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サリーとアン課題から学ぶ「誤信念課題」と自閉症

自閉症と「心の理論」:サリーとアン課題の解説

こんにちは、小野です。今回は「心の理論」に関連する「誤信念課題」について解説します。この話題は、自閉症の特性やコミュニケーションの理解に役立つ重要なポイントです。


心の理論とは?

「心の理論」とは、他人の気持ちや考え、意図を理解したり予測したりする認知能力を指します。これにより、子どもたちは成長の過程で他人の感情や状況を推測できるようになります。

しかし、自閉症のある人々は、この「心の理論」を十分に発達させることが難しい場合があります。そのため、社会的なやり取りやコミュニケーションで困難を感じることが多いのです。この特性を説明する仮説が「心の理論障害説」です。


誤信念課題とサリーとアンの課題

「心の理論」の発達を調べるために用いられる有名な実験に「サリーとアンの課題」があります。これは漫画形式の簡単なストーリーをもとに、他人の視点を理解できるかを測るものです。


サリーとアンの課題の流れ

  1. サリー(顔が白いキャラクター)がビー玉をカゴに入れます。一方、アン(顔が黒いキャラクター)は箱を持っています。

  2. サリーが部屋を出ます。

  3. サリーのいない間に、アンがカゴからビー玉を取り出し、箱に移します。

  4. サリーが戻ってきたとき、最初にビー玉を探すのはどちらでしょうか?

正解は「カゴ」です。サリーはビー玉をカゴに入れた記憶があり、アンが移動させたことを知らないため、まずカゴを調べると考えるのが自然です。


自閉症児と誤信念課題の実験結果

1985年にバロン=コーエンらによって行われた実験では、以下のような結果が得られました:

  • 自閉症の子ども(20人):80%が「箱」と回答。サリーの視点を理解できませんでした。

  • ダウン症の子ども(14人):86%が「カゴ」と回答。精神年齢が自閉症の子どもより低くても成功率は高い結果に。

  • 健常な4歳児(27人):85%が「カゴ」と回答。

この実験により、自閉症の子どもが他者の視点を理解する「心の理論」が特異的に障害されている可能性が指摘されました。


自閉症と心の理論の関係

「心の理論障害説」は興味深い仮説ですが、全ての自閉症児が心の理論を完全に欠いているわけではありません。たとえば、自閉症のある子どもでも、他者への自然な共感や気遣いを見せることがあります。また、実験で誤信念課題を正しく解答する子どももいます。

さらに、自閉症以外の障害を持つ子どもでも誤信念課題に失敗することがあるため、「心の理論の障害=自閉症」とは断定できません。


心の理論研究の意義

「心の理論」の研究は、自閉症の特性を理解し、コミュニケーションや社会性の障害を説明する手がかりを提供します。しかし、それだけにとらわれず、個々の特性を尊重し、実験結果を鵜呑みにしない柔軟な視点が大切です。


まとめ

「サリーとアンの課題」は、自閉症の特性を理解する上で非常に役立つ実験です。ただし、この仮説にも限界があることを理解し、他者の気持ちや意図を捉える力を多面的に考えることが重要です。

この記事が、心の理論について考えるきっかけになれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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小野|ぬりえ
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