住んで、雷でブレーカーが落ちた時くらいしか停電の経験がないのだ。東北の震災後の計画停電も、杉並区は除外されていたし。
今やそんな私も、度々の停電に、もう慣れっこである。
が、灯りより何より
私を恐れおののかせるのは、
寒さである。
ファーニスが止まってしまうと、ヒーターが作動しない。
薪ストーブはあるが、薪はあと2本しか残っていない。
とにかく
Relax。
外はまだかろうじて、マイナスにはなっていない気温なんだから
そう自分に言って、とりあえず湯たんぽにお湯を入れ、ベッドの中に滑り込ませておく。
こういう時ボイラーのシステムは便利である。すでに熱すぎる温度のお湯がそこにある。
iphoneで電気会社のinnpowerのツイートを見る。
とある。
ということは、まだ完全復旧の目途はたっていないということである。
FacebookのAlcona chatでも回りの様子を確認する。
このグループはこのあたりの住人のもので、
うちはどこどこのストリートだけど停電中、
どこどこの木が倒れて電線にかかったらしい、
など細かい情報が出ていて助かる。
二軒向こうのお家ではジェネレーターがあるらしく、
音を立てて発電が始まった。
実はうちの地下にもあるのだが、使えない。
去年も同じような時期に停電になった。
夫に言われるまま操作するが動かなかったのだ。
バッテリーを替えないとだめかもなあ
そう夫が言っていて、そのままになっていたのだ。
ずっと気になっていながら、と後悔する。
その二軒向こうのJeffに見に来てもらえばよかったかもしれないが、
何となく気が進まなかったのだ、あのおじさん。
しかしいつ復旧するかわからないと、人々を不安にさせる。
iphoneのバッテリーが落ちないよう注意しながら
情報だけをこまめにチェックする。
モバイルバッテリーが半分減ってしまったままであったことも
軽く後悔する。
そんな中でFlorから
今日そっちに行こうと思ってたけど、天候悪いからやめるわ。
とテキストメッセージが来る。
嵐が来るとわくわくする
と言っていた彼女もさすがにキャンセルだ。
Erikからは今やっと家に着いた、とメッセージ
ハンティングに行っていたのだ。
知り合いのひとりがフィリピン出身で、
まったく、カナダ人の夫や息子たちは、ちょっとした停電でも大騒ぎよ。私なんか電気がないようなところで育ったんだから。
と言っていた。
そんなカナダ人からも、あたふたしているとみられる私ってちょっと恥ずかしいかも、である。
去年のように、停電で夫の酸素が足りるかと心配する必要はないし、
(5リッターの酸素使用の設定だと、予備のタンクは2時間しか持たなかった)
まだ死ぬような寒さでもない。
キャンドルライトで本でも読むことにしよう。
寒さ対策だけはしっかりと。
しかし外は唸る風である。
お隣のボートにかぶせたカバーがバタバタと煽られて、その音で余計に怖い。
夫の手作りの家が
ミシミシという。
この家大丈夫?と不安である。
落ち着かない。
すると近所で緊急車の止まる音がした。
電線の修理?
窓の外を見る
暗くて何も見えない。
お隣から人の声がする。
ボートのカバーの向こうで何人かが外に出ている。
車のライトに当たって、Simcoe Paramedicの字が見えた。
え?まさか赤ちゃんに何か?
こちらのお隣には二人の小さな男の子と、9月に生まれたばかりの赤ちゃんがいる。
お父さんはしょっちゅう大麻をすっているし
もう10か月以上家の賃料を払っていないと、オーナーから聞いたのは夏の事である。何かきちんと生活できていない様子が伺われるのだ。
しかし、救急車が去ったあとも自家用の車がそこにあったので、訪問客の具合でも悪くなったのかもしれない。
とにかく暗いと 人を不安に掻き立てる。
Alcona chatを再び確認したら
と投稿している人があってちょっと笑えた。
そう言っては悪いかもしれないが
あたふたとしている人もいるのだ。
WFDTとはWhat's for dinner today というデリバリーサービスである。
ちょうど夕食の時間帯である。
夜中に電気は復旧した。
もうベッドに入っていたので真夜中だと思っていたがまだ11時前であった。
地下のファーニスを確認しに降りると、ちゃんと作動している。
ホッとして、またベッドに戻る。
2時間おきに目が覚める様な睡眠しかできていなかったのに、
なぜかこの日このあと、朝までぐっすり眠ることができた。
昨夜のような風はもう収まっている。
しかし、嵐が去ったからと言って、日本の台風の後のように、晴れ渡る空が広がるわけではない。
今夜から雪の予報である。
マイナス7Cまで落ちて、向こう二日は雪である。
これではてくてくSobyesまで歩いて、買い物に行くのは無理かもしれない。
いつでも車に乗っけてあげるわよ
とRitaが言ってくれているが、
また感染が広がり、警戒ステージが上がっている状況で、頼みづらい。
おまけにMarcと一緒に先週、親せきの結婚式に出席して、その参加者のひとりが発熱しているのだ。
蓄えの食料品も減って、わたしもWFDTにしようかなあと考え中である。
日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。