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湖畔だより。その後18 Color chart

昨夜からの雪で、土の色も失われつつある。
あたりは何から何までグレーである。

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レベッカが7歳になる息子のジェイを連れてやって来た。
私が日本に数か月帰国するというのを知って、その間ここに住みたいと言って来ている。
彼女はシングルマザーで、
ホームレス状態になっているいきさつを、私は知っている。

なんせ彼女のお母さんがおしゃべりで、
何でもかんでも私に話してくるのだ。
このお母さんは、私の夫がこの湖畔に移り住んだ時からの知り合いである。
私はレベッカとそのお母さんからそれぞれに、二人の仲たがいの状況を聞いている。
もちろん “賢明な”私は お母さんはこう言っていた、とか、レベッカはこうしている・・・などと、両者のけんかに火を注ぐようなことは言わない。
そうなんだ~とうなずいているだけである。


さて、レベッカたちがここに滞在する間、家の管理はもちろん、賃料代わりに、壁のペンキを塗って、バスルームのドアを入れてもらうことになった。
今日はその詳細を打合せに来たのだ。

全てのカナダ人に当てはまるとは言わないし、トロントなど都市部で働く人は違うとは思うのだが、
とにかくこのあたりの人々は、色々な面でゆる~い。
当初は私がちゃんと英語を理解していないからだと思っていたが、とにかく、なんというのか、allowanceと言うべきか その許容範囲や設定の幅が広すぎる。
たとえば、時間。
天気の変化が大きいし、その中の車移動なので、日本のように3時15分からミーティング開始、と言うような分刻みの設定は無理なことはもうわかっている。子供を連れているとなおさらで、レベッカは
午後3時に来る
と言っていて10分前に
ジェイに少し食べさせていくから
3:30ish
になるわ
と言ってきた。
このish
つまり3時半ころというわけだが、夫が言うところの
That’s Canadian
である。
頃の幅が1時間はある。

日本を見ろ、3時15分に電車が来ると言ったら15分きっかりに来るんだ!

日本でも働いていた夫は、そう言ってこちらでの仕事関係にしょっちゅういらついていた。

レベッカは3:30頃の3:40にちゃんとやって来た。
ジェイにはポケモンゲームをさせておいて
早速家の中を見て回る。

この壁はサイディングをかけて
ここはプライマリーコートがすでにしてあるわね。
このドアサイズは特注になってしまうかしら?

メジャーを持ってきていないというので、夫のメタルのテープメジャーを渡す。

この湖畔の家は部屋のドアどころか、バスルーム、クローゼットのドアもついていない。
ドライウォールのままの壁もある。
一度試し塗りをして、また塗りなおそうとしている壁。
天井は裸電球。
地下にはテーブルに仕立てた木板の上に、物差しとカッターナイフが今も置かれたままである。夫が断熱材を切って地下の壁にはめ込んでいたのだ。

すべては夫が作業をやめた時のままで止まっている。

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さてレベッカは内装業専門であるから、
ここもできるわ、あそこもできるわと、ドアだけでなくクローゼットや壁の巾木、ライトの事にも言及する。
しかし内容はゆる~い。

つまり私としては、数か月分の賃料に替えて、ペンキを塗る作業代、ペンキ代、ドア、ドアのフレーム代、その作業代金など詳細を示してもらって、そのトータルを比較し、さらにできること、あるいは私が追加で支払う可能性のあるもの、そんなことをクリアにしたかったのだけれど。

今滞在中の家の壁も、みんな私が塗ったの。オーナーが売りに出してすぐ売れたわ。

ということで、今度はこの湖畔の家に、
息子を連れて移動というわけである。

見積りの数字を出してくれと言ったが
ざっくりな数字と、ここもできる、という可能性と、業者に頼まなければならない物だけは、値段を私に伝える、ということで、結局ゆるーいまま打ち合わせは終わった。
私は一応最低限やってもらう内容をメモって、彼女にその写真を撮っておいてもらう。

ところで二階の廊下には、巾木が四本と、何に使うかわからない材木が置かれたままになっていた。夫はその場所で使う材料をすべてそこに準備していて、そして今もそのままの状態で埃がかぶっている。
レベッカたちが住むのに邪魔になるので少し片づける。
巾木は軽いと思って持ち上げたら、4メートル近くあり、それは思いがけない重さで、おまけに長さのためにたわんで、私はよたよたしながら、どうにかこうにか引きずって移動させる。タンクトップで汗だくである。
しかし分厚い材木はいくら何でも不可能で、Erikが来たら頼もうとそのままになっていた。ところがレベッカにいうと、ひょいと担いで、
地下でいい?
軽々と階段を下りて運んでくれる。
前にも話したが、パラメデイックの女性といい、この地の女性は、本当に驚くべき力持ちである。

ついでといってはなんだけれどと、接着剤のふたもレベッカに開けてもらう。子供が勝手に開けると危険な商品には工夫がなされているのだが、私にも開けられない。

この押して回すというのが曲者で、細い夫のピルケースが私の限界の大きさである。

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ゆるーく終わった商談(?)であったが彼女を信頼して、壁のペンキ塗りとドア作りを任せることにした。

ガレージで見つけた黒い箱の中に、壁の色のカラーチャートが入っていた。夫の走り書きメモもある。

Use yellows North E rooms or darker gloomy rooms

使った色も記してあって、おかげで私はカードの色と、実際塗った時の印象の違いを知ることができる。

寝室は何色がいい?

窓枠のペンキを塗りながら夫は聞いていた。
日本ではどこに住んでも白っぽい壁紙しか経験してこなかったので、私は色の選択の知識がなかった。
しかしこのカラーチャートを見ると、単に白っぽい色と言っても、もう数えきれないほどの種類がある。

夫は以前、アパートメントの壁のひとつにワイン色を塗って、私を驚かせたことがある。それは壁の色としてはあまりに大胆な濃さであったのだ。しかしそれに対比する壁にはアーモンドの粉がかかったようなクリーム色が選択されていて、その色のバランスが私の心をとらえたのを覚えている。ワインカラーだと思ったが、このカラーチャートを見ると実際にはもっと薄い色だったのだとわかる。

湖の風景に続く壁にはMystic Harborを、夫の寝室、もとい、夫のオフィスの一面には、Vermont creamを使おうと決めている。

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湖にMallardと呼ばれるカモたちがやってきた。
頭はビロードの様な光沢のある緑色をしている。明るい黄色のくちばしとのコントラストや、グラデーションのきいたグレーブラウンのボディが洒落ている。どのカラーチャートを使用されました?と聞きたいくらいである。
真ん中の冴えない色合いのものがメス。
彼らの間で着飾るのはオスの方らしい。

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ながつきかず
日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。