緋銅
緋銅とは
銅製品を探していた。
銅と言えばたくさんのお鍋があった。
カナダ湖畔の家のキッチンの壁に
ずらりと並んでいる。
料理好きの夫ジェイが集めたものだ。
しかしですね、なにが大変って、くすんでくる鍋たちを磨くこと。
二人で並んで黙々と磨いたのは、何年前のことだろう?
卵焼きには銅がいちばんと言うけれど
さすがに卵焼きを知らないジェイの収集にその選択肢はなくて。
でもこれ以上いらないよなあ~クッキング用の銅製品は。
そんな折、たまたまネットでみつけたのが緋銅。
なんて美しい赤いろだろう。
見た瞬間に虜になった。
ネットでの注文もできるようだったが、それでは間に合わない。
いや、そんなこと、もうどうでもいいではないか、
間に合おうが合うまいが。
誰が気にするというのだろう?
でもネットで注文するより、お店で緋銅のリングをこの目で見てこの指にはめたい。
お店の位置を確認する。
1時間と少しあれば行けそうだ。
今日行ける?
午前中の約束の仕事が終わっても
午後にやらなければならないことが残っている。
その仕事を明日に回してもいい?この緋銅を見に行くために。
思案した末、私はお店に向かった。
電車を乗り継いで、そしてかつて商店街だったろう、そんな小道に小さなお店があった。
こんにちは
入って声をかけると奥からお店の人が出てきてくれた。
少し遊び心がある緋銅のリング。
右手の薬指にはめる。
ちょっぴりひんやりして
でもぽっと心が温まった。
包装するのでお待ちくださいというお店の人を制して
はめていきます。
良かった、間に合って。
明日は7回目の結婚記念日
銅婚式。
ひとりで迎える記念日である。
ジェイと出会ってもう10年が近い。
左手の薬指にある
Who I have come to love J
と刻まれたマリッジリングを外す日はないと思う。
ま、今のところ(笑)