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声を上げるロシア動員兵の妻たち

 昨夜(2024年4月2日)放送された、NHK クローズアップ現代「“プーチンの戦争”あらがう女性たち ロシア・銃後の社会で何が」。

 ロシア国内にいる人たち(の一部)が、ウクライナ侵攻についてどう考え、行動しているのかを、「プーチ・ダモイ(家路)」という動員兵の妻たちの運動に焦点を当てて伝えています。

 「プーチ・ダモイ」は、当初は、ウクライナ侵攻に動員された自分たちの夫の帰宅を求めていましたが、その後、運動の規模拡大とともに要求を先鋭化させ、今ではプーチン大統領に、「特別軍事作戦をやめて兵士を返してください。できないのなら、あなた自身が前線へ行き、死んでください」と求めるまでになっているそうです。

 そんな激しい要求を掲げる彼女らに対して、治安当局は今のところ、他の反体制派やデモ参加者に対するように暴力をふるったり、拘束や起訴をしたりすることは控えています。

 なぜなのでしょうか?

 それは、彼女らが、プーチン大統領のために前線で戦っている動員兵の妻だからです。彼女らを弾圧すれば、ただでさえ不満を募らせている動員兵の怒りを招くことになり、ウクライナ侵攻の続行に支障をきたすどころか、反体制運動の大きなうねりを呼び覚ます危険があるからです。

 2022年9月の第一回動員で戦線に送られた兵士は、ほとんど休暇も与えられないまま、もう1年半戦い続けており、交代が必要だ、との訴えは、多くの国民にとって説得力があります。一方で、契約兵だけでは交代で抜ける動員兵の穴を埋めるには不足、かといって、第二回動員をかければ、社会の不満が爆発する可能性があります。

 また、これまで、プーチン大統領は、「ロシアという国家=大家族」というスローガンを掲げて、国民をまとめてきました。自らの国家観の核をなす家族を否定することは、自らの政権基盤を揺るがすことにつながります。

 だからプーチン政権は、現状維持のために「プーチ・ダモイ」に手が出せないのです。

 ただ、最近は「プーチ・ダモイ」の幹部の自宅を、当局が頻繁に訪ねてきて、運動をやめるよう要求しているとか。画面からは、小さな子どもを抱えて、身の危険を感じながら運動することへのリアルな恐怖が伝わってきました。それでもなお声を上げる理由を問われて、代表の女性は、「子どもが成長した時、「あのとき、お母さんは何をしていたの?」と聞かれないように」と答えていました。

 番組は、「プーチ・ダモイ」の要求に内心では共感しつつも、当局の弾圧を恐れて連帯の声を上げる市民はまだ少ない、という現実を伝えていましたが、SNSの登録者数6万人は、かなり大きな数字です。この運動が今後どう成長・発展するのか、私も見守りつつ、いろんな機会をとらえて動向を伝えていきたいと思いました。

 番組の解説は、ロシア文学研究者・翻訳者の奈倉夕里さん。番組MCの桑子真帆さん、現地の状況を伝えたNHKモスクワ支局長の野田順子さんも含めて、画面に登場する出演者がほぼ全員女性なのにも、なんだか感動しました。

 NHKプラスの利用登録をすれば、4/9(火) 夜7:57まで無料で見逃し配信が見られるのでぜひ!

https://plus.nhk.jp/info/

「プーチ・ダモイ」 ロシア “戦争”にあらがう動員兵の妻たちの訴え - クローズアップ現代 取材ノート - NHK みんなでプラス

(写真はNHKプラスのこの番組の画面のキャプチャ)


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