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『 I and Me 』
モレキュールはもう一人がいる。
変だと思うけれど、もう一人がいると感じる。
言葉では表現できないくらいぞっと寒気がする。
『俺は一人よね。気のせいだと思う。』
自分に自問自答とした。
変な感覚を感じながら家に帰った。
仕事で外でずっと歩き回ったので、疲れてすぐに寝た。
カーテンの隙間から朝日の日差しが入ってきた。
ふわぁとあくびをしながら背を伸ばした。
ベッドからキッチンのところに行った。
コップにコーヒーの粉末を入れて、沸騰した水を入れた。
熱々としたコーヒーをちびちび飲みながら、テレビに電源を入れた。
・・・昨日の夜に殺人事件が起きました。監視カメラで捉えました。犯人の顔はこちらの写真です。ご覧ください。・・・
持っていたカップを離して落とした。
テレビをがっちりと掴んで、本当の俺なのか確認した。
『え?俺じゃないか?』
片手でぽりぽりと頭をかいて、オロオロと慌てていた。
『えぇぇ、昨日の夜になんかしてた?俺はずっと寝てたよね。』
ピンポンと玄関のチャイムが鳴った。
なんか嫌な予感して、玄関にドアスコープを覗いてみたら
なんと警察が立って待っていた。
『くそっ!警察までも来てるか。』
呟きながら、ドアにロックをかけた。
ベットに座って、頭を抱えた。
『どうする俺。このままだと警察に逮捕される…』
混乱している中にちらりと横に全身鏡を見た。
ボーッと眺めてみると、俺自身は動いていないのに全身鏡にいる俺がわずかに動いていた。
ん?と気付いて、全身鏡の方に近づいてみた。
『もしかしたらおまえがやってたの?』
独り言で全身鏡に言った。
『ああそうです。俺がやりました。』
小さな声が聞こえたので、どこだ!と周りにキョロキョロした。
『誰だ!』
叫ぶと、全身鏡からもう一人の俺が出てきた。
俺があああと腰を抜けて、お尻を床についた。
『お前は誰だ!』
『ああ、俺はモレキュールです。』
『モレキュール?俺はモレキュールだ!お前は一体なんだ!?』
もう一人の俺が不気味な笑顔にして、右手を胸に押さえてながら言った。
『実はあなたがストレスや悩みをもっているらしいです。ストレスや悩みから化学分解のようにあなたを分解して、新しいもう一人が誕生されます。』
『そんなバカな…。分解したお前がパワハラの上司を殺したな…。』
『そのとおりです。復讐という気持ちが強すぎて、誕生された俺が上司を駆除しました。』
『駆除?いやいやそれはただの殺人だ!ニュースに出たし、警察もここに来たわ!』
『あらら、それは残念です。復讐心はあなた自身が持っています。どうかにしろと言われても困ります。』
『お前!イカれてるじゃんか!』
俺が罵言を吐いている間にもう一人の俺が袖口を引っ張って、腕時計を確認した。
『申し訳ありませんでした。もうすぐ時間になります。』
『時間?タイムリミットあるの?』
『はい、24時間しか滞在できないです。』
『え?俺の姿を消して逃げるつもりか?!』
『いや本当のモレキュールの身体に合体します。』
『いやだ!俺は逮捕されたくないし、死刑を受けたくない!』
もう一人の俺が左の手を頭の上に乗せて、ふーとため息を吐いた。
本当の俺の顔に近づいて
『どうやらあなたは理解していないようですね。わかりやすく言うと、もう一人の俺はあなたの意思で殺しました。つまりあなたは俺と同じ人です。まさにクローンのようです。』
『あ…そんな…』
本当の俺が膝を床につけた。
もう一人の俺がまた腕時計を確認した。
『そろそろですね。あなたに合体してまた会いましょう。』
スーッともう一人が消えた同時に玄関を破壊して、複数の警察官が現れた。
検察官が逮捕状を表示して
『あなたは上司を殺害しましたので、逮捕します。』
警察官が俺の背中を押さええて、両手を引っ張って手錠をかけた。