「金のなる木と、実を分ける木」 〜村が滅びるまでの物語〜
村の広場にて
村長: 「みんな聞いてくれ!金のなる木のおかげで、うちの村はどんどん豊かになっている!」
商人: 「その通りです!市場には物があふれ、商売は大繁盛!みんな、どんどんお金を使ってくれ!」
木こり: 「金のなる木の実さえ取って売れば、どんなものでも手に入る!これこそ、豊かさってやつだ!」
村人A: 「でも、なんだか変じゃないか?お金があるのに、なぜか昔より大変になってる気がする…。」
金のなる木が生んだ格差
金のなる木の実は、どんどん増えていった。
お金が回り、村の経済は活発になった。
しかし、気づけば 「実を多く取れる者」と「取れない者」 の差が生まれ始めた。
村人B: 「俺は金のなる木の実を取るのが下手で、もう実を売れなくなった…。金がないと市場で何も買えない…。」
商人: 「じゃあもっと働けばいいさ!ほら、新しいお店ができたから、雇ってやるよ!」
村人B: 「でも、この仕事、前よりもずっと大変だ…。」
木こり: 「それが経済ってもんさ。楽に生きるなんて、甘いこと言うなよ!」
村はますます発展していった。
だけど、働いても働いても、なんだか心が休まらない人が増えていった。
実を分ける木の枯れゆく日々
一方、実を分ける木 は、静かに枯れ始めていた。
昔は、誰もがこの木の実を食べて生きることができた。
お金がなくても、誰も飢えることはなかった。
でも今、誰もその木のことを気にしなくなっていた。
村長: 「おい、農民!どうしてこの木はこんなに枯れているんだ?」
農民: 「みんな金のなる木ばかり育てて、この木の世話をする人がいなくなったからですよ。」
村長: 「まあ、仕方ないな。もう食べ物は市場で買えるんだから、別にこの木がなくても問題ないだろう。」
村人たちは、みんなそれに納得した。
「どうせ今は、お金さえあれば食べ物はいくらでも買える」と。
そして、ある日、金のなる木の実がならなくなった。
それは、突然のことだった。
いつものように、村人たちが金のなる木の実を収穫しようとしたとき、
どの木にも、実がついていなかった。
商人: 「おいおい、なんでだ!? 昨日まで実があったのに!」
木こり: 「おかしいな…今年はたくさん肥料をやったのに…。」
村人たちは慌てた。
「金のなる木の実さえあれば、何でも買える」と思っていたのに、
実がなければ、何も手に入らなかった。
市場の食べ物は、あっという間になくなり、
お金を持っていても、買えるものがなくなった。
誰も気にしなかった「もう一つの木」
村人たちは、ようやく思い出した。
かつて、誰もが食べられる「実を分ける木」 があったことを。
お金がなくても、安心して生きられる「もうひとつの支え」があったことを。
村人たちは、その木のもとへ走った。
でも、そこには枯れ果てた木が立っているだけだった。
村人A: 「この木が、昔のまま元気だったら…!」
村人B: 「そしたら、お金がなくても、みんな生きられたのに…!」
でも、もう遅かった。
村人たちは、「実を分ける木」の価値を、最後の最後に知った。
だけど、もうその木は、誰の命を救うこともできなかった。
村は静かに消えていった。
金のなる木がなくなった村は、急激に衰えていった。
働く場所もなくなり、
市場もなくなり、
村人たちは、一人、また一人と去っていった。
そして、やがて村は、誰もいない荒れ果てた土地になった。
教訓:「本当に必要なものは、気づいたときにはもう手遅れ」
村人たちは、「金のなる木」ばかりを育てた。
「もっと豊かに」「もっと楽に暮らせるように」と、経済を回し続けた。
でも、その裏で、
「実を分ける木」が静かに枯れていくことに、誰も気づかなかった。
そして、金のなる木が枯れたとき、
本当に大切だったものを思い出した。
だけど、気づいたときには、もう遅かったのだ。