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垂也の魔法使い
小学校5年生の時、まる男と初めて同じクラスになった垂也。その年、垂也には超能力がある事が判明した。まる男の消しゴムを1cm伸ばして大きくする事が出来るのだ。中学でも3年間まる男、垂也、角郎は同じクラスであり続けた。
これも超能力?コレは確信がない
第1章
「嵐の中の垂也」
まる男がまた自慢して来た。金持ちのまる男は直ぐに買ってきた物を自慢する。
ドラえ○んならスネ夫か?
と思うが喧嘩が強いのでジャイアン?
で
俺の物はお前の物、お前の物はお前の物
がモットーなのでのび太?
親はポケットならぬポケットマネーで何でも出してくれるド○えもん?
まる男一家でドラ○もんの全てを賄う
え?しずちゃんが居ない?
まる男母は美人なのだ
で
今回の自慢は7色の消しゴムだ
正確には6色の消しゴムと一つの14kの金の塊だ
14kの金の塊は他の消しゴムと同じ大きさ形となっている
自慢する時のまる男はすごくうれしそうだ
垂也はいつもの如く羨ましさを隠さず
「いいなー」を連発していた
角郎は横で放課後の角郎チャンネルのネタを考えていた
そこに窓から突風が入る。まる男は消しゴムを全部床に落としてしまった。
「あーーーーーーー!!」
まる男と垂也は叫んだ。
が、それで消しゴムは元も戻るでもなく。
床に落ちた。音はさせずに消しゴムは落ちる。
慌ててまる男は消しゴム7個を探す
4つまで見つけた。青、茶、黒、白だ
地味メンバーが4つ見つかっただけだった
悲嘆にくれたまる男は1分後
「ま、いっか」
と2時間目の授業が始まるチャイムと共に呟くと席に戻った
その日の夕方、部活を終えたまる男、角郎、垂也は一緒に家路につく。
家の建て替えで一時仮屋に住んでいる垂也の家は学校から一番遠い。垂也は最後の10分を1人で歩いた。今日はそのおかげで夕日を拝める事が出来た。見れたのは3人の中では垂也だけだ。
第2章
「マンチキンたちとの会話」
垂也の家はその日の晩御飯はおでんだった
「えー。おでんがおかずって何だよー!」
思わず言ってしまうと筋肉質で背の高い父にチョップされた。
「いや、ツッコミは裏拳を手を広げて、でしょう」
両親は笑い、垂也も照れて笑った。
誤魔化しきれたかな?垂也の口元は少し歪んで笑っている
晩御飯を食べ終えると宿題をするために2階の自分の部屋に戻る
そこでカバンを開けてビックリ!
まる男の消しゴムが3つ、赤、桃、金のがあった。直ぐに電話機があるリビングへ行くが母が電話中だ。これは1時間は話すぞ。
と勘を働かせ2階に戻る。そして宿題をした。結構夢中になり宿題が終わる頃にはまる男の消しゴムの事は忘れてしまった。
その次の日の日曜日の朝
父がリビングでテレビを見ていた
部活の用意を済ませ、何も考えずに垂也は父の見ているテレビを横で座って見始めた
NHKの再放送で「ゲッペルスの嘘」という番組だ
難しくてあまり理解出来なかったが
「嘘は100回言うと本当になる」
そんな言葉が印象に残った
これを参考にして恋人をつくろう
そう思い、部活へ行った
部活中はずっと「ゲッペルスの嘘」の事を考えていた。
嘘を100回言うと本当になるとは「大嘘」という概念だそうだ
部活中に家に帰ったらやることを決めた
家に帰ると11時30分だった。
垂也なりの「大嘘」解釈で
「俺にはもうすぐ恋人が出来る」と100回言った
部屋の中で言ったので誰も聞いていない
これで2,3日中に垂也に恋人が出来ればゲッペルスは超能力者かもしれない
とも垂也は思った
唱えると垂也の心はウキウキ、ナンパというモノをしてみよう。という気になった。
第3章
「垂也、かかしを救う」
垂也は今、粕壁のショッピングモールに居る。そして階段で屋上ヘ行きゲームセンターを目指した
取り敢えず「ドラゴンス〇イヤー」をやるのだ
途中、階段の踊り場でしゃがんでるスーツ姿の女性を見かけた。何故ここに座っている?
