チョコレート・・鹿のことですが・・そして、わくわくしたことふたつ。
素敵な出会いがあった。
週末、近くのライブラリーで開催されたローカルアーティストたちの作品展。スーを誘って出かけることにした。
度々登場してもらっているスーであるが、彼女は絵を描く人でもある。彼女はここのペインティングのワークショップに参加していたのである。
さて、ローカルアーティストたちの作品。
そして私の心を捉えたのが
生き物を題材にしたウッドワーク。
熱を持つシャープなナイフを使い、焼きながら描いて行くものだ。
そこにいる動物や鳥たちは実に緻密に表現されている。
動物を捉える鋭い視線。
それでいてどこか、彼らへの愛情を感じることができる。
それは木のぬくもりのせいだろうか。
アーティストのおじさんは、電動車イスに乗って案内しながら、ほかにも絵ハガキやトートバッグにも動物たちを印刷していると紹介してくれた。
ビジネスカードをもらってライブラリーを後にした。
何か気にかかるのがあった?
スーの問いかけにこのウッドワークの話をした。それなのにこの後思いがけないことが起こって、すっかりこの事を忘れてしまったのである。
だからふと、ライブラリーにもう一度見に行こうと思ったのは今朝になってからのことである。
チョコレートを描いてもらえないかな。
そんな考えがよぎったのだ。
チョコレートとは以前にも紹介した、夫が獲った牡鹿の事である(ヘッダー写真)
多分夫のハンター人生で一番大きい鹿であろう。剥製になった今は玄関先でいつも私を見下ろしている。
その面長の(笑)華奢な頭でどうやって支えていたかと思う立派な角。
そしてその下にある義眼は思いのほか優しい。
ライブラリーでおじさんは、昨日と同じ電動車イスに乗って他の訪問者と話をしていた。
会話が途切れたのを見計らって顔を向けると、なんと私を覚えていたらしく、おっ!という表情になった。
頼みたいことがあるの
何だい?
夫が獲った牡鹿を描いてもらえる?
これなの。
私は撮ってきた写真を見せた。
おお~これは大きいね!
1,2,3・・・ファイブ・ポインターかい?
おじさんは角の大きさの事を言っているのだ。枝分かれしている部分を数えて牡鹿の年齢や大きさを表すことができる。
このポイント数で描いてほしいの。
亡くなった夫が獲った一番大きな牡鹿よ。
おじさんはちょっと悲しそうに顔をゆがめそして
ぼくも前妻を失くしたから、その気持ちがよくわかるよ
そう言って
もちろん作れるよ!どんな大きさがいいんだい?
おじさんの目がきらりと光った。
いや~ぼくはいつも作品の事を色々考えると眠れなくなってさあ~
土台はその動物に合った木目を探すんだ。鹿なら縦の木目、それが森の木になるだろ?
おじさんは興奮して話がとまらなくなった(笑)
家に戻ってさらに何枚か写真とり、メールで送ることにした。
見積もりを立てて返信してくれると言う。
ウッドワークが好きだった夫。その影響を受けて私も興味を持つようになた。出来上がりを思うと、はやくも気持ちがわくわくするではないか。
そして私にはもうひとつ魂胆があった。
いつかこの湖畔を離れて東京に戻る決心をする時、そのウッドワークのチョコレートを持ち帰ろうと。
なんせ鹿の剥製を日本に持ち込むことはできないものだから。
メールには
こちらを見ている目にしてほしいの
そう付け加えることも忘れなかった。
チョコレートの毛並みにそっと触れる
首に沿って手のひらをすべらせる
それは思いのほか
なめらかで
ほんのり暖かくさえあった
かつての体温がまだ残っているかのように
そうそう、スーとライブラリーの帰り道の思いがけない事とは。
ね~お願いがあるの。
とスー。
絵のモデルやってくれない?
え~??
前に私、ペインティングやドローイングのグループに入ってるって言ったでしょ?そこでのモデル。
みんなにもう話してあるの。
ハハ~ん。どおりで。先日うちに来た時なんだか知らないけど私の写真を撮ってくれたのだ。
なぜにアジアンおばさんという選択?
その題材選びにちょっと疑問もあるけど???
心配ないわよ、20分おきくらいに休みがあるから。
スーはそう言って、その後は今彼女が描いている作品の話でもちきりとなった。
デッサンのモデルなどしたこともデッサンをする側の経験さえもない私。
そのアートな場に行けることを考えるだけでこれまたドキドキするではないか。
夫が亡くなって以来
ずっと夢の中にいるような
水の中にいるような日々だった
そこから
ふっと目が覚めたみたいな
ずっと殺していた息が
ようやく継げたみたいな
そんな気がした
あ、大丈夫。モデル業は裸婦ではありませんから。
そんな人様の目の毒となるようなことは決していたしません・・・