作曲家修業の思い出(3)一番聴かせたいところを一番最初に持ってくる

ようやく曲づくりのスタートです...とはまだいきませんでした。

ぼくが送付していたバンドの曲の中で「この曲、70年代っぽさが出てていいね」と言われていた曲がありました。


「この曲のデモ版を、まずは1週間で作ってみてほしい」という課題からスタートしました。



イントロから作るな。一番聴かせたいところを一番最初に聴かせること

制作にあたって、事前に1点だけ注意を受けました。



・ディレクターの人たちは、ものすごい量のデモを聴いている。

・最初にインパクトを与えられなければ、そのあとのメロディがどんなに良くても、そのままゴミ箱行き。

・ということは、イントロで30秒使えば、それだけで30秒のロス。

・一番聴かせたいのはサビになるのがふつう。ならば、サビからスタートさせよう。または、サビの直前からの盛り上がりが伝わるように編集しよう。


なるほどなあ…そういえば、Aさんが聴かせてくれたデモは、全てサビやパンチのあるAメロからスタートしていたのを思い出しました。

CMで流れるにしても、ニュース番組などのBGMにしても、イントロやAメロが流れることはほとんどない。それだけサビ偏重なのだから、ニーズに合わせろというわけか、と変に納得。

作曲時の元ネタからササッと作って提出したら即ダメ出し

さて、自分が以前作った曲なので、作曲時のmidiシーケンスファイルが残っています。これを言われたとおりに編集して、ちょっとmidi指定の音色を差し替えればOKでしょ、と思ってサクッと2時間くらいで作業を終わらせて提出です。

…すると、送って数時間もしないうちに即ダメ出しメールが(泣)


「70年代っぽい曲の良さがなくなってしまった」

「特にリズムがまずい。リズムにパワーが全然ない」

「リズムを作り直すように」


…ほげぇぇ。


今考えれば当たり前なんですけど、当時のぼくはバンド用のデモしか作っていなかったので、リズムマシンとシンセだけでデモを作っていました。サンプラーは、レコーディング時しか使ってなかったんです。これではテンポとか尺とかコードとか、曲の大まかな雰囲気は伝わっても、デモとしての完成度は皆無。

これってグラフィックデザインの世界だとどうかというと、「カンプ出せ」って言われてるのに鉛筆手書きをスキャンして「ハイッ、一丁上がりッ」って言ってるようなもの。カンプだって言ってるんだから、せめてイメージ伝わるようにストックフォト使えよ!というのと同じなのです。

つまりはこういうことです。

デザインやビジネスプレゼンのストックフォト = 音楽のサンプル使用

イメージで伝えるというのはとても大切だ、ということがよく判ります…。

というわけで今思い起こすと、Aさんには、ぼくのデモがやっつけで作ったようにしか聴こえなかったんだろうなあと思います。そこに気づかないぼくは、その後も延々とシンセとリズムマシンでデモを作り続け、ダメ出しを受けるのです。

さて、デモを作るうえで、この後もいろいろな指南を受けます。

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(つづく)

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