覗き込んでみるとハイヒールのかかとの部分が取れてる。しかもかかとの棒はどこにも無い。
「大丈夫ですか?」女性の返事は「大丈夫」の一言だった。何かないかと垂也は自分のポケットに手を入れた。
消しゴムが3つある
まる男のだ。忘れてた。どうしよう。
でも
女性に待ってもらうと文房具屋へ行き瞬間接着剤を買うと戻り、女性のハイヒールと同じ色の赤の消しゴムを出した。かかとにあてて様子を見る。少し大きさが足りないようだ。1cm足りない。
(確か、まる男の消しゴムだったよなー)
と超能力を使う。1cm伸びる消しゴム。
ハイヒールに合った大きさとなりそれを付けた。
感謝の言葉と共に女性は去っていった
電話番号でも聞けば良かった。
瞬間接着剤を買う為にお金の無くなった垂也はそんな事を考えて帰途についた。
第4章
「森の抜ける道」
次の日の11月3日は文化の日で祝日だった。
でも部活は相変わらずある。昼までにまる男と角郎とで遊び、夕方まで部活に出た。
家に帰ると親は居なく、リビングのテーブルに1000円札と置き手紙がある。
「これで何か食べてくれ。パパとママは親戚に不幸があったので出かける」
走り書きで書かれた手紙を読み終えると2階の自分の部屋へ行き漫画を読み始める。夕飯の時間までは時間があるからだ。6時半の時計を見ると急にお腹が空いて来た。
垂也はショッピングモールへ向かった
フードコートでカレーを食べよう。
300円位だから残りはお小遣いだ。
第5章
「垂也、ブリキの木こりを救う」
ショッピングモールに着くとフードコートに真っ直ぐに向かった。
腹の鳴る音を気にしながらラーメン屋を見付けカレーを頼んで水と共にトレーに載せ、開いた席を探す。探そうとして分かったがフードコートは人でごった返している
目だけで開いている席を探す
無い!
相席しかないな
そんな目で見ると
オジサンと2人席、3人親子と4人席、オジサン2人と4人席、キレイな女性と2人席の中で選ぶしかない。
迷わず、キレイな女性と2人席の前へ行く。
ゲッペルスの言う事が本当に起こり、当たりそうだ。
前と同じ過ちは繰り返さないぞ。
そう決めて女性に声をかけた。
と言っても、ただ「ここ、座っても良いですか?」と普通の事を聞くだけだ。
「あ~・・・」と女性は垂也を見上げて困った顔をしている。
(やめとけばよかった)
垂也は勝手に鼓動が上がる
そこで隣で2人席に座っていた男子高校生2人が席を立つ。昨日のドリフの話しで盛り上がりながらだ。そのまま去っていく2人の男子高校生を見送ると垂也はそこに座る。
女性はラーメンを食べていた。
垂也はポケットを探ると桃色の消しゴムを取り出して、
「これをあげるよ」と女性に言おうとした。
背の高い若い男性が5歳くらいの子供を連れて女性の向かいの席に座る
「ゴメン待った?」
「先に食べてた。あなたも何か食べなさいよ」
2人の会話で夫婦である事が分かる
男性は5歳くらいの子供を膝に乗せると辺りを見渡した。なにを食べるか決めかねているようだ。
子供が突然、垂也の方を指差して言った
「アレ、欲しい」垂也でなく桃色の消しゴムを指してた。
「ちょ、スミマセン。…ダメでしょ!」
女性が言うと子供は口を尖らせる。瞳はジーっと桃色の消しゴムに注がれている。
まる男の消しゴムはもう赤いのは無いし、
(いいや!)子供に桃色の消しゴムを差し出すと
「あげるよ」と垂也は笑顔を見せた
お父さんである男性はニコニコとこちらを見たままだ。
お母さんである女性は「すいません、突然に…」
遠慮がちに垂也を見、そして助けを求める様に男性を見た
構わず垂也は子供に桃色の消しゴムを渡すと
「大事にしてね」
子供の頭をなでた
「うん!」
垂也はガツガツとカレーを1分で食べ終えると直ぐに席を立つ。
そこですかさず女性が「優しいんだね。ありがとう」
そして「アリガトウゴザイマス」
「ありがとな。坊主!」
母子父の順で3人3様で垂也に感謝の言葉を述べる
何も言えず、笑顔だけ残してカレーと水の入っていた容器を載せたトレーを持ってウキウキと垂也は去った。
…
あの子、喜んでたな。
第6章
「臆病ライオン」
次の日の火曜日は11月4日、何の祝日でもない。
眠気をこらえて朝練に励み、普通に授業を受ける。
いつもの如く時間は流れて昼休み、まる男と角郎と食事を摂った。
昼食が終わると突然の尿意だ
立つと角郎が声をかける。
「トイレだったら故障中だから職員トイレに行けってよ。」
垂也は「分かった」と職員トイレに駆け込む
間一髪!
1分かけて用を足すと廊下から声がする。
男子と女子の声、女子は博美だ。
学年では3本の指に入る美人
少し憧れてた
しかし、これは・・・
数人の男子がからかっている様だ
少しちゅうちょしたが勇気を出して廊下に出る。
(まる男が居たらなあ)
廊下に出ると博美が3人の男子に囲まれてる
「垂也・・・」
博美は涙目で垂也に視線を投げかける
男子は3人、背の高い不良たちだ。3年生のようで垂也には大人の男に見える。
「な、何やってんだー!」
垂也の叫び声は震えている
「あー…?」
面倒臭そうに、3人は垂也の方を顔だけ向けた。
リーゼントの一番身体の大きな男子が垂也を睨む。
(逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ)
十数年後には有名になるこの言葉、垂也は心の中で呟きながら考えた。
もしや、垂也には予知能力もあるのか?なんて1986年の今、垂也には分からない。
垂也はポケットを探ると金の消しゴム(正確には金の塊)があった。
1cm伸ばしても4cmにしかならない。
しかも、金で出来ているので超能力は効かないであろう。
混乱している垂也には関係ない。
今までで一番集中して超能力を発動した。
…
ビューン!
え!?・・・1m位まで伸びた!
1mの金の棒になったのだ
「おーー!」
「なんだ?手品か?」
「スゲー」
目を輝かす3人の不良たちとキョトンと涙の止まった博美が垂也を見てる。
そこへハンサムな3年生男子ともう1人が走って垂也とは反対側から駆け付けた。
4人と垂也の様子が変なのでハンサムも意味が分からず
「どうゆうこと?」
もう1人を見た。
もう1人は顔を左右に振るだけだ
そこに大声が聞こえてきた
「何やっとるー!」
この声は極道!(権藤先生のあだ名、学校一恐れられている先生だ)
不良たち3人は
「やべー」
と口々に言いながら逃げていった。
去り際に垂也に
「また手品、見せてよ」
と声をかけながらだ。
その瞬間、金の棒は元の大きさの消しゴム?に戻る。
博美と2人の3年生男子の間を3人の不良、そしてそれを追いかける極道が走り去った
「博美!大丈夫か?」
・・・
内心、恐怖に震える垂也に2人の3年男子と博美は感謝の言葉を述べ去って行った。
第7章
「えらいオズへの旅「ドロシーの帰還」」
「あーーーーーーー!!!やっぱりゲッペルスはウソツキだ!」
学校帰り、まる男と角郎と別れると垂也は自販機でジュースを買い、一気飲みする。
やけ酒ならぬ、やけジュースだ
公園のベンチで数十分、夕焼けを眺めて心を落ち着かせてから家の玄関に入る
?
見慣れない女性の靴が3足小さな子供用の靴が1足ある
来客かな?
両親が法事で出かけていた事を思い出した
「ただいまー!」
リビングに入ると
おとといの赤いハイヒールの女性と
昨日のフードコートの親子、父親は居ない様だ
で、憧れの博美だ
そして、垂也との事は説明が終わっているようで
4人が垂也に感謝の言葉を述べ帰って行った
博美はともかくハイヒールの女性と親子は何故垂也の家を知っていたのであろう
そんな事はつゆと考えずに垂也は玄関で4人を見送った
嬉しそうな垂也母が
「垂也、よくやったね!漢だよ。今日は垂也の食べたいモノを作るからね。何、食べたい?」
・・・
焼き肉を腹いっぱい食べた垂也は、もう3人の事は忘れていた
幸せいっぱいで眠りにつく
夢の中ではヘラクレスオオカブトを沢山取っていた。
まだまだ垂也には恋人は早いかも知れない
星降る夜の月に照らされた垂也の顔は不気味な笑顔を浮かべていた。