【演奏会】フルート×パーカッションのデュオ・・・

 こんばんは。12月です。忙しい!
 12月4日(金)、こちらにお邪魔してきました。

 昭和音大演奏家コース4年生の渡邉さん、杉本さんのデュオコンサート。
フルートとパーカッションでどんな音楽が生まれるのか、楽しみにしていたコンサートです。
チラシのデザイン、可愛いですよね。!

 プログラムはこんな感じでした。
_____
①A. ピアソラ《タンゴの歴史》より、Bordel 1900、Night Club 1960(Fl. / Mari. )
②三善晃《組曲『会話』》(Mari. )
③P. チェン《Musical Moment No.5 - Romance》(Mari. )
④L. ガンヌ《Andante et Scherzo》(Fl. )
⑤J. S. バッハ《Flute Sonata in g-moll BWV1020》よりⅠ、Ⅱ、Ⅲ(Fl. )
⑥内藤明美《森の記憶》(Mari. )
⑦J. ドゥメルスマン《「オベロン」によるグランドファンタジー Op. 52》(Fl. )
⑧【委嘱初演】梅北直昭《聴色(ゆるしいろ)~二人の奏者のための》(Fl. / Mari. )
_____

 聴き応えたっぷりのプログラムでした。それぞれの楽器の持つ様々な種類の魅力をたっぷり味わって欲しい!そんな思いが伝わってきます。。。

 フルートの渡邉さんの音色は本当に美しく、改めてフルートの艶のある上品な響きに魅了されました。自分の専門は打楽器ですが、管楽器をやるならフルートが良い!という昔からの気持ちを強烈にダメ押しされたような感じです・・・。

 キラキラとした、という表現がフルートにも良く用いられますが、渡邉さんの音色はそうでなく・・・。個人的には「キラキラ」という表現の持つ直線的な意味合いがマッチしないように感じるのです。光輝くものをしっかり感じながら、しなやかさと柔らかさが束になったような質感を感じました。例えるならば、シルクのような艶のある生地や糸を束ねたような、そんなイメージでした。(フルートご専門の方が聴くとまた違うのでしょうか・・・。気になります。。)
 ソロ曲は全くタイプの異なる3曲。フルートの音色で表現できる光や影も、素朴な音色も、舞い踊るリボンのような美しさも、様々な表情を感じさせていただきました。

 マリンバの杉本さんは、普段とても優しい方なんです。じっくり考えて動き、周囲への気配りを欠かさない、そんな繊細さと愛情にあふれた人間性が、音楽にも強く現れているように感じました。

 優しいタイプの演奏家は、強く感情を表出したり、ダイレクトな表現が苦手と言うケースも少なくないですが、最初のソロ《会話》はそんなイメージを弾き飛ばしたような演奏。この曲は家族での「会話」がテーマになっている曲で、「なんで!どうして!」といった感情的な会話から、無気力で形式的な会話まで、様々な表情があります。杉本さんの演奏は、本番の熱もあったのか、感情的な会話に乗せた鋭い音が印象的で、それまでの杉本さんの印象やこの曲のイメージを大きく超えた、集中した演奏でした・・・!

 続けて驚かされたのがP. チェンの《Romance》、非常に穏やかで、内面的に歌いかけるような表情ですが、徐々に高まる感情はピーク時に一気に溢れ出すような、ドラマティックな曲です。
 杉本さんは変化する和声を素直に演奏しつつも、旋律線へはこれでもかというくらい愛情たっぷりな歌いよう。濃いめな味付けかな、と思いつつも、後半の盛り上がりが近づくにつれて、旋律線を自然と聴き手の自分も歌っているのです。旋律がどんどん刻み込まれていくんです。。。
 この曲は本当に興奮しました。盛り上がった部分ではなぜか、ラフマニノフのピアノ協奏曲のような大きな流れが見えてきます。本当に不思議。マリンバですよ、トレモロもしていないのに。こんな大きな流れに引き込ませるような演奏が作れるんだなぁと、終始心を奪われるような幸せな時間でした。

 この曲を聴きながら、杉本さんがフルートとデュオを組んでいる理由も納得するものがありました。杉本さんのマリンバ演奏は、まるで管楽器のように、フレーズの語尾やイントネーションにとてもこだわっているんです。打楽器で「歌う」ということを突き詰めて演奏しているからこそ、この珍しいデュオが私たちの心を掴んでいるのだと、聴きながら確信。

 最後に、昭和音大の専任講師である梅北先生の《聴色(ゆるしいろ)》。平安時代には、身分によって身に着けられる色が決まっていたそうです。位の高い人が身に着けられる濃い色が「禁色(きんじき)」、誰にでも着用が許された色が「聴色(ゆるしいろ)」。淡く薄い色がこれに該当するようです。
 曲はフルート、ピッコロ、ビブラフォン、マリンバを使って、様々なサウンドが重なり合う複雑な音像が展開されていきました。ビブラフォンの強奏による強く厚い響きに、織をなすように絡み合うピッコロ。フルートの線に様々な角度(音の方向、和音)の色を重ねるマリンバなど、4種の楽器とは思えない様々な音の重なり=生み出された色がホールいっぱいに響きました。
 しかし不思議なのが、様々な不協和音、強奏、弱奏、どの部分を聴いてもすべてが淡い色味を持っているんです。不気味だったり、突き刺すような刺激的な色ではない、原色をベタ塗りしたような濃くてしつこい色でもない。すべての音の重なり合いに、様々な色や光を持った「聴色」が計算されて表現されていたように感じます。そんな梅北先生の楽曲に心動かされるのはもちろん、難曲にも細部まで丁寧に歌い、アンサンブルし、別々の奏者ではない、2人の音が重なったものとしての「聴色」をつくることにこだわったお2人に、心からの拍手・・・!

 最後に、フルートとパーカッションのデュオは選曲などが本当に難しかったのではないかと思います。なかなか演奏曲を発掘するのが難しいですが、今後もこうした「管楽器×打楽器」のような音楽が、たくさん生まれるといいなと思います。私も頑張らなきゃ!

 いやいや、長くなってしまった・・・。本当に心の動かされるコンサートでした。
渡邉さん杉本さん、素晴らしいコンサートありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?