実は東南アジアが苦手です。突き抜ける瞬間。
※2016年7月4日ロンボク島にて。
実は東南アジアが苦手だ。ゴミゴミしたとこも匂いも空気の悪さもトイレも強烈な日焼けも虫に食われまくるのも、大の苦手。こんだけ頻繁に行きまくっているのに空港に降りた瞬間、しまった、わたし苦手なの忘れてた!といつも思う。
なのに何故
行く前まですっかり忘れてる。うっかり忘れてまた行きたくなる。学習能力ゼロ。到着して数日はあー、やっぱあかん!と思う。リゾートホテル滞在とかの旅じゃないしね。今回の旅、前半は20年前のバリと言われるロンボク島。ホームステイ。ディープな方を選んでしまう。
トイレ問題をぶち破る
いつもトイレがとにかくネック。今回のステイ先は手おけの水でお尻洗って同じ手おけの水で排泄物を流すという紙を使わない「手動」水洗トイレ。和式的な便器の横にプラスチックの大きめのタライがあって井戸水が汲み置きしてある。その水は水浴びにも使う。もちろん冷水。シャワーなどない。ある意味ユニットバス。そして扉は壊れている。外ではなく家の中。家族が寛ぐ真横のここで水浴びはともかく用を足す、というのはかなり私にとってハードルの高い行為。数日目にしてやっとトイレ問題を克服した。その瞬間、何かが吹っ切れた。この感覚!自分を覆っていた小さな常識の枠がまた一つ外れた。今ではすっかり気に入っている。
どうでもよくなる瞬間
到着後しばらくは日本を引きずっている。マレーシアのようにインフラの整備された国は超極楽だが、インドネシアの地方クラスになるとやっぱりひるむ。体質なのかいつも私だけ果てしなくアリやその他虫に刺される。びっくりするくらいボコボコに腫れる。さらに日焼け止めにかぶれる。いつも肌がボロボロになる。マジでやだ。だけどあの瞬間がやってくる。
爆笑しながら一人歩く
空港に着いても何一つスムーズに行かない。今回はありえへん大雨の中を荷物担いで歩いた。しかも白タク掴んでしまった。爆笑した。もう、爆笑なのだ。困ってとほほと笑うどころじゃない。爆笑する。こんな風にヤラレまくってる自分に爆笑する。ゲラゲラ笑う。力が湧いてきていろんなことがどうでも良くなっていく。
小じわとかどうでもいい
日本にいると小じわとか、しょーもないものがやたら気になる。衛生面とか匂いとかちょっとしたものが気になる私だけど、ここに来るとどうでもよくなる。誰も気にしてないし自分も気にならない。大事なものは何か。必要なものだけを担いで旅しながらそこしか見えなくなる。いろんなことが問題でなくなる。視点が変わる。
何を気にしているの?
小さなことを気にしていた自分が信じられない。数日前まで日本にいて煮詰まっていた自分が信じられない。もう、どうでもいい。こんだけ虫に食われりゃどうでもいい。
なんだって叶えてあげる
「わたし」が望むならなんだって「私」が叶えてあげる。そのために必要な現実的なことは全部、「私」がクリアしてあげる。「わたし」が望むなら、なんだって見せてあげる。誰にだって会わせてあげるよ。
私は選べる。どこにでも行ける。どんな生き方だってできる。自分を制限しているのはいつだって自分。罪悪感とか自分への信頼とか。それだけ。
"For The Other Half Of The Sky." 空のもう半分へ
ジョンレノンの ”Woman” という曲の冒頭でジョンがささやくように言うこのセリフが好きだ。空の半分である女たちへ、みたいな感じなのだがここの部分が好きで勝手にいろいろ解釈している。
空の半分は、心の半分は、いつも空けておきたい。「春日のここ、空いてますよ」的に軽い感じで空けておきたい。
自分とは違うものを理解しがたいものを受け入れられる優しい余白を空けておきたい。
あらゆるものを面白がれる共存できる心の余裕を失いたくない。
わたしは東南アジアに着いた瞬間に、帰ってきた!と思うような「ここが合ってる」というタイプのアジア好きとは違う。どこまでも洗練された清潔な日本が好き。
だけどまた旅に出てしまう。人の暮らしが好きすぎて、その優しさと生命力が好きすぎて、シンプルな笑顔が好きすぎて、そして何より突き抜ける瞬間の自分が好きすぎてアリに食われているのだろう。
オススメしない。こんな旅はオススメしない。だけど、また、ついうっかりと足を運んでしまうのだろう。そして爆笑するのだろう。自分の中の何かをぶち破り続けるのだろう。
おすすめしない旅 #4 また一つ増えてしまった大好きな空の半分、インドネシアのロンボク島にて。
※この記事は2016年7月4日『ごろ寝発電』にて掲載したものの再投稿です。ロンボク島地震の前の内容になります